【経理担当者必見】知らないと損する「経費」の知識と決算前の賢い節税対策

中小企業の経営者・経理担当者のための実践的な経費管理と節税テクニック

「毎日忙しくて、経理のことまで手が回らない…」 「節税ってよく聞くけど、うちみたいな小さい会社でもできることってあるの?」

一人で会社を切り盛りされている社長さんや、数名のスタッフで頑張っている小規模法人の経営者の方なら、そう思うことも少なくないかもしれません。

でも、実は「経費」を正しく理解して活用することが、手元にお金を残し、経営を少しでも楽にするための大切な一歩なんです。この記事では、そんな社長さんに向けて、経費の基本的な考え方から、意外と見落としがちな経費、そして決算前にサッと取り組める節税のアイデアまで、分かりやすく解説していきます。

1. 会計上の「費用」と税務上の「損金」の違いを理解する

節税の第一歩は、会計と税務の違いを知ること

まず基本として押さえておきたいのが、会計上の「費用」と法人税法上の「損金」は必ずしも一致しないという点です。会計上は費用として処理されても、税務上は損金として認められない(損金不算入)項目や、逆に会計上は費用計上していなくても税務上損金として扱える(損金算入)項目が存在します。この差を調整する作業が「税務調整」です1。法人税額は、この税務調整後の「課税所得」に税率を乗じて計算されるため、損金の範囲を正確に理解することが節税の第一歩となります。

費用と損金の違いを理解する

会計上の「費用」

企業会計原則に基づいて計上される支出。財務諸表を作成する際の基礎となり、企業の経営成績を適正に表示するためのもの。

税務上の「損金」

法人税法に基づいて認められる支出。課税所得を計算するための基礎となり、税法の目的に沿って一定の制限や要件が設けられている。

項目 会計上の処理 税務上の処理 税務調整
交際費(資本金1億円超の法人) 費用計上 原則として損金不算入 加算
役員給与(事前確定届出給与等を除く) 費用計上 損金不算入 加算
受取配当金 収益計上 一定割合を益金不算入 減算
貸倒引当金 費用計上 一定の限度額まで損金算入 加算または減算

2. 見落とし厳禁!中小企業が活用できる損金算入のポイント

日々の記帳業務で見落としがちな節税のチャンス

日々の記帳業務の中で見落とされがちですが、活用することで節税に繋がる経費計上のポイントがいくつかあります。

(1) 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産は即時償却!

中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一定の要件のもと、年間合計300万円を上限として、その取得価額の全額を事業の用に供した事業年度において損金算入(即時償却)できます2。例えば、パソコン、プリンター、応接セットなどが対象となり得ます。この特例を適用することで、通常の減価償却よりも早期に費用化でき、キャッシュフローの改善にも繋がります。

注意点

適用を受けるためには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要です。また、令和6年度税制改正により、この特例の適用期限が延長されています4

(2) 消耗品の購入タイミング:期末の計画的な購入で節税

期末が近づき利益が見込まれる場合、事業に必要な消耗品を計画的に購入することも節税策の一つです5。事務用品や作業用具など、近い将来必ず使用するものであれば、期末前に購入し当期の損金として計上することを検討しましょう。

注意点

あくまで「事業に必要なもの」であることが前提です。単に利益を圧縮するためだけの過度な購入は税務調査で指摘されるリスクがあります7。また、未使用分については原則として貯蔵品として資産計上すべきですが、毎期おおむね一定数量を購入し、かつ、経常的に消費するものについては、継続適用を条件に購入時の損金算入が認められる場合があります。

(3) 未払費用の計上:発生主義に基づき当期の費用を漏れなく計上

会計の基本原則である発生主義に基づき、決算日までに役務提供が完了しているものの、まだ支払いが済んでいない費用(未払費用)は、当期の損金として計上できます5。例えば、従業員の給与で月末締め翌月払いのもの、決算日までの水道光熱費や通信費、未払いの社会保険料などが該当します。これらの費用を正確に把握し計上することで、課税所得を適切に圧縮できます。

未払費用の例

  • 決算月の従業員給与(翌月支払い)
  • 決算月の水道光熱費(請求書未着)
  • 決算月の通信費(請求書未着)
  • 未払いの社会保険料
  • 決算月の顧問料(翌月支払い)

(4) 決算賞与の活用:従業員のモチベーション向上と節税を両立

決算日までに利益が予想以上に出た場合、従業員への決算賞与の支給を検討することも有効な節税策です6。決算賞与を損金算入するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 決算日までに各人別の支給額を全従業員に通知していること。
  • 通知した金額を決算日後1ヶ月以内に全従業員に支払っていること。
  • 支給額を通知した事業年度において損金経理していること。

これらの要件を満たせば、実際に支払うのが翌期であっても当期の損金として認められます。

(5) 修繕費と資本的支出の適切な区分

固定資産の維持管理や改良のために支出した費用は、その内容によって「修繕費」として一括で損金算入できるか、「資本的支出」として資産計上し減価償却を行うかが分かれます。この区分は税務調査でもよく確認されるポイントであり、誤ると追徴課税のリスクがあります8。資産の価値を高めたり耐久性を増したりする支出は資本的支出、原状回復や通常の維持管理のための支出は修繕費と判断されるのが一般的です。判断に迷う場合は、専門家である税理士に相談しましょう。

