【はじめに】なぜ今、投資促進税制が貴社にとって重要なのか
中小企業の経営者様にとって、日々の資金繰りや将来への投資は常に重要な経営課題です。特に、競争力を維持し、事業を成長させていくためには、生産性向上や業務効率化に繋がる設備投資が不可欠となります。しかし、そのための資金調達や投資回収には不安がつきものです。
このような状況において、国が中小企業の積極的な設備投資を後押しするために設けているのが「投資促進税制」です。本税制は、設備投資に伴う税負担を軽減することで、企業の財務的負担を和らげ、新たな投資へのハードルを下げることを目的としています。具体的には、中小企業が特定の設備を取得した場合に、法人税(または所得税)の特別償却や税額控除といった優遇措置を受けられる制度です。代表的なものとして、幅広い設備投資をサポートする「中小企業投資促進税制」と、より積極的な経営力向上を目指す企業向けの「中小企業経営強化税制」があります。これらは、資金調達が常に課題である中小企業にとって、成長投資のハードルを下げ、未来への布石を打つための強力なツールとなり得ます[1, 2, 3]。
本税制を活用することで、企業は二重のメリットを享受できます。第一に、税負担の軽減による直接的な「節税効果」です。これにより、手元資金に余裕が生まれます。第二に、その余裕資金を新たな設備導入や事業拡大、人材育成などに振り向けることで、企業の「成長を加速」させる好循環を生み出す可能性です。つまり、投資促進税制は、単なる節税策に留まらず、企業の持続的な成長と競争力強化を実現するための戦略的な一手となり得るのです。
本記事では、中小企業の経営者様がこれらの投資促進税制を最大限に活用し、節税と成長加速のチャンスを掴んでいただくために、制度の概要から具体的な手続き、注意点に至るまで、分かりやすく解説いたします。なお、本記事で引用する情報は、読者の皆様に安心してご活用いただけるよう、国税庁、中小企業庁など、国の機関が公表している情報・資料に限定しています。
【投資促進税制の基本】対象となる「中小企業」とは?
投資促進税制の恩恵を受けるためには、まず自社が税法上の「中小企業者」に該当するかどうかを確認する必要があります。制度によって若干の差異はありますが、主に以下のような定義がなされています。
- 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人であること[4, 1, 2, 3]
- 資本または出資を有しない法人の場合は、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人であること[4, 1, 2, 3]
- これらの制度の多くは、青色申告法人であることを前提としています[1, 2, 3]
個人事業主の場合、常時使用する従業員数が1,000人以下であれば、多くの中小企業向け投資促進税制の対象となります[4, 1]。
これらの定義から見えてくるのは、制度設計における国の意図です。資本金基準だけでなく、従業員数や親会社との関係(支配関係)にも着目している点は、制度の恩恵を真に独立して経営努力を行っている中小企業に行き渡らせようとする姿勢の表れと言えるでしょう。形式的な企業規模だけでなく、実質的な独立性や事業運営の実態を重視することで、大企業の節税対策としての利用を防ぎ、実際に雇用を生み出し、日本経済の屋台骨を支える中小企業を的確に支援しようという考えが根底にあると考えられます。また、「適用除外事業者」の規定は、既に十分な収益力を持つ企業ではなく、成長過程にあり、国の支援をより必要とする企業を優先的にサポートしたいという意図を反映しているものと解釈できます。中小企業の経営者様におかれましては、まず自社がこれらの詳細な基準に合致するかどうかを正確に把握することが、制度活用の第一歩となります。
【2つの主要な投資促進税制】どちらを選ぶべきか?
