2026.05.04
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Agentforce導入の始め方 — 失敗しないための5ステップ

はてな編集部
2026.05.04
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シリーズ最終回となるこの記事では、Agentforceの導入を具体的にどう進めるかを5つのステップで解説します。

「やりたいことは見えたけど、何から手を付ければいいかわからない」という方に向けて、実際の画面イメージとともに進め方を紹介します。

まず何から始めるべきか

結論から言うと、カスタマーサービスのケース対応自動化から始めるのが最も成功率が高い選択です。

理由は3つあります。

既存のナレッジベースをそのまま活用できる。FAQや過去のケース対応履歴がすでにSalesforceにあれば、新たにデータを整備する手間が最小限で済みます。

効果を数値で測定しやすい。自己解決率、応答時間、CSATスコアなど、明確なKPIで成果を追えます。

社外向けと社内向けの両方に展開できる。顧客向けに効果が出たら、同じ仕組みを社内ITヘルプデスクにも横展開可能です。

前回の記事で紹介したとおり、Wiley社はROI 213%、Fisher & Paykel社は自己解決率を40%→70%に引き上げています。いずれもカスタマーサービスから導入を始めた企業です。

まず何から始めるべきかについてさらに詳しく知りたい方は、Agentforceで何ができる?業種・業務別ユースケース30選もあわせてご覧ください。

Step 1 — データを準備する

Agentforceの回答品質は、参照できるデータの質に直結します。

最低限必要なデータ

データ種類 内容 格納先
ナレッジ記事 FAQ、製品マニュアル、トラブルシューティング手順 Salesforce Knowledge
過去のケース履歴 問い合わせ内容と解決策のペア Service Cloud
顧客情報 取引先、取引先責任者、契約情報 CRM標準オブジェクト

Data Cloud(Salesforceのデータ統合基盤)を利用すると、これらのデータを統合し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)の仕組みでAgentforceに参照させることができます。

データ準備のポイント

ナレッジ記事は最新の状態に更新しておく。古い情報をもとにAIが回答すると、顧客の信頼を損ないます。

過去のケース履歴は解決済みのものだけを対象にする。未解決ケースを学習データに含めると、不完全な回答のもとになります。

顧客情報は重複レコードを整理しておく。同じ顧客が複数レコードに分かれていると、AIの参照精度が下がります。

データ準備の全体像

Step 2 — Agent Builderでエージェントを作る

データの準備ができたら、Agent Builderでエージェントを構築します。

Salesforce 公式ヘルプの新 Agentforce Builder 紹介ページ
出典:Build Enterprise-Ready Agents with the New Agentforce Builder(Salesforce Help)

設定の流れ

1. エージェントを作成 — Salesforceの設定画面から「Agentforce」→「新規エージェント」で作成。名前、説明、アバターを設定

2. トピックを定義 — エージェントが対応する業務範囲を定義。たとえば「注文に関する問い合わせ」「返品・交換」「アカウント管理」など

3. アクションを紐づけ — 各トピックに対して、エージェントが実行できるアクションを設定。Flowやナレッジ検索などを紐づける

4. 接続チャネルを設定 — Web、Slack、メールなど、エージェントを公開するチャネルを選択

Agent Builderの画面では、トピックごとにスコープ(対応範囲)とアクション(実行できる操作)を視覚的に管理できます。

Agent Builderの設定画面イメージ

制約事項

項目 上限
1エージェントあたりのトピック数 15
1トピックあたりのアクション数 15
デフォルトの会話ターン数 20

Step 2についてさらに詳しく知りたい方は、Agentforceでエージェントを作成・テストする方法 ― Salesforce実践ガイドもあわせてご覧ください。

Step 3 — インストラクションを書くコツ

エージェントの品質を左右するのが「インストラクション(指示文)」です。各トピックに対して、AIがどのように振る舞うべきかを自然言語で記述します。

Salesforce 公式ヘルプの Agentforce Studio アクセス方法
出典:Access Agentforce Studio and the New Agentforce Builder(Salesforce Help)

良いインストラクションの書き方

ポイント 悪い例 良い例
具体的に書く 「お客様に丁寧に対応してください」 「お客様の名前を使って挨拶し、問い合わせ番号を確認してからケースの状況を説明してください」
ステップを明記する 「返品を処理してください」 「1. 注文番号を確認 → 2. 返品ポリシーの期間内か確認 → 3. 返品理由を質問 → 4. 返品ラベルを発行」
やってはいけないことを書く (記載なし) 「割引の提示や返金額の変更は行わないでください。これらは担当者にエスカレーションしてください」
出力形式を指定する 「情報を伝えてください」 「配送状況は以下の形式で回答してください。注文番号 / 現在のステータス / お届け予定日」

特に重要なのは「やってはいけないこと」の記述です。AIは指示がなければ自己判断で対応しようとします。権限外の対応(割引の提示、個人情報の開示など)を明確に禁止しておくことで、リスクを抑えられます。

Step 4 — Testing Centerでテストする

エージェントを本番公開する前に、Testing Centerで十分なテストを行います。

テストで確認すべき項目

確認項目 内容
想定通りの回答を返すか よくある質問10〜20パターンを入力して回答品質を確認
対応範囲外の質問を適切に処理するか 「社長の電話番号を教えて」など、回答すべきでない質問への対応
エスカレーションが正しく機能するか 解決できない質問に対して、人間の担当者に引き継げるか
推論トレースが適切か AIがどのような手順で回答に至ったかを確認