区分 修繕費(一括損金算入) 資本的支出(資産計上・減価償却)
目的 原状回復・機能維持 価値向上・耐久性増加
壁の塗り替え、機械の部品交換 建物の増築、設備の性能向上
判断基準 現状維持のための支出 使用可能期間を延長する支出

3. 経費計上の大原則:証拠書類の徹底管理

税務調査に備えた適切な証拠書類の保存

どのような経費であっても、その支出が事業に関連するものであることを客観的に証明する証拠書類(領収書、請求書、契約書、納品書、銀行振込の控えなど)の保存は絶対条件です11。特に交際費や会議費など、税務調査で内容を詳しく確認されやすい費目については、支出の相手先、日時、参加者、目的などを記録した書類(議事録など)も併せて保管することが望ましいでしょう11

証拠書類の保存ポイント

保存すべき書類

  • 領収書・レシート
  • 請求書・納品書
  • 契約書・発注書
  • 銀行振込の控え
  • クレジットカード明細
  • 議事録・稟議書

保存期間

原則として7年間の保存が必要です。電子帳簿保存法に対応した電子保存も可能ですが、一定の要件を満たす必要があります。

近年利用が増えているポイントでの支払いについても、経費として計上することは可能ですが、そのポイントの取得元や使用目的を明確にし、領収書と共に適切に仕訳・管理する必要があります12。社内規定を整備し、透明性を確保することが重要です。

税務調査でよく指摘される項目

  • 交際費と会議費の区分が不明確
  • 領収書の宛名が個人名(会社名になっていない)
  • 経費の内容や事業関連性が不明確
  • 修繕費と資本的支出の区分誤り
  • 役員への貸付金と給与の区分

4. 決算前の最終チェックポイント

決算作業を進める前の確認事項

決算作業を進める中で、以下の点を最終確認しましょう。

決算前チェックリスト

  • 計上漏れの経費はないか?:特に期末に発生した未払費用や、前述の少額減価償却資産の特例の適用漏れなどがないか再確認します。
  • 不要な支出は避ける:節税のためだけに不必要なものを購入するのは本末転倒です。あくまで事業にとって必要な支出を計画的に行うことが重要です7
  • 証拠書類は整理されているか?:後日の税務調査に備え、全ての取引について証拠書類が適切にファイリング・保存されているか確認します。
  • 税制改正の影響は?:毎年のように行われる税制改正の内容を確認し、新たな優遇措置や変更点を把握しておきましょう。
  • 専門家への相談:判断に迷う項目があれば、早めに顧問税理士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。

「節税対策は、決算直前だけでなく、日々の経理業務の中で意識することが大切です。特に中小企業では、経費の計上漏れが意外と多いものです。」

— 中小企業診断士 山田太郎

5. まとめ:適切な経費管理で賢く節税を

経費の正しい理解と活用で企業の財務体質を強化

適切な経費計上は、法人税の負担を軽減するだけでなく、企業の正確な財務状況を把握し、健全な経営判断を行うための基礎となります。日々の記帳業務から決算整理まで、経費に関する知識を深め、活用できる制度を見逃さないようにしましょう。

しかし、税法は複雑であり、解釈や適用要件が細かく定められています。また、税制は毎年のように改正が行われます。本記事でご紹介した内容は一般的なものであり、個別の取引や企業の状況によっては取り扱いが異なる場合があります。

最終的な税務判断や申告実務にあたっては、必ず顧問税理士などの専門家にご相談いただき、適切なアドバイスを受けるようにしてください。専門家のサポートを得ることで、法令を遵守しつつ、最大限の節税効果を得ることが可能になります。

免責事項

本記事に記載された情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

参考文献

  1. 法人税の計算で押さえておきたいポイントとは?基礎知識や計算時の注意点を解説 - OBC https://www.obc.co.jp/360/list/post83
  2. 令和6年度税制改正 (中小企業関連) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/zeisei_leaflet_r6.pdf

経費の正しい理解と活用で企業の財務体質を強化

適切な経費管理と節税対策は、企業の財務体質を強化し、持続可能な成長を支える重要な経営戦略です。日々の経理業務の中で、本記事でご紹介した知識を活かし、賢く節税に取り組みましょう。

正しい知識の習得

会計と税務の違いを理解し、適切な経費計上の基礎知識を身につける

証拠書類の管理

全ての経費に対する証拠書類を適切に保存し、税務調査に備える

専門家との連携

税理士などの専門家と連携し、最新の税制改正や個別の状況に応じたアドバイスを受ける

経理・税務のお悩みは専門家にご相談ください

はてなベース株式会社とはてなベース税理士事務所では、中小企業の経理業務効率化と適切な節税対策をサポートしています。
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