【Salesforce CRM Analytics入門】Tableauに近いBI機能をSalesforce内で実現する方法
目次
- CRM Analytics(旧 Tableau CRM)とは
- 標準レポート&ダッシュボードとの違い
- Tableauとの違い・使い分け
- CRM Analyticsでできること
- 導入のメリット
- どんな企業・チームに向いているか
- ライセンス体系の概要
- 導入ステップの概要
- まとめ
1. CRM Analytics(旧 Tableau CRM)とは
CRM Analyticsは、Salesforceに組み込まれたBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームです。以前は「Tableau CRM」や「Einstein Analytics」と呼ばれていましたが、現在はCRM Analyticsに名称が統一されています。
最大の特徴は、Salesforceのデータにそのままアクセスして分析できること。外部ツールにデータをエクスポートする手間がなく、商談、リード、ケース、カスタムオブジェクトなど、Salesforce上のあらゆるデータをリアルタイムに可視化できます。
たとえば、営業マネージャーが「今月の商談パイプラインを、担当者別・フェーズ別に一目で把握したい」という場合、標準レポートでは何本もレポートを作る必要がありますが、CRM Analyticsなら1つのダッシュボードで、フィルターをクリックするだけで自由に切り口を変えて分析できます。
2. 標準レポート&ダッシュボードとの違い
Salesforceには標準のレポート・ダッシュボード機能があります。では、CRM Analyticsは何が違うのでしょうか。
| 機能 | 標準レポート | CRM Analytics |
|---|---|---|
| データソース | Salesforceオブジェクトのみ | Salesforce+外部データ |
| 操作性 | 定型レポートの作成・閲覧 | ドラッグ&ドロップで自由に探索 |
| リアルタイム性 | レポート実行時にデータ取得 | データセットを定期同期(高速) |
| AI予測 | なし | Einstein Discovery(予測・推奨) |
| クロスオブジェクト分析 | 制限あり(結合レポートに限界) | 複数オブジェクトを自由に結合 |
| 埋め込み | ダッシュボードページのみ | レコードページに直接埋め込み可能 |
| 向いている用途 | 日常的なデータ確認 | 深掘り分析・傾向発見・予測 |
一言でいうと
標準レポートは「今の数字を確認する」ツール。CRM Analyticsは「なぜその数字になったのか、次に何をすべきかを探る」ツールです。
3. Tableauとの違い・使い分け
Salesforceは2019年にTableauを買収しており、BI製品が2つ存在する形になっています。どちらを選ぶべきか迷う企業も多いでしょう。
| 比較項目 | CRM Analytics | Tableau |
|---|---|---|
| データソース | Salesforceデータに最適化 | あらゆるデータソースに対応 |
| 導入の手軽さ | Salesforce内で完結 | 別途環境構築が必要 |
| 分析の深さ | Salesforce業務に特化した分析 | 汎用的で高度な分析が可能 |
| ユーザー層 | 営業・CS・マーケティング部門 | データアナリスト・経営企画 |
| コスト | Salesforceライセンスに追加 | 独立したライセンス体系 |
| 学習コスト | Salesforceユーザーなら低い | 専門的なスキルが必要 |
使い分けの判断基準
CRM Analyticsが向いているケース:分析対象のほとんどがSalesforceデータで、営業やCSチームが自分で分析したい場合。
Tableauが向いているケース:Salesforce以外のデータ(基幹システム、Web解析、外部DB等)も含めて全社横断の分析基盤を構築したい場合。
両方を併用し、部門ごとに使い分けている企業もあります。
4. CRM Analyticsでできること
インタラクティブなダッシュボード
CRM Analyticsのダッシュボードは、静的なグラフの集まりではありません。グラフの要素をクリックすると、関連するすべてのグラフが連動してフィルタリングされます。たとえば、地域別の売上グラフで「関東」をクリックすると、担当者別・製品別のグラフもすべて関東のデータに絞り込まれます。
このダッシュボードは、Salesforceのホーム画面やレコードページに直接埋め込むことも可能です。営業担当者が商談レコードを開いたときに、その顧客の購買傾向が自動で表示される、といった使い方ができます。
AIによる予測分析(Einstein Discovery)
CRM Analyticsには、Einstein Discoveryという予測分析機能が含まれています。過去のデータからパターンを学習し、「この商談が成約する確率」「解約リスクが高い顧客」などを自動で予測します。
具体的な活用例:
- 商談の成約予測 ― 過去の商談データから、フェーズ・金額・業種・担当者などの要因を分析し、成約確率をスコアリング
- 顧客の解約予測 ― サポートケースの頻度、利用状況、契約更新日などから、解約リスクの高い顧客を早期に特定
- リードの優先順位付け ― コンバージョンしやすいリードの特徴を学習し、営業が優先的にアプローチすべきリードを提示
レンズ(探索ビュー)
「レンズ」と呼ばれる探索画面では、ピボットテーブルのようにデータの軸を自由に切り替えて分析できます。定型レポートでは見えなかった傾向を発見するための、いわば「データの虫眼鏡」です。
