はじめに:「あなたのその仕事、ロボットでもできますか?」
少し挑発的な質問に、ドキッとしたかもしれません。しかし、私たちは、その現実から目を背けることはできません。
Gmailで受け取った問い合わせ内容を、Slackの担当チャンネルにコピー&ペーストし、さらに、AsanaやTrelloを開いて、タスクとして手入力する…。
便利なSaaSツールを導入すればするほど、ツールからツールへと、情報をひたすら**「転記」し続ける、「人間RPA」**のような作業に、多くの時間を奪われてはいませんか? 私たちは、知的で、創造的な仕事をするために会社に来ているはずなのに、その実態は、まるで、情報のバケツリレーを繰り返すだけの、単純作業員になってはいないでしょうか。
もし、あなたが、こんな日々に、少しでも疑問を感じているなら、この記事は、あなたの働き方を、根本から変えるための「設計図」です。
- 「毎日、同じようなメールの仕分けと、タスクの起票作業だけで、1時間以上が過ぎていく…」
- 「単純作業だからこそ、コピーミスや、転送先のチャンネル間違いが、時々起きてしまう…」
- 「この“転記作業”さえなければ、もっとお客様への返信内容を考えたり、業務改善に取り組んだりできるのに…」
今回ご紹介するのは、**GoogleのAI「Gemini」**と、**iPaaS(アイパース)ツール「Make(旧Integromat)」を組み合わせ、Gmailに来た問い合わせを、AIが自動で「内容を理解・分類・要約」し、その結果に応じて、SlackとAsanaに「自動で情報を連携し、タスクを登録する」、まさに、SFのような“完全自動化ワークフロー”**を構築する、具体的な方法です。
この記事を読み終える頃、あなたは以下のスキルと未来を手にしています。
- iPaaS(Make/Zapier)とAI(Gemini)が、なぜ最強の自動化スタックなのか、その根本的な理由
- MakeとGeminiを使い、プログラミング知識ゼロで、知的で柔軟な自動化フローを構築する全ステップ
- 問い合わせ対応の初期対応にかかる時間を、ほぼゼロにし、対応漏れやミスを撲滅する具体的なイメージ
- 単純作業から完全に解放され、人間だけができる、より高度で、創造的な業務に集中できる、新しい働き方
もう、ツール間の“お引越し”作業に、あなたの貴重な時間を費やすのは、終わりにしましょう。AIとiPaaSという、現代の魔法を手に入れ、あなただけの「デジタル社員」を、今日、この手で創り上げるのです。
シナリオのご紹介:今日の主人公は、“SaaSの奴隷”と化した、カスタマーサポート担当者
この物語は、便利なツールに囲まれながらも、そのツール間の連携に苦しみ、かえって非効率になっている、すべての現代ビジネスパーソンの物語です。
【登場人物】
- 高橋さん: BtoB SaaS企業「株式会社コネクト・ハブ」のカスタマーサポート兼オペレーション担当。30代。
【彼の課題】
会社の代表問い合わせ窓口であるGmailには、毎日、数十件の様々なお客様からの問い合わせが届く。「製品の使い方の質問」「料金に関する質問」「不具合報告」「営業への引き合い」などが、すべて同じ受信ボックスに混在している。彼の毎日の最初の仕事は、これらのメールを一件一件読み、内容を判断し、手作業でSlackの担当チャンネルに転送し、さらに、タスク管理ツールであるAsanaを開き、手動でタスクを起票すること。この「メールの仕分け・転記・タスク化」という作業に、毎日1〜2時間もの時間を費やしていた。
今回は、この高橋さんが、**毎日繰り返される「問い合わせ対応の初期トリアージ地獄」から脱出するために、iPaaSツール「Make」と「Gemini」**を組み合わせ、この一連の作業を、完全に自動化するワークフローを構築していくプロセスを、詳細に追体験します。
第1章:なぜ、あなたの会社は、便利なはずの“SaaS”に、逆に疲弊させられるのか?