中小企業が活用できる代表的な投資促進税制には、「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」の2つがあります。それぞれ特徴が異なりますので、自社の状況や目的に合わせて最適な制度を選択することが重要です。
A. 中小企業投資促進税制:幅広い設備投資をサポート
「中小企業投資促進税制」は、中小企業が生産性向上や事業拡大のために行う一定の新品設備への投資を支援する制度です。原則として事前の計画認定などが不要で、比較的利用しやすい点が大きな特徴です[4, 2, 5]。
対象設備と金額要件
- 機械装置:1台または1基の取得価額が160万円以上のもの[4, 2, 5]
- 測定工具及び検査工具:1台または1基の取得価額が120万円以上のもの、または1台30万円以上かつ複数台の合計取得価額が120万円以上のもの[4, 2, 5]
- ソフトウェア:一のソフトウェアの取得価額または複数合計の取得価額が70万円以上のもの(サーバー用オペレーティングシステムの一部などは除く)[4, 2, 5]
- 貨物自動車:車両総重量3.5トン以上の普通貨物自動車[4, 2, 5]
- 内航船舶:取得価額の75%が対象[4, 2, 5]
税制優遇
以下のいずれかを選択適用できます
- 取得価額の30%の特別償却[4, 2, 5]
- 資本金の額もしくは出資金の額が3,000万円以下の法人または個人事業主は、取得価額の7%の税額控除も選択可能[4, 2, 5]
対象業種
製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、道路貨物運送業、倉庫業、情報通信業、サービス業など、非常に幅広い業種が対象となります。ただし、娯楽業(映画業を除く)や性風俗関連特殊営業など、一部対象外となる業種もあります[4, 2, 5]。
B. 中小企業経営強化税制:経営力向上計画に基づく強力な支援
「中小企業経営強化税制」は、中小企業等経営強化法に基づき、自社の経営力を向上させるための「経営力向上計画」を策定し、主務大臣の認定を受けた中小企業が、その計画に基づいて特定の設備を取得した場合に、より手厚い税制優遇(即時償却または税額控除)を受けられる制度です[1, 3, 7, 8]。
経営力向上計画の重要性
この制度の最大のポイントは、「経営力向上計画」の認定が必須であるという点です。計画には、人材育成、コスト管理、財務内容の分析、設備投資など、自社の生産性向上や収益力強化に資する具体的な取り組みを記載する必要があります。この計画策定プロセス自体が、自社の経営課題を見つめ直し、成長戦略を具体化する良い機会となります[1, 7, 8]。
対象設備類型
経営力向上計画の認定を受けた上で取得する設備は、その目的や性質に応じていくつかの類型に分類されます
- A類型(生産性向上設備):労働生産性を年平均1%以上向上させるなどの要件を満たす、機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなど[1, 7, 8]
- B類型(収益力強化設備):投資計画における投資利益率が年平均5%以上となることが見込まれる設備[1, 7, 8]
- D類型(経営資源集約化設備):事業承継やM&Aなど、経営資源の集約化に資する設備[1, 7, 8]
なお、以前あったC類型(デジタル化設備)は、令和7年4月1日をもって廃止されました[7, 8]。DX関連投資については、A類型やB類型での対応、あるいは他の税制(DX投資促進税制など)の活用を検討することになります。
設備価額要件
対象となる設備には、それぞれ最低取得価額が設定されています。例えば、機械装置であれば1台160万円以上、ソフトウェアであれば一つの取得価額が70万円以上などです[1, 3]。
税制優遇
以下のいずれかを選択適用できます
- 即時償却:取得価額の全額を、取得した事業年度の経費として一括で償却できます[1, 3]
- 取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)[1, 3]
指定事業
中小企業投資促進税制と同様に、製造業、建設業、情報通信業、卸売・小売業、サービス業など幅広い事業が対象となります[1, 3]。