SQLやプログラミングの知識は不要で、マウス操作だけでグルーピング、フィルタリング、集計方法の変更ができます。データアナリストでなくても、営業マネージャーやCSリーダーが自分で仮説を検証できるのが大きな強みです。
外部データとの統合
CSVファイルや外部データベースのデータを取り込み、Salesforceデータと組み合わせた分析も可能です。たとえば、マーケティングツールのキャンペーンデータとSalesforceの商談データをかけ合わせて、ROIを可視化するといった活用ができます。
5. 導入のメリット
メリット①:Salesforceの投資効果を最大化できる
すでにSalesforceを使っているなら、追加のBI環境を構築する必要がありません。既存のデータ、既存のユーザー管理、既存のセキュリティ設定をそのまま活用できます。新たなETL(データ変換)パイプラインを作る工数も不要です。
メリット②:営業・CS部門が自走できる
従来のBIツールでは「分析したい→IT部門に依頼→数日後にレポート完成」という流れが一般的でした。CRM Analyticsなら、営業やCSのメンバーが自分でダッシュボードを操作し、その場で仮説を検証できます。データドリブンな意思決定のスピードが格段に上がります。
メリット③:AIの恩恵を特別な準備なしで受けられる
Einstein Discoveryの予測機能は、データサイエンティストがいなくても利用できます。Salesforceに蓄積された商談データやケースデータをそのまま学習データとして使えるため、「AIを使いたいがデータ整備ができていない」という企業にも導入しやすい設計です。
6. どんな企業・チームに向いているか
CRM Analyticsは万能ではありません。向いている企業・チームの特徴を整理します。
| 向いているケース | 向いていないケース |
|---|---|
| Salesforceを主要な業務基盤として使っている | Salesforceの利用が限定的(名刺管理程度) |
| 営業やCSチームが自分でデータを分析したい | 分析はIT部門やデータチームに一任している |
| 商談・ケース・リードのデータが一定量蓄積されている | Salesforceのデータがほとんど入力されていない |
| Salesforceデータが分析の中心になる | 基幹システムやDWHのデータが分析の中心になる |
| Tableau導入前の段階でBIを試したい | すでにTableauやLookerが全社展開されている |
7. ライセンス体系の概要
CRM Analyticsのライセンスは、Salesforceの契約に追加する形で購入します。主なエディションは以下の通りです。
| エディション | 主な機能 | 想定用途 |
|---|---|---|
| CRM Analytics Growth | ダッシュボード、レンズ、データセット、基本的なAI予測 | チーム単位での分析導入 |
| CRM Analytics Plus | Growth機能+Einstein Discovery(高度な予測・推奨) | AI活用も含めた本格導入 |
| Revenue Intelligence | 営業特化のプリビルトダッシュボード+予測 | 営業組織の即戦力BI |
正確な価格はSalesforceの営業担当に確認する必要がありますが、ユーザー単位の月額課金が基本です。まずはGrowthエディションで始め、AI予測が必要になった段階でPlusにアップグレードするのが一般的な進め方です。
8. 導入ステップの概要
ステップ1:ゴールの明確化(1〜2週間)
「何を分析したいか」を具体的に定義します。「営業パイプラインの可視化」「顧客満足度の要因分析」など、最初は1〜2つのテーマに絞るのが成功のコツです。
ステップ2:データの棚卸し(1〜2週間)
分析に必要なデータがSalesforceに揃っているか確認します。入力率が低いフィールドや、データの粒度が粗い項目がある場合は、運用ルールの整備を先に行います。
ステップ3:ダッシュボードの設計・構築(2〜4週間)
テンプレートを活用するか、ゼロから設計するかを選びます。Revenue Intelligenceを使う場合はプリビルトのダッシュボードがあるため、カスタマイズから始められます。
ステップ4:ユーザーへの展開・トレーニング(1〜2週間)
完成したダッシュボードをチームに展開し、操作方法をトレーニングします。最初は「見る」だけの利用から始め、慣れてきたら自分でレンズを作る段階に進みます。
ステップ5:継続的な改善
利用状況をモニタリングし、「使われていないグラフ」「追加してほしい分析軸」を定期的に見直します。BIは作って終わりではなく、業務の変化に合わせて進化させるものです。
9. まとめ
CRM Analyticsは、Salesforceを使っている企業が最小の追加投資で本格的なBI分析を始められる優れた選択肢です。
- 標準レポートでは「見るだけ」だった分析を、「探索」と「予測」に進化させられる
- Tableauほどの汎用性は必要ないが、標準レポートでは足りない、という企業に最適
- Einstein DiscoveryによるAI予測を、データサイエンティストなしで導入できる
- 営業・CS部門がIT部門に頼らず、自分でデータを探索する文化を作れる
「Salesforceにデータは溜まっているが、活用しきれていない」と感じているなら、CRM Analyticsは検討する価値があります。
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