実践的な手法に入る前に、なぜ、業務を効率化するために導入したはずの、数々のSaaSツールが、逆に、私たちの仕事を複雑にし、疲れさせているのか。その構造的な問題を理解しておきましょう。
問題の核心は「ツールのサイロ化」
原因は、**「ツールのサイロ化」**にあります。「サイロ」とは、農場で穀物を貯蔵する、孤立した大きな筒のこと。それと同じように、各SaaSツールは、それぞれが非常に高機能で便利である一方、その内部に、情報を孤立した状態で溜め込んでしまっているのです。
この**「ツールとツールの間の、深い溝」を、私たちは、毎日、「手作業によるコピー&ペースト」**という、最も原始的で、非効率な方法で、埋め続けているのです。
「iPaaS」と「AI」が、その溝を埋める
この問題を解決するのが、**「iPaaS(Make/Zapier)」と「AI(Gemini)」**という、最強のコンビです。
- iPaaS(Integration Platform as a Service): 役割は、**「神経網」であり、「手足」**です。「Gmailにメールが届いたら、Slackに通知する」といった、定型的なアプリ間連携を自動化します。
- AI (Gemini): 役割は、**「脳」**です。従来のiPaaSだけでは難しかった、**「判断」を伴う処理を可能にします。**例えば、メール本文の「意味を理解」し、「このメールは、緊急性が高いか?」といった、知的で、柔軟な判断を下すことができます。
この2つを組み合わせることで、私たちは初めて、**「AIが、状況を理解・判断し、次に行うべき最適なアクションを、自ら実行する、真の業務自動化」**へと、ステップアップすることができるのです。
第2章:実践編|MakeとGeminiで創る「問い合わせ対応」完全自動化フロー
お待たせしました。いよいよ、高橋さんと一緒に、MakeとGeminiを使って、「問い合わせ対応の初期トリアージ地獄」を終わらせる、完全自動化ワークフローを、ステップ・バイ・ステップで構築していきましょう。
ステップ1:【トリガー設定】自動化の“きっかけ”を決める (in Make)
- Makeにログインし、「Create a new scenario」をクリックして新しいシナリオを作成します。
- 最初のモジュールで**「Gmail」**を選択し、トリガーとして**「Watch Emails」**を選びます。
- 監視するフォルダやラベル(例:「to-process」ラベル)を指定し、必要なメールだけを自動化の対象とします。
ステップ2:【AIによる分析】メールの“意味”を理解させる (in Make + Gemini)
次に、このワークフローの「脳」となる、Geminiのモジュールを追加します。
- Gmailモジュールの後に**「Google Gemini」**モジュールを追加し、アクションとして**「Generate Content」**を選択します。
- 最も重要な**「Prompt」**の入力欄に、AIへの指示書を書き込みます。
【プロンプト例1:メール内容の分析・分類・要約】
# あなたの役割と指示あなたは、当社の優秀なカスタマーサポート・オペレーターです。
これから入力されるメールの本文を読み解き、以下の3つの項目を分析し、厳格な「JSON形式」で出力してください。
# 分析・出力項目
1. **"inquiry_type"**: この問い合わせの「種類」を、["製品に関する質問", "料金に関する質問", "不具合報告", "営業への引き合い", "その他"]から一つ選び分類してください。
2. **"urgency"**: この問い合わせの「緊急度」を、「高」「中」「低」の3段階で判定してください。
3. **"summary"**: 問い合わせ内容全体を、200字以内の日本語で、簡潔に要約してください。
# 入力されるメール本文
{{1.Text content}}
ステップ3:【処理の分岐】AIの“判断”に応じて、次の動きを変える (in Make)
Geminiの判断結果に応じて、その後の処理の流れを、自動で分岐させます。
- Geminiモジュールの後に、**「Router(ルーター)」**という、分岐用のツールモジュールを接続します。
