「Salesforceに保存した見積書や契約書のPDF、そのままで電子帳簿保存法に対応できているのか?」「タイムスタンプって本当に必要なのか?」

Salesforceは営業管理ツールとして優秀ですが、日本の電子帳簿保存法(電帳法)に標準機能だけで完全対応するには、いくつかのハードルがあります。特に「検索要件」や「真実性の確保(タイムスタンプ等)」は、意識的に設定しないと法違反になるリスクがあります。

本記事では、Salesforce内の文書を電帳法に対応させるための具体的な手法と、スキャナ保存・電子取引データの正しい管理方法について解説します。

Salesforceの文書管理と電子帳簿保存法

Salesforceの「ファイル(Salesforce Files)」機能は便利ですが、電帳法対応の観点からは以下の課題があります。

標準機能だけでは足りない要素

  • 検索機能の不足: 電帳法で求められる「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目での範囲検索や組み合わせ検索が標準のファイル検索では難しい。
  • 訂正・削除の履歴: 添付ファイルを誤って削除したり差し替えたりした場合、そのログが法要件を満たす形で残らない場合がある。
  • タイムスタンプ: 標準機能にはタイムスタンプ付与機能がない。

「スキャナ保存」と「電子取引」の要件整理

電帳法対応には、大きく分けて2つのパターンがあります。自社のデータがどちらに該当するか確認しましょう。

1. 電子取引データ保存

メールやクラウドサービス経由で受領したPDF(請求書、領収書など)です。紙保存は原則禁止されており、電子データのまま保存する必要があります。

必須要件: 改ざん防止措置(タイムスタンプ or 事務処理規程)、検索機能の確保。

2. スキャナ保存

紙で受領した書類をスキャンして保存する場合です。

必須要件: 解像度200dpi以上、カラー画像、一定期間内の入力(タイムスタンプ付与など)。

タイムスタンプ付与の仕組みと必要性

「タイムスタンプ」は、その時刻に書類が存在し、それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。

最近の法改正のポイント:

以前は必須でしたが、現在は「訂正・削除の履歴が残るシステム(クラウドサービス等)」を利用していれば、タイムスタンプは不要となるケースが増えています。Salesforce連携においても、この「訂正削除履歴が残る機能」を持つアプリを選ぶのが主流です。

【比較表】3つの連携手法(Files・外部ストレージ・専用アプリ)

Salesforceで電帳法に対応するための主なアプローチを比較します。

手法 特徴 電帳法対応度 費用感
AppExchangeアプリ
(専用ソリューション)
推奨
Salesforce画面上で検索・タイムスタンプ付与が可能。導入が最もスムーズ。

(認定取得済が多い)

(月額数万円〜)
外部ストレージ連携
(Box, Dropbox等)
容量対策に
ファイルの実体はBox等に置き、Salesforceからリンク。Box側の機能で法対応する。

(ストレージ側の機能に依存)
中〜高
Salesforce標準
+事務処理規程
コスト重視
システム改修せず、「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を作成・運用でカバーする。

(検索要件の実装が必要)

(開発費のみ)

Salesforce×電帳法対応の成功事例

事例詳細を見る

事例1: 商社(従業員100名) – AppExchangeアプリ導入

課題: 取引先からメールで届く注文書をSalesforceに添付していたが、検索ができず監査対応に不安があった。

解決策: 電帳法対応のAppExchangeアプリを導入。添付時に「金額」「日付」などの属性入力を必須化。

効果:

  • 法的要件をクリアしつつ、Salesforceの取引先画面から過去の書類を即座に検索可能に。
  • ペーパーレス化により、保管コストを年間50万円削減。

事例2: 建設業(従業員50名) – Box連携

課題: 現場写真や図面など大容量ファイルが多く、Salesforceのストレージ容量を圧迫していた。

解決策: BoxとSalesforceを連携。Boxの電帳法対応機能を活用。

効果:

  • 容量問題を解決しつつ、Boxの検索機能で法対応を実現。
  • 現場からもスマホで図面確認が可能になり、業務効率アップ。

よくあるトラブルと解決策

検索要件(金額・日付・取引先)の入力が面倒

原因: ファイルをアップロードするたびに、手入力で属性を打つのは手間がかかります。

解決策: OCR(文字認識)機能付きのアプリを選び、アップロード時に自動で金額などを読み取る仕組みを導入します。

過去の書類はどうすればいい?

原因: 法対応以前に保存された書類の扱いです。

解決策: 法施行日以後のものが対象ですが、一元管理のために過去分も移行する場合は、CSVインポートなどで一括登録できるツールを利用します。

導入ステップとセキュリティ対策

導入ステップ

  1. 現状把握:Salesforceにどのような文書(見積、請求、契約書)が保存されているか棚卸しします。
  2. 方針決定:アプリで対応するか、外部ストレージを使うか、運用(規程)でカバーするか決めます。
  3. 設定・開発:検索用のカスタム項目作成や、アプリのインストールを行います。
  4. マニュアル作成:現場ユーザー向けに「ファイルの正しい保存方法」を周知します。

セキュリティ対策

  • 権限管理:訂正・削除ができるユーザーをシステム管理者のみに限定します。
  • 操作ログ:誰がいつファイルを閲覧・ダウンロードしたかのログを取得設定します。

よくある質問(FAQ)

Q. Salesforceだけで電帳法対応は無料ですか?

A. 工夫すれば追加ライセンス費なしでも可能です。
ただし、検索要件を満たすためのカスタムオブジェクト開発や、事務処理規程の策定・運用徹底など、人的コストや開発工数はかかります。専用アプリを入れた方がトータルコストが安い場合も多いです。

Q. 認定タイムスタンプは必須ですか?

A. 必須ではありません。
「訂正削除の履歴が残るシステム」または「訂正削除ができないシステム」を利用していれば、タイムスタンプ付与に代えることができます。

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「Salesforceの電帳法対応を相談したい」「最適なアプリを選んでほしい」という企業様へ。要件整理から設定代行まで定額でサポートします。

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まとめと定額支援のご案内

Salesforceでの電子帳簿保存法対応は、コンプライアンス遵守だけでなく、文書検索の効率化による業務改善のチャンスでもあります。

成功のポイントは、「自社の運用に合ったツール選び(アプリ or ストレージ or 運用)」「現場に負担をかけない入力フローの設計(OCR活用など)」です。

はてなベース株式会社では、Salesforceやkintoneを中心としたシステム連携・法対応の実績が豊富にあります。「今のSalesforce環境で法対応できているか診断してほしい」「Box連携の設定を代行してほしい」といった方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

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