Salesforce開発の全貌:内製化vs外注の判断基準から要件定義、適正費用までを徹底解説
投資対効果(ROI)を最大化させるための経営判断ガイド【2026年最新版】
「Salesforceを導入したが、現場で入力されていない」「機能追加のたびに高額な見積もりが来る」——。これらは開発方針がビジネスの現状と乖離している危険信号です。本記事では、標準機能と開発の境界線、2026年最新トレンドのAIエージェント(Agentforce)への対応までを徹底的に解説します。
第1章:Salesforce開発とは何か?標準機能との決定的な違い
Salesforceの機能拡張には、プログラミングを行わない「標準機能(ノーコード)」と、プログラムを記述する「開発(プロコード)」があります。この境界線を正しく理解せず「丸投げ」することが、コスト高騰の最大の要因です。
1. 標準機能・ノーコード開発(宣言的開発)
要件の7〜8割は標準機能の設定だけで解決可能です。
- オブジェクト構成: 「商品」「請求」「問い合わせ」など自社独自のデータ箱を自由に作成。
- Flow (フロー): 2026年の鉄則。ループ処理や複雑な条件分岐さえもフローチャート形式で実装可能になっています。
- レポート・ダッシュボード: 蓄積データのリアルタイム集計・グラフ化。
2. プロコード開発(スクラッチ開発)
- Apex: 大量データの一括更新処理や、外部基幹システムとの複雑なAPI連携に使用。
※活用例:夜間に全顧客の購買データを基幹システムから取得し、ランク付けを反映するバッチ処理。 - LWC (Lightning Web Components): 独自のUIを作成。
※活用例:倉庫作業員向けに、バーコードスキャン機能がついたスマホ専用の簡易入力画面を開発。
| 比較項目 | 標準機能・Flow | プロコード開発(Apex/LWC) |
|---|---|---|
| 初期コスト | 低(設定のみで完了) | 高(専門エンジニアの人件費) |
| 開発スピード | 速い(数時間〜数日) | 遅い(設計・開発・テストで数週間〜) |
| メンテナンス性 | 容易(社内で修正可能) | 難(コードが読める人がいないと不可) |
| Salesforce更新対応 | 自動対応(トラブルが起きにくい) | 要検証(年3回の更新で不具合リスク有) |
第2章:なぜSalesforce開発が必要なのか?ビジネス上の3つのメリット
1
独自の「勝ちパターン」のプロセス化:
「見積作成時に過去の類似案件の利益率を自動提示し、一定利益以下なら警告を出す」といった独自のロジックを組み込み、組織全体の業務品質を均質化できます。
「見積作成時に過去の類似案件の利益率を自動提示し、一定利益以下なら警告を出す」といった独自のロジックを組み込み、組織全体の業務品質を均質化できます。
2
「システム間連携」による分断解消:
Webサイトからの資料請求(MA)が即座にリード登録され、受注後は自動でERPへ売上計上、請求書システムへデータ送信。開発により「二重入力ゼロ」を実現します。
Webサイトからの資料請求(MA)が即座にリード登録され、受注後は自動でERPへ売上計上、請求書システムへデータ送信。開発により「二重入力ゼロ」を実現します。
3
現場が「使いたくなる」UI/UXの実現:
LWCを用いて「1画面で全ての入力が完結する日報画面」などを開発。標準画面の「項目が多すぎる」という現場の心理的ハードルを下げ、データ入力率を劇的に向上させます。
LWCを用いて「1画面で全ての入力が完結する日報画面」などを開発。標準画面の「項目が多すぎる」という現場の心理的ハードルを下げ、データ入力率を劇的に向上させます。
第3章:Salesforce開発の進め方と成功の5ステップ
- BPR(業務改革): 業務フロー図を作成し、「システム化によって無くせる承認ステップ」や「重複入力」を特定。無駄をそのままシステム化しないことが先決です。
- 要件定義(Scope): 「何をするか」だけでなく「何をしないか」を明確に。2026年現在は、AIエージェントに任せる領域と人間が入力する領域を最初から切り分けます。
- 設計・開発: アジャイル開発が主流。実際の画面を見ながら認識合わせを行うことが重要です。
- テスト・トレーニング: ユーザビリティテスト(UAT)を重視。マニュアルを減らすため、画面上のガイダンス機能実装も有効です。
- 運用・定着化とDevOps: 「DevOps Center」などのツールを導入し、修正箇所が元に戻ってしまう「先祖返り」を防ぐ体制を構築します。
第4章:費用相場と隠れたコストの真実
1. イニシャルコストの相場
- 小規模導入(標準機能メイン): 50万円〜150万円
- 中規模開発(一部Apex/Flow利用): 300万円〜500万円
- 大規模開発・DX基盤構築: 1,000万円〜
2. ランニングコスト(月額費用)
- ライセンス料: Enterprise Editionの場合、1ユーザーあたり約2万円/月。
- 保守運用費: 開発費の10〜20%(年額)や、月額数万円〜のチケット制サポートが一般的。
見落としがちな「隠れコスト」
- Sandbox(テスト環境)費用: 本番データが入ったFull Sandboxは有料オプション(高額)になるケースがあります。
- ストレージ超過料金: 見積書や画像を大量に保存するとすぐに追加費用が発生します。
- APIコール制限: 外部システムと頻繁に連携する場合、上限を超えると追加費用が発生します。
第5章:内製化 vs 外注化の判断基準
内製化に向いている領域
日常的な設定変更(項目追加、選択肢変更)、フローによる自動化の微修正など。外注しているとスピード感が損なわれる領域です。
外注化すべき領域
初期のデータモデル設計(ここを間違えると後から修正不可)、Apex/LWCを用いた高度な開発、ガバナンスルール策定など。
理想は、最初は外注100%でスタートし、徐々に社内管理者を育成して権限委譲していく**「伴走型」パートナーシップ**です。
第6章:2026年のトレンド – AgentforceとData Cloud
- Agentforce: 自律的に考えアクションを実行するAIエージェント。以前は「画面」を作るのが開発でしたが、これからは「AIが実行できるアクション(Flow/Apex)」を用意することが開発者の役割になります。
- Data Cloud: Webログや基幹データを一箇所に集約。特定の商品を閲覧している顧客に対し、過去の購買履歴を加味したオファーを自動送信するようなアーキテクチャが主流になります。
第7章:失敗事例と回避策
失敗例①:Excelの完全再現
「今のExcel帳票と全く同じ見た目にしてくれ」という要望は、開発費が跳ね上がる原因。標準UIに業務を合わせるBPRを行いましょう。
失敗例②:全部盛り(オーバースペック)
要望をすべて聞いた結果、入力項目が100個以上の画面になり、誰も入力しなくなる。Small Start, Quick Winを徹底すべきです。
(付録)技術キーワード集
- Flow: まずこれで実現できないか確認するノーコード自動化ツール。
- Apex: 独自のプログラム。複雑な処理に使うが、多用すると保守費が上がる。
- LWC: 独自画面を作る技術。標準UIで妥協できないか検討が必要。
- CoE: 運用ルールを決める社内の管理組織(Center of Excellence)。