これら2つの制度を比較すると、国の政策誘導の方向性が見えてきます。「中小企業投資促進税制」は、比較的広範な設備投資を対象とし、手続きも簡素化することで、中小企業が設備投資に踏み出しやすくするためのベースとなる支援策と位置付けられます。一方、「中小企業経営強化税制」は、「経営力向上計画」という企業自身の具体的な成長戦略とコミットメントを求める代わりに、即時償却やより高い税額控除率といった、さらに強力なインセンティブを提供する構造になっています。これは、国が中小企業に対して、単なる個別の設備導入支援に留まらず、より計画的かつ戦略的な経営力の向上を促し、それを通じて日本経済全体の競争力強化を図りたいという強い意志の表れと解釈できます。C類型(デジタル化設備)の廃止は、DXがある程度普及したとの認識や、他のDX関連支援策との整理、あるいはA類型・B類型等での対応が可能という判断があった可能性が考えられ、税制が経済社会の変化に応じて見直されるダイナミズムを示しています[7, 8]。
中小企業の経営者様は、自社の状況(計画策定の余裕、求める節税効果の大きさ、投資の戦略的重要性など)を総合的に勘案し、どちらの制度を利用するか、あるいは両制度を効果的に使い分けるかを検討する必要があります。特に「中小企業経営強化税制」の活用は、税制上のメリット享受だけでなく、自社の経営計画を深く見つめ直し、事業の将来像を具体的に描く絶好の機会ともなり得るでしょう。
中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の比較
特徴 | 中小企業投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 |
---|---|---|
事前計画認定 | 原則不要[4, 2, 5] | 必須(経営力向上計画の認定)[1, 3, 7, 8] |
主な税優遇(選択) | 30%特別償却 または 7%税額控除(※1)[4, 2, 5] | 即時償却 または 10%税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)(※2)[1, 3] |
対象設備 | 機械装置、工具、ソフトウェア、車両、船舶など広範な新品設備[4, 2, 5] | 生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)、経営資源集約化設備(D類型)など、計画に基づく特定の新品設備[1, 3, 7, 8] |
手続きの容易さ | 比較的容易 | 経営力向上計画の策定・申請・認定が必要なため、より手間と準備期間を要する[1, 7, 8] |
支援の度合い | 標準的 | より手厚い |
適用期限 | 令和7年3月31日まで[2] または 2026年度末(2027年3月31日)まで[5] (※3) | 令和7年3月31日まで[1, 3] または 2026年度末(2027年3月31日)まで[7] (※3) |
※1 税額控除は、資本金の額もしくは出資金の額が3,000万円以下の法人または個人事業主に限ります[4, 2, 5]。
※2 特定中小企業者等(資本金3,000万円以下の法人等)は10%、それ以外の中小企業者(資本金3,000万円超1億円以下の法人)は7%となります[1, 3]。
※3 適用期限は税制改正により延長されることがあります。本記事執筆時点での情報であり、資料によって記載が異なる場合があるため、必ず最新の国税庁や中小企業庁の情報を確認してください。
【税制優遇措置の選択】特別償却 vs 税額控除
投資促進税制では、多くの場合「特別償却(または即時償却)」と「税額控除」のいずれかを選択できます。どちらが有利かは、企業の財務状況や経営戦略によって異なります。
特別償却(中小企業投資促進税制では30%、経営強化税制では即時償却)
仕組み
設備を取得した初年度に、通常の減価償却費に上乗せして償却費を計上できる制度です(即時償却の場合は取得価額の全額を初年度に償却)。これにより、その期の課税所得が圧縮され、結果として法人税等の納税額を将来に繰り延べる効果があります[1, 2, 3]。
メリット
投資初年度の税負担を大幅に軽減できるため、キャッシュフローの改善に大きく貢献します。特に、当期に大きな利益が見込まれる場合や、手元資金を厚くして次の投資に備えたい場合に有効です。
税額控除(中小企業投資促進税制では7%、経営強化税制では10%または7%)
仕組み
算定された法人税額(または所得税額)から、設備取得価額の一定割合を直接差し引くことができる制度です。つまり、支払うべき税金そのものが減額されます[1, 2, 3]。
メリット
納税額が直接的に減少するため、節税効果が非常に明確で分かりやすいのが特徴です。長期的に見て、確実に税負担を軽減したい場合に有効です。
どちらを選ぶべきか?
