補助金が「借金返済」に消える?
第三セクターが陥る資金管理の罠と
「色分け」会計のすすめ
岡山県総社市で発覚した第三セクター「そうじゃ地食べ公社」の不祥事は、自治体ビジネスに関わる全ての関係者に衝撃を与えました。市からの補助金約2億円が、本来の目的(米の調達)ではなく、公社の慢性的な赤字補填に流用されていたのです。
なぜ、これほど巨額の資金が目的外に使用されてしまったのでしょうか?
その根本原因は、悪意の有無以前に、補助金特有の「キャッシュフローの構造的リスク」に対する管理不足にあります。
第1章:なぜ流用が起きる? 「魔のタイムラグ」とつなぎ融資
補助金事業において最も重要なキーワードは「精算払い(後払い)」と「つなぎ融資」です。 第三セクターが使途指定型補助金を活用する場合、資金は以下のように動きます。
本来の健全な資金サイクル
- 事業実施・発注:プロジェクトを開始する。
- 融資実行(つなぎ融資):手元資金がないため、銀行からお金を借りる。
- 業者への支払い:借りたお金で業者へ払う。
- 実績報告・検査:自治体や国に完了を報告。
- 補助金入金:検査合格後、補助金が入る。
- 一括返済:入金された補助金で、銀行への借金を即座に返す。
総社市事例における「流用のメカニズム」
多くの第三セクターでは、補助金、委託費、自主事業収入(物販等)が、一つの銀行口座で「ごちゃ混ぜ(どんぶり勘定)」になっています。
資金繰りが苦しい組織では、ステップ5で補助金が入金された際、それをステップ6(借金返済)に回さず、「別の赤字の穴埋め」や「運転資金」に使ってしまう誘惑に駆られます。 総社市のケースでは、監査機能が不全であったため、この「目的外流用」が発見されず、常態化してしまったと考えられます。
第2章:資金に「色」をつける。
freeeによるトレーサビリティ(追跡)確保
このリスクを排除するためには、会計データ上で資金の「出所(Source)」と「使途(Use)」を厳格に紐付ける必要があります。 クラウドERP「freee会計」を活用した具体的な実装策を紹介します。
1. セグメントタグによる「資金の色分け」
freeeの「セグメントタグ」機能を活用し、すべての入出金に「どの財布のお金か」をタグ付けします。
- Source_市補助金_コメ調達用
- Source_自主事業収入
これにより、もし「Source_市補助金」タグがついた資金が、「借入金返済(過去の赤字分)」という科目に使われていれば、システム上で異常として検出できます。
2. サンキー・ダイアグラムによる可視化
Looker Studioで「資金の流入(左側)」から「流出(右側)」への流れを太さで表現する「サンキー図」を描画します。
監査ポイント:
「市補助金」ノードから「借金返済」ノードへ線が伸びていれば、それは即座に調査対象(Red Flag)となります。
この図を議会や監査委員に示すことで、説明責任を果たす強力なツールとなります。
第3章:銀行交渉とガバナンスの両立
第三セクターにとって銀行からの融資は生命線ですが、銀行側も「補助金が確実に入り、確実に返済されるか」を厳しく見ています。 「Looker Studioによる資金管理ダッシュボード」を整備することは、銀行に対しても「管理能力の証明」となり、融資条件の交渉において有利に働く可能性があります。
「どんぶり勘定」からの脱却を。
組織の信頼を守るためには、もはやアナログな通帳管理では限界があります。
テクノロジーを活用し、資金の流れをガラス張りにする体制を構築しませんか?