- Routerから、「営業への引き合い」の場合のルートと、それ以外の場合のルート、というように、条件を設定して処理を分岐させます。
ステップ4:【アクション設定】各ツールへ“自動で”情報を書き込む (in Make)
最後に、分岐した各ルートの先に、具体的なアクションを実行するモジュールを接続していきます。
- 【ルート1:営業案件の場合】
- Slackモジュールを追加し、#sales-leadsチャンネルに、Geminiが要約した内容をメッセージとして投稿するように設定します。
- Asanaモジュールを追加し、「営業リード管理」プロジェクトの中に、担当者と期限を設定したタスクを、自動で起票するようにします。
- 【ルート2:サポート案件の場合】
- Slackモジュールを追加し、#support-teamチャンネルに通知を飛ばします。
- Asanaモジュールを追加し、「カスタマーサポート対応」プロジェクトの中にタスクを起票します。
ステップ5:シナリオの有効化とテスト:“デジタル社員”の誕生
すべての設定が完了したら、シナリオを「ON」にします。高橋さんがテストメールを送ると、数秒後、SlackとAsanaに、AIが内容を判断し、適切に振り分けた通知とタスクが、自動で作成されました。彼の会社に、極めて知的にタスクをこなす**「デジタル社員」**が、誕生した瞬間でした。
第4章:導入効果|“転記作業”から解放されたチームは、どこへ向かうのか
- 【効果①】リード対応速度の“光速化”: これまで数時間のタイムラグが発生することもあった「営業への引き合い」が、メール受信から、わずか数十秒で、担当営業のタスクリストに直接追加されるようになりました。
- 【効果②】対応品質の“標準化”と、ミスの撲滅: AIが、常に同じ、客観的な基準で、一次判断を行うため、担当者のスキルや思い込みによる判断ミスや、対応の抜け漏れが、完全に撲滅されました。
- 【効果③】高付加価値業務への“劇的シフト”: 毎日1時間以上、年間で実に240時間以上もの時間を、単純作業から解放された高橋さんと彼のチームは、人間にしかできない、より価値の高い仕事に、再投資できるようになりました。
第5章:注意点と、成功のための心構え
- プロンプトこそが、この自動化の“脳”である: このワークフローの賢さは、ひとえに、Geminiに与える「プロンプト」の質にかかっています。
- エラーハンドリングを忘れない: もし、AIがうまく分類できなかった場合に、その処理をどうするか、という「エラー時のルート」も、必ず設計しておきましょう。
- コスト意識を持つ: Make/Zapierも、Gemini APIも、基本的には従量課金制のサービスです。無駄な処理を大量に実行しないよう、フローを賢く設計する、コスト意識も重要になります。
まとめ:あなたは「ツールの利用者」から、ツールを操る「自動化の設計者」へ
Geminiと、Make/ZapierのようなiPaaSの組み合わせは、もはや、一部のエンジニアだけのものではありません。それは、プログラミング知識のない、すべてのビジネスパーソンが、自らの手で、知的で、柔軟な「デジタル社員(AIワーカー)」を創造し、日々の退屈な業務を、根本から自動化するための、強力な武器なのです。
あなたは、これからも、ツールとツールの間で、情報のバケツリレーを続けますか?それとも、ツールたちを自在に操る、「自動化の設計者」へと、進化しますか?
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今回ご紹介したワークフロー構築は、次世代の業務改革(BPR)の、ほんの始まりです。「自社の、どの業務が、この“AI × iPaaS”の組み合わせで、最も劇的に効率化できるのか、専門家と一緒に洗い出したい」「MakeやZapier、そしてGemini APIを、体系的に学び、社内で、自在に自動化フローを構築できる“DX推進人材”を育成したい」「個別の業務改善だけでなく、部署を横断した、全社的なワークフローの最適化と、そのためのシステム設計を、専門家に伴走してほしい」
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