Testing Centerの画面では、チャット形式でエージェントと会話し、右側のパネルで推論トレース(AIの思考過程)を確認できます。「なぜこの回答になったのか」が可視化されるため、インストラクションの改善ポイントが見つけやすくなります。

Testing Centerの画面イメージ

テストのベストプラクティス

最低30パターンの質問でテストする(正常系20、異常系10)

テスト結果をもとにインストラクションを修正し、A/Bテストで改善効果を確認

本番公開後も週次で会話ログをレビューし、想定外の質問や不適切な回答がないか確認

Step 5 — 段階的に拡張する

テストが完了したら、段階的に公開範囲を広げていきます。

推奨する段階的ロールアウト

フェーズ 対象 期間の目安
Phase 1 社内テスト(自社スタッフのみ) 2週間
Phase 2 限定公開(一部の顧客セグメント) 2〜4週間
Phase 3 全面公開 Phase 2の成果を確認後

Phase 1では、サポートチームのメンバーに実際の問い合わせシナリオでテストしてもらいます。Testing Centerでは見つからなかった実運用上の課題が見つかることが多いため、このフェーズは省略しないでください。

拡張の方向性

Phase 3で安定稼働が確認できたら、以下の順序で機能を拡張していくのが効果的です。

1. チャット対応の最適化 — インストラクション改善、ナレッジ拡充で自己解決率を向上

2. Flow連携の追加 — ケース自動分類や承認フローにAI判断を挿入

3. イベント駆動型(2dx)の導入 — レコード変更をトリガーにした自動処理

4. 外部連携(API / MuleSoft) — 基幹システムとの連携で業務プロセス全体を自動化

よくある失敗パターン5つ

導入企業の事例から見えてきた、よくある失敗パターンを紹介します。

① インストラクションが曖昧

「お客様に丁寧に対応して」だけでは、AIは何をすべきか判断できません。具体的な手順、判断基準、禁止事項を明記してください。

② テスト不足のまま本番公開

Testing Centerで数パターンだけテストして公開すると、想定外の質問に対して不適切な回答をするリスクがあります。最低30パターン(正常系20、異常系10)でテストし、本番公開後もログレビューで品質を維持してください。

③ エスカレーション設計の漏れ

AIが対応できない場合に人間に引き継ぐルートが設計されていないと、顧客がたらい回しになります。「解決できない場合」「顧客が不満を示した場合」「個人情報に関する問い合わせ」など、エスカレーション条件を明確に定義してください。

④ ナレッジベースの未整備

古い情報や矛盾した記事がナレッジベースに残っていると、AIが誤った回答を返します。導入前に必ずナレッジベースの棚卸しを行ってください。

⑤ 一気に全機能を導入しようとする

チャット、Flow連携、2dx、API連携をすべて同時に導入しようとすると、問題が発生したときに原因の特定が困難になります。1つのパターンで成果を確認してから次に進んでください。

料金プランの選び方

Agentforceの料金体系は複数のオプションがあります。自社の利用パターンに合ったプランを選びましょう。

プラン 料金 適したケース
従量課金 $2/会話 外部顧客向けチャット。月間会話数が少ない初期段階に最適
Flex Credits $0.10/アクション アクション数で課金。Flow連携や2dxなど非対話型の利用が多い場合
ユーザー単位 $125/ユーザー/月 社内利用(Agentforce Assistant)。利用者数が固定的な場合
規制業界向け $150/ユーザー/月 金融、医療など追加のコンプライアンス要件がある業界
Agentforce 1 Edition $550/ユーザー/月 Data Cloud + 年間100万Flex Credits込み。本格運用向けパッケージ

選び方の目安

まずは従量課金($2/会話)で小さく始めるのが最もリスクが低い選択です。

会話数が月1,000件を超えてきたら、Flex Creditsやユーザー単位プランへの切り替えを検討しましょう。

Data Cloudとの連携が必要な場合は、Agentforce 1 Editionが割安になるケースもあります。

なお、Agentforceの利用にはSales CloudまたはService CloudのEnterprise Edition以上が前提となります。

料金プランの選び方についてさらに詳しく知りたい方は、Salesforce料金プラン徹底比較|最適なエディション選びガイドもあわせてご覧ください。

まとめ

Agentforce導入の5ステップを振り返ります。

ステップ やること ポイント
Step 1 データを準備する ナレッジベースの更新、重複レコードの整理
Step 2 Agent Builderでエージェントを作る トピック→アクション→チャネルの順に設定
Step 3 インストラクションを書く 具体的に、ステップ明記、禁止事項も記載
Step 4 Testing Centerでテストする 最低30パターン、推論トレースを確認
Step 5 段階的に拡張する 社内→限定公開→全面公開の3段階

Agentforceの導入で最も大切なのは「小さく始めて、成果を確認しながら拡張する」ことです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは1つのユースケースで効果を実感し、そこから徐々に適用範囲を広げていく。そのアプローチが、世界12,000社以上の導入企業が選んだ成功への近道です。


Agentforceはとっつきにくく見えても、1つのユースケースから始めれば意外と手が届くツールです。まずはStep 1のデータ整備から動き出してみてください。


Agentforceシリーズ 全5回

第1回 Agentforceとは?Einsteinとの違いを3分で理解する
第2回 Agentforceで何ができる?業種・業務別ユースケース30選
第3回 チャットだけじゃない!Agentforceの6つの起動パターン
第4回 Agentforce導入企業の成果まとめ — 世界12,000社の実績データ
第5回(この記事) Agentforce導入の始め方 — 失敗しないための5ステップ

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