n8n・Dify・OpenClaw 徹底比較|自社で実際に運用してわかった使い分けの最適解

「Zapier的なやつ」「ChatGPT的なやつ」「なんか自律的に動くやつ」を1台のサーバーで回してみた結果 はてなベースでは2026年3月から、国内VPS 1台にn8n・Open…

「Zapier的なやつ」「ChatGPT的なやつ」「なんか自律的に動くやつ」を1台のサーバーで回してみた結果

はてなベースでは2026年3月から、国内VPS 1台にn8n・OpenClawを同居させ、情シス業務の自動化を実運用しています。Difyは次フェーズの候補として検証中です。「結局どれを使えばいいの?」という問いに対して、自社の運用実績と月額コスト実績をもとに、率直にお伝えします。

3ツールの役割を一言で整理する

n8n
Dify
OpenClaw

まず3つのツールがそれぞれ「何者か」を明確にしておきます。名前が似たような雰囲気を持っているため混同されがちですが、そもそもの設計思想が異なります。

ツール一言で言うとレストランで例えると
n8nワークフロー自動化ツール(Zapierの自社サーバー版)「注文が入ったら → 厨房に伝え → 配膳する」というオペレーションの自動化
DifyLLMアプリ構築基盤(社内チャットボット・RAG検索を作るプラットフォーム)「お客さんの質問に、メニュー全ページを読んだ上で適切に答えるコンシェルジュ」を作る
OpenClaw自律型AIエージェント(指示を解釈して自分で判断・行動するAI)「お店全体を見ながら、必要に応じて自分で調理も接客もする万能スタッフ」

混同しがちなポイント

n8nは「AならBする」というルールを人間が事前に設計するツール。結果は予測可能で確実。一方OpenClawは「ゴールだけ伝えたらAIが自分で手順を考えて動く」ツール。柔軟だが結果が予測しづらい。Difyはその中間で、AIの「頭脳」部分を構築するプラットフォームです。3つは競合ではなく補完関係にあります。

比較表 ― 7つの観点で並べてみた

観点n8nDifyOpenClaw
得意領域SaaS間のデータ連携・定期タスクRAGチャットボット・LLMアプリ構築ブラウザ操作・マルチツール横断の自律判断
動作の予測可能性高い(決定的)中(LLM依存)低い(非決定的)
連携先の数400+ノード数十(LLM・ベクトルDB中心)100+スキル(Slack/Discord/Telegram等チャネル20+)
セルフホストDocker Compose一発Docker Compose対応npm / バイナリ(軽量)
ライセンスSustainable Use LicenseApache 2.0(一部Enterprise)Apache 2.0
LLM対応AIノードでClaude/GPT等呼び出し可能LLMネイティブ(RAG/プロンプト管理が中核)Claude/GPT/Gemini等マルチLLM対応
クラウド版の料金$24/月〜(セルフホストは無料)サンドボックス無料 / Pro $59/月セルフホストのみ(クラウド版なし)

n8nの実運用 ― はてなベースではこう使っている

n8nロゴ

はてなベースでは、n8nを国内VPSにセルフホストし、社内専用のワークフロー自動化基盤として運用しています。「まずは情シスの定型業務から始めて、効果を実感してから他部門に広げていく」という方針で導入したそうです。

情シス担当に聞いた ― 現在動いているワークフロー

取材時点で実際に稼働していたものを一覧にしました。いずれも「毎日・毎週、人が手でやっていた確認作業」を自動化した典型例です。

#ワークフロー頻度何が楽になったか
01情シス朝会レポート毎朝サーバーの稼働状況を自動でSlackに投稿。朝イチの目視確認が不要に
02GitHub権限監査毎週月曜組織のリポジトリに誰がアクセスできるかを自動監査。退職者の権限残りを即発見
03退職者検知毎日社員マスタの退職フラグを検知して各種アカウントの棚卸し通知を自動送信
04社内ナレッジ検索リアルタイム社内の数千件のドキュメントからAIが類似文書を即座に検索。「あの資料どこだっけ」が解消
05Slack週次ダイジェスト毎週金曜各チャンネルの1週間分の会話をAIが要約して自動投稿。「先週何が議論されたか」が一目でわかる

「これがn8nで動いている全部です。まだ5つですが、情シスの定型業務はこれでかなり楽になりました」と担当者。次のステップとして、経理部門への展開を計画しているとのこと。経理ではすでにfreeeを中心とした業務フローが回っているため、n8nでfreee APIと接続し、仕訳データの自動連携や月次レポートの自動生成といった領域から手を付けていく方針だそうです。

n8nが向いている業務の共通点

上記5つに共通するのは「トリガー条件が明確で、処理ステップが確定している」こと。「毎朝9時になったらA→B→Cを実行」のように、人間がフローを設計できる業務はn8nの独壇場です。400+のノード(連携先)があるため、kintone・Slack・GitHub・Google Workspace・freeeなど主要なSaaSはほぼカバーしています。

実コスト

VPS月額: 数千円 / LLM API利用: 月$5〜15程度 / 合計: 月額数千円〜5,000円程度で5つのワークフローが稼働中。月10時間以上の手作業を削減できていれば十分に投資回収できるレベルです。

OpenClawの実運用 ― 「指示しなくても動く」エージェントの現在地

OpenClawロゴ

OpenClawは2025年11月にオーストリアの開発者が公開し、2026年1月にリブランディング後、GitHub Star 25万超を60日で達成した急成長のOSSエージェントフレームワークです。

はてなベースでは、n8nと同じ同じVPS上にOpenClawを構築済みです。Tailscale VPN経由でセキュアにアクセスし、Claude Sonnet 4.6をLLMバックエンドとして設定しています。