この選択は、企業の個別の状況に大きく左右されます。例えば
- 当期に大きな利益が出ており、税負担を一時的にでも大きく圧縮したい、あるいは手元資金を確保したい企業:即時償却や特別償却が有利な場合があります。
- 安定的に利益が出ており、将来にわたって確実に税負担を軽減したい企業:税額控除が有利な場合があります。
- 利益が少ない、または赤字の企業:特別償却の効果は限定的ですが、税額控除であれば、繰越控除が可能な場合、将来黒字化した際にメリットを享受できる可能性があります(ただし、当期の税額が発生していなければ控除そのものができません)。
このように、特別償却と税額控除という選択肢が用意されていること自体が、中小企業の多様な財務状況や経営戦略に柔軟に対応しようとする国の姿勢を示しています。これは単なる節税手法の選択ではなく、企業の財務戦略の一環として捉えるべき重要な経営判断です。繰越規定の存在は、特に利益が不安定になりがちな中小企業にとって、その年度に控除しきれない場合でも翌年にチャンスが残されているという点で、一定の安心材料となるでしょう[2, 3]。最適な選択をするためには、過去の業績、当期の利益見通し、将来の投資計画、キャッシュフローの状況などを総合的に勘案し、税理士などの専門家と十分に相談することが強く推奨されます。
申請手続きと必要書類:スムーズな活用に向けて
投資促進税制を活用するためには、適切な手続きと書類の準備が不可欠です。制度によって手続きの流れが異なりますので、注意が必要です。
中小企業投資促進税制の手続き
- 原則として、事前の計画認定などは不要です[4, 2, 5]
- 確定申告の際に、選択した税制優遇措置に応じた書類を税務署に提出します
- 特別償却の場合:法人税申告書に「特別償却の付表(中小企業者等又は中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)」と「適用額明細書」などを添付します[2]
- 税額控除の場合:法人税申告書に「中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額又は法人税額の特別控除に関する明細書」などを添付します[2]
中小企業経営強化税制の手続き
この制度は、「経営力向上計画」の認定が前提となるため、手続きがやや複雑になります[1, 3, 7, 8]。
ステップ1:経営力向上計画の策定と申請・認定
- まず、導入しようとする設備がどの類型(A類型、B類型、D類型)に該当するかを確認します
- A類型(生産性向上設備)の場合:設備メーカー等を通じて工業会等から「生産性向上設備等に係る仕様等証明書」を取得します[1, 7, 8]
- B類型(収益力強化設備)またはD類型(経営資源集約化設備)の場合:投資計画を策定し、税理士または公認会計士による「投資計画に関する事前確認書」を取得した後、経済産業局による「投資計画に関する確認書」を取得します[1, 7, 8]
- これらの証明書や確認書を添付して「経営力向上計画」を策定し、事業分野を管轄する主務大臣に申請し、認定を受けます。原則として、設備取得前に計画の認定を受ける必要があります[1, 7, 8]
ステップ2:設備の取得
経営力向上計画の認定を受けた後、計画に記載された設備を取得します。
ステップ3:税務申告
確定申告の際に、法人税申告書に加えて、以下の書類を添付します[1, 3]
- 経営力向上計画の申請書の写し
- 経営力向上計画の認定書の写し
- 工業会の証明書の写し(A類型の場合)または経済産業局の確認書の写し(B・D類型の場合)
- 特別償却または税額控除の適用を受けるための明細書
共通の注意点
- 対象となる設備は、国内への投資であり、事業の用に直接供される新品である必要があります。中古資産や、主として貸付けの用に供する資産は原則として対象外です[2, 5, 3]
- 設備を取得した事業年度中に稼働を開始することが条件となる場合があります[5]
- 適用期限には十分注意が必要です。中小企業投資促進税制は令和7年3月31日まで[2] または2026年度末(2027年3月31日)まで[5]、中小企業経営強化税制は令和7年3月31日まで[1, 3] または2026年度末(2027年3月31日)まで[7] となっていますが、税制改正により変更される可能性があるため、必ず最新の公式情報を確認してください
特に中小企業経営強化税制は、「経営力向上計画」の策定・申請・認定というプロセスが加わるため、手続きの準備には相応の時間と労力が必要です。このプロセスは、単なる申請作業と捉えるのではなく、自社の事業計画そのものを深く練り上げ、外部の専門機関(工業会や経済産業局、税理士など)との連携を通じて客観的な評価を得る貴重な機会と捉えることができます。国も「経営力向上計画策定の手引き」[8] などを提供して支援していますが、個別の状況に応じた具体的なアドバイスや計画策定のサポートは、税理士、中小企業診断士、認定経営革新等支援機関などの専門家の活用が非常に有効です。制度活用の成否は、これらの手続きを正確かつ期限内に完了できるかにかかっていると言っても過言ではありません。早めの準備と、必要に応じた専門家への相談が、制度を最大限に活用するための鍵となります。
最新情報と注意点:賢く制度を活用するために
投資促進税制は、中小企業の経営にとって非常に魅力的な制度ですが、活用にあたってはいくつかの注意点があります。また、税制は頻繁に改正されるため、常に最新情報を把握しておくことが重要です。
制度改正の頻度と情報収集の重要性
