「プロジェクトごとの本当の利益がわかるのは、いつも決算が終わってから」「社員が工数入力をサボるため、原価データが信用できない」

システム開発やコンサルティング、広告制作などの「プロジェクト型ビジネス」において、どんぶり勘定からの脱却は積年の課題です。会計ソフト(勘定奉行)と工数管理が分断されていると、赤字プロジェクトの発見が遅れ、経営リスクに直結します。

本記事では、勘定奉行と工数管理ツール(kintone等)を連携させ、「労務費(工数原価)」を自動配賦し、プロジェクト別収支をリアルタイムで見える化する手法について解説します。

なぜ連携が必要なのか?プロジェクト原価管理の「見えない化」問題

多くの企業で、プロジェクト収支が見えなくなる原因は「データの分断」にあります。

連携による3つの解決策

  • 労務費の自動配賦: 「誰がどの案件に何時間使ったか(工数)」と「その人の給与単価(労務費)」を掛け合わせ、自動でプロジェクト原価として計算します。
  • 二重入力の排除: 工数管理ツールに入力したデータがそのまま会計データになるため、経理担当者の転記作業がなくなります。
  • 収支のリアルタイム化: 月末を待たずに「今の時点での原価」が見えるため、赤字になりそうな案件に早期に対策を打てます。

工数管理ツール×勘定奉行のデータ連携フロー

理想的なデータ連携の流れは以下の通りです。

  • 工数入力(現場)

    現場社員はkintone等の使いやすいツールで「日報」や「工数」を入力します。スマホ対応など、入力負荷を下げる工夫が重要です。

  • 労務費単価マスタとの突合(自動計算)

    システム側で「社員ごとの時間単価(または標準単価)」を持ち、入力された工数時間を金額換算します。

  • 勘定奉行への連携(仕訳データ化)

    計算された原価データを、勘定奉行の「プロジェクトコード(セグメント)」ごとの振替伝票として連携します。

  • 予実管理・分析(経営層)

    売上データと連携された原価データを突き合わせ、プロジェクト別の粗利レポートを自動生成します。

【比較表】3つの具体的な連携パターン(API・ミドルウェア・CSV)

自社の規模や予算に合わせて、最適な連携方法を選びましょう。

連携手法 自動化レベル 費用感(目安) 特徴・推奨ケース
API連携
(リアルタイム)

(50万〜)
奉行クラウド利用者向け
奉行クラウドのAPIを利用し、ボタン一つでデータを同期。開発コストはかかるが運用は最も楽。
ミドルウェア
(iPaaSなど)

(準自動)

(30万〜)
柔軟性重視
「kintoneのデータを加工して奉行に入れたい」など、独自の計算ロジックを挟みたい場合に有効。
CSV連携
(手動取込)

(10万〜)
コスト重視・オンプレ版向け
奉行iシリーズ(オンプレミス)の場合、APIが使えないことが多いため、CSV連携が現実的。

プロジェクト別収支の「リアルタイム可視化」

連携によって実現する「見える化」のイメージです。

📊 プロジェクト収支レポート(例)

案件名 売上予算 外注費 労務費(工数) 現在粗利
A社基幹システム開発 1,000万円 200万円 450万円 350万円(注意)

※工数データが日々連携されることで、「労務費」が毎日更新され、予算超過のアラートを早期に出すことができます。

具体的な導入ステップと成功事例

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事例1: IT開発(従業員50名) – 月次決算を5日短縮

課題: 全社員がExcelで工数管理をしており、経理が集計・配賦計算するのに毎月1週間かかっていた。

解決策: kintoneで工数入力アプリを作成し、奉行クラウドとAPI連携。

効果:

  • 集計作業が自動化され、月次決算が5日早期化。
  • プロジェクトリーダーがいつでもkintone上で収支を確認できるようになり、コスト意識が向上。

事例2: 広告制作(従業員30名) – CSV連携で安価に実現

課題: 案件ごとのクリエイター稼働時間が把握できず、見積もりの精度が低かった。

解決策: 既存の工数ツールからCSVを出力し、奉行に取り込める形式に変換するツールを導入。

効果:

  • 過去の類似案件の「実質原価」が正確にわかるようになり、赤字受注を回避できるようになった。

よくあるトラブルと解決方法

プロジェクトコードが一致しない

原因: 営業(SFA)側と経理(奉行)側で、案件コードの発番ルールがバラバラな場合に発生します。

解決策: 「案件マスタ」を一元化します。例えばkintoneで案件を発番し、それを奉行のプロジェクトマスタに同期させる運用が確実です。

社員の単価を誰でも見れてしまう

原因: 工数管理ツール上で「金額」まで計算させてしまうと、給与情報が露呈するリスクがあります。

解決策: 現場ツール(kintone等)では「時間」の管理までとし、金額計算(単価×時間)は奉行側またはアクセス権限を絞った中間データベースで行います。

導入ステップとセキュリティ対策

導入ステップ

  1. 原価計算ルールの定義:標準単価を使うか、実単価を使うか。配賦基準をどうするか決めます。
  2. マスタ統一:プロジェクトコード、社員コードをシステム間で統一します。
  3. パイロット運用:一部の部署で工数入力を開始し、データ連携のテストを行います。

セキュリティ対策

労務費(給与)に関わるデータのため、アクセス権限の管理は最重要です。「誰がどの範囲のデータを見られるか(レコード権限)」を厳密に設計します。

よくある質問(FAQ)

Q. 奉行のオンプレミス版でも連携できますか?

A. CSV連携で可能です。
奉行iシリーズなどのオンプレ版はAPIがないため、連携ツールで「奉行受入フォーマットのCSV」を生成し、インポートする運用になります。

Q. 工数入力が定着するか不安です。

A. 入力負荷を下げる工夫が必要です。
「Googleカレンダーから予定を取り込む」「スマホで移動中に入力できる」など、現場が使いやすいUIのツール(kintoneなど)を選ぶことが成功の鍵です。

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まとめと定額支援のご案内

勘定奉行と個別原価管理(工数管理)の連携は、どんぶり勘定から脱却し、「利益の出る体質」を作るための経営基盤です。

成功のポイントは、「現場が入力しやすい環境を作ること」「経理が扱いやすいデータ形式で連携すること」のバランスです。

はてなベース株式会社では、kintoneと勘定奉行の連携実績が豊富にあります。「自社の原価計算ルールが特殊だけど対応できる?」「まずはCSV連携からスモールスタートしたい」といったご相談も大歓迎です。

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