現在の構成

  • アクセス方式 ― Tailscale VPN経由(社外からは直接アクセスできない構成)
  • 接続済みMCPサーバー ― kintone、GitHub、ファイルシステム
  • チャネル ― 現在設定中(Slack/Discord/Telegram等は未接続)

n8nとの決定的な違い

n8nは「AならBする」を人が設計するのに対し、OpenClawは「ゴールだけ伝えたらAIが自分で手順を決める」動き方をします。

たとえば「先月のkintoneの案件データを集計してSlackに投稿して」と指示した場合、OpenClawはkintone MCPサーバーを使ってデータを取得し、自分で集計方法を判断し、結果をSlackに投稿する、という一連の流れを自律的に実行します。n8nではこの一連の流れを事前にノードでつないでおく必要があります。

OpenClawの現時点での課題

自律性が高い反面、「意図しない操作をする」リスクがあります。セキュリティ専門家の分析によれば、広範な権限を必要とする設計であり、2026年にはRCE脆弱性(CVE-2026-25253)も報告されています。本番の基幹業務に使うにはまだ早く、当社でもサンドボックス的な利用にとどめています。

Difyはなぜ「次フェーズ」なのか

Difyロゴ

Difyは「LLMアプリケーションを構築するためのプラットフォーム」で、特にRAG(社内ドキュメント検索+AI回答)やチャットボットの構築に特化しています。

はてなベースでは現在、Difyの代わりにn8n + 自前のEmbeddings基盤(FastAPI + SQLite + fastembed)で社内ナレッジ検索を実装しています。2,528件のMarkdownファイルから51,794チャンクのベクトルDBを構築し、コサイン類似度検索をAPIとして提供する構成です。

Difyの導入を次フェーズにしている理由

  • 現時点ではn8n + 自前Embeddingsで要件を満たせている ― 検索精度も実用レベルで、追加コストなしで運用中
  • Difyの強みが活きるのは「社内チャットボット」のUI提供フェーズ ― 現在はAPI経由での検索のみだが、全社員がブラウザからチャットで質問できるUIが必要になった段階でDifyを導入予定
  • 1台のVPSのリソース配分 ― n8n + OpenClaw + Embeddingsサーバーで既にメモリ12GBをかなり使っている。Difyを同居させるにはVPSのスペックアップまたは分離が必要

Difyが最も力を発揮するケース

「社内マニュアルやFAQをAIに読ませて、社員がチャット形式で質問できるようにしたい」 ― この要件が出た時がDifyの出番です。RAGパイプラインの構築、プロンプト管理、チャットUIの提供が一体化しているため、個別に組み立てるより圧倒的に速く立ち上がります。

結論 ― 3ツールの使い分けフローチャート

自動化したい業務の性質代表的な例推奨ツール
処理手順が決まっている毎朝9時にSlack通知n8n
社内データで質問回答したいマニュアルからAI回答Dify
手順が定まらない / 臨機応変複数ツール横断の調査OpenClaw
コスト最適化したい3つを1台のVPSに同居3ツール併用

自動化したい業務の性質に応じて、適切なツールを選ぶ

はてなベースのロードマップ

Phase 1(現在) ― n8nで5ワークフロー稼働 + OpenClawをサンドボックス運用 / Phase 2(3〜6ヶ月後) ― Difyで社内FAQチャットボットを構築 / Phase 3(必要に応じて) ― OpenClawのチャネル接続(Slack / Telegram)を本番展開

参考 ― クラウド版を使うといくらかかるか

n8nとDifyにはクラウド版(SaaS)も用意されています。セルフホストと比較して、どの程度コスト差があるのかを整理しました。

n8n Cloud の料金

プラン月額(税抜)実行回数ワークフロー数
Starter€24(約¥3,900)2,500回/月無制限
Pro€60(約¥9,800)10,000回/月無制限
Enterprise€300〜800+100,000回〜無制限

※ 為替レートは1ユーロ≒163円で換算(2026年4月時点)

Dify Cloud の料金

プラン月額(税抜)メッセージ上限チームメンバー
Sandbox(無料)$0200回/月1人
Professional$59(約¥8,900)5,000回/月3人
Team$159(約¥24,000)無制限無制限

※ 為替レートは1ドル≒150円で換算(2026年4月時点)

セルフホスト vs クラウドのコスト比較

はてなベースでは、n8n・Dify・OpenClawの3つを1台のVPSに同居させて運用しています。これをすべてクラウド版に置き換えた場合の概算と比較しました。

項目セルフホスト(現行)クラウド版
サーバー費用約¥3,500/月(VPS 1台)
n8n¥0(OSS)約¥9,800/月(Pro)
Dify¥0(OSS)約¥8,900/月(Professional)
OpenClaw¥0(OSS)クラウド版なし
ドメイン・SSL約¥500/月不要
月額合計約¥4,000約¥18,700〜
年間コスト約¥48,000約¥224,400〜

セルフホストで年間 約¥176,000 のコスト削減

3ツールをすべてセルフホストすることで、クラウド版と比較して年間約17.6万円の削減になります。利用量が増えてクラウド版のプランを上げる場合、差はさらに広がります。

加えて、セルフホストにはコスト以外のメリットもあります。

  • データが外部に出ない ― 社内データの取り扱いに制約がある企業でも安心して導入可能
  • 実行回数に上限がない ― クラウド版のように月間メッセージ数やワークフロー実行数を気にする必要がない
  • カスタマイズの自由度 ― プラグインの追加やバージョン管理を自社でコントロールできる

セルフホストの注意点

サーバーの保守(OS・ミドルウェアのアップデート、バックアップ、障害対応)は自社で行う必要があります。社内にインフラを管理できる担当者がいない場合は、クラウド版のほうが総合的なコストが低くなるケースもあります。