これらの税制は、経済状況や政策目標の変化に応じて、対象設備、要件、税優遇の内容、適用期限などが頻繁に見直されます。例えば、中小企業経営強化税制においては、かつて存在したC類型(デジタル化設備)が令和7年4月1日をもって廃止されました[7, 8]。また、中小企業投資促進税制の対象設備からも、コインランドリー業(主要事業でない場合)の特定設備が除外されるなどの見直しが行われています[4, 5, 6]。
したがって、制度の利用を検討する際には、必ず国税庁や中小企業庁のウェブサイトで最新の情報を確認することが不可欠です。中小企業庁が発行する「税制措置・金融支援活用の手引き」[8] や「中小企業税制パンフレット」[1, 10] は、その時々の最新情報がまとめられており、大変参考になります。
重複適用の禁止
一つの設備について、同じ制度の中で特別償却と税額控除の両方を適用することはできません。また、これらの投資促進税制の適用を受ける設備については、原則として、他の租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却、または他の税額控除の規定との重複適用は認められません[2, 3]。どの制度を利用するのが最も有利か、慎重な比較検討が必要です。
補助金との関係
国や地方公共団体から補助金を受けて設備を取得した場合でも、原則としてこれらの投資促進税制の対象となります。ただし、補助金事業の公募要領等で、税制との併用を制限しているケースも考えられますので、補助金を利用する際には必ずその条件を確認してください[5]。
適用期限の確認
本記事で紹介した各制度には、それぞれ適用期限が設けられています。例えば、中小企業投資促進税制は令和7年3月31日まで[2] または2026年度末(2027年3月31日)まで[5]、中小企業経営強化税制も令和7年3月31日まで[1, 3] または2026年度末(2027年3月31日)まで[7] とされています。これらの期限は延長されることもありますが、確実ではありません。投資計画を立てる際には、必ず最新の公式資料で適用期限を確認し、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めることが肝要です。
税制は、社会経済情勢の変化や政策的ニーズに応じて変化する「生き物」です。頻繁な改正は、中小企業の経営者様にとって、常にアンテナを高く張り、最新情報を能動的にキャッチアップし続ける必要性を示しています。また、補助金との併用可能性など、他の支援策との組み合わせも考慮に入れることで、より戦略的で効果的な資金調達や投資計画を立案することが可能になります。経営者様ご自身が制度の概要や改正動向を主体的に把握し、税理士などの専門家と密に連携することで、税制を単なる受動的な節税手段としてではなく、自社の経営戦略を実現するための能動的なツールとして活用していくことが期待されます。
まとめ:投資促進税制を貴社の成長エンジンに
本記事では、中小企業の皆様が活用できる主要な投資促進税制である「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」について、その概要、対象要件、税制優遇措置、申請手続き、そして活用上の注意点などを解説してまいりました。
これらの税制は、設備投資に伴う税負担を軽減することで、中小企業の財務基盤を強化し、新たな成長への挑戦を後押しするものです。特別償却や即時償却は投資初年度のキャッシュフローを改善し、税額控除は支払う税金そのものを減らす効果があります。どちらの措置を選択するかは、企業の個別の状況に応じた戦略的な判断が求められます。
特に「中小企業経営強化税制」は、「経営力向上計画」の策定・認定を通じて、単なる節税に留まらず、自社の経営課題の明確化や成長戦略の具体化を促すという側面も持っています。手続きはやや煩雑になりますが、その分、得られる税制上のメリットは大きく、計画策定のプロセス自体が企業価値向上に繋がる可能性を秘めています。
重要なのは、これらの制度を「知っている」だけでなく、自社の経営戦略の中に「どう活かすか」を具体的に考え、行動に移すことです。適用期限や要件は変更される可能性があるため、常に最新情報を確認し、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。
ご不明な点や具体的な適用に関するご相談は、顧問税理士や、中小企業庁が設けている「中小企業税制サポートセンター」(電話:03-6281-9821 [5, 7])などの専門機関に積極的に問い合わせることをお勧めします。
投資促進税制は、貴社の未来を切り拓くための強力なエンジンとなり得ます。本記事が、その第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
参考文献・資料
- [2] No.5433 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業投資促進税制)
- [3] No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
- [6] 令和5年度 法人税関係法令等の改正の概要(中小企業投資促進税制の見直し等)
- [1] 中小企業税制パンフレット(令和6年度版)
- [4] 中小企業投資促進税制 概要資料
- [5] 中小企業投資促進税制について
- [7] 中小企業経営強化税制(中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき設備投資を行う場合)
- [8] 経営サポート「経営強化法による支援」
- [10] 中小企業税制パンフレット(令和5年度版)
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