「10店舗を超えたあたりから、Excelでの管理が限界を迎えた」「原価と売上の紐付けができず、プロジェクトごとの粗利が見えない」
これは、多くのFC本部様から寄せられる共通の悩みです。特に「店舗開発時の什器・備品販売」と「月次のロイヤリティ請求」は、計算ロジックが複雑になりがちで、ヒューマンエラーの温床となっています。
THE PROBLEM1. 多くのFC本部が陥る「エクセル管理」の限界点
システム導入前のクライアント様では、以下のようなアナログな運用が常態化しており、月末には経理担当者が残業で疲弊していました。
課題①:店舗開発における「見積・発注」の複雑さ
新店オープンの際、本部は様々な業者から什器や備品を仕入れ、FC加盟店へ販売します。しかし、単純な右から左への販売ではありません。
- 利益率の変動: 什器は20%、消耗品は10%、特定のブランド品は5%など、品目ごとに掛率が異なる。
- 配送費・諸経費: 仕入れ先からの送料と、加盟店への送料が異なり、都度手計算で調整が必要。
- 型番変更: メーカーの型番が変わるたびに、Excelマスタを更新する手間が発生(または古い型番で発注してしまうミス)。
これらを、業者から届く何十行もの見積書(Excel/PDF)を見ながら手計算し、転記ミスがないかダブルチェックする作業だけで膨大な時間がかかっていました。
課題②:ロイヤリティ計算の「最低保証額」判定
FCビジネスの根幹であるロイヤリティ請求も、「売上の〇%」という単純計算で済むケースは稀です。
- 売上が低い月でも、ブランド維持費として「最低保証額(ミニマムチャージ)」を徴収する契約がある。
- 契約ごとの揺らぎ: 直営からオーナーへ譲渡した店舗は「初年度のみロイヤリティ半額」など、特例ルールが散在している。
課題③:プロジェクトごとの「粗利」が見えない
最も深刻なのが経営視点での課題です。「会計ソフト(freee)」と「販売管理(Excel)」が分断されているため、「結局、A店の出店プロジェクトでいくら儲かったのか?」がリアルタイムに見えていませんでした。
SOLUTION ARCHITECTURE2. 解決策:kintone × freee販売 連携システムの全体像
なぜ、パッケージ型の販売管理ソフトではなく、kintoneを選んだのか?それは「FC特有の複雑な計算ロジック」に柔軟に対応するためです。以下が構築したフロー図です。
プロジェクトの親データ(案件コード、期間、担当者)を登録します。これが全てのデータの結節点となります。
仕入れ明細CSVを取り込み、商品区分ごとの掛け率計算、見積書のPDF生成を自動で行います。複雑なロジックは全てここに集約します。
kintoneで確定した数字をAPIで連携。請求書の発行から、売掛金の消込、会計仕訳までをシームレスに処理します。
STORE DEVELOPMENT3. 【店舗開発DX】仕入れ掛け率の自動計算と見積作成
ここが業務効率化の最大のポイントです。kintone上に「商品マスタ」と「計算アプリ」を構築し、以下の機能を実装しました。
STEP 1:仕入れ明細CSVのインポート
仕入れ業者から受領したExcelやCSVデータを、そのままkintoneにインポートします。手入力は一切不要です。
STEP 2:商品区分に応じた「販売単価」の自動算出
kintoneに取り込まれた瞬間、事前に設定されたマスタデータに基づき、以下の計算が自動で行われます。人が判断する必要はありません。
| 商品名 | 仕入単価 | 商品区分 | 掛け率 (自動) | 販売単価 (自動) |
|---|---|---|---|---|
| 店舗用メイン看板 | 150,000円 | 什器 | 1.2 (20%) | 180,000円 |
| 展示用シェルフ | 25,000円 | 什器 | 1.2 (20%) | 30,000円 |
| 店舗用ゴミ箱 | 2,000円 | 備品 | 1.1 (10%) | 2,200円 |
PROFIT VISUALIZATION4. 【経営管理DX】案件ごとの「粗利」を可視化する
kintoneで見積が承認され、発注・納品フェーズに進むと、そのデータはfreee販売へAPI連携されます。このシステムの肝は、全てのデータが「freee案件ID(例:80015430)」で紐付いていることです。
【案件:新宿南口店 出店プロジェクト】の収支サマリー
- 売上実績 322,000円
- 仕入実績 260,000円
- 粗利実績 62,000円 (19.3%)
これまでは月次決算を締めないと見えなかった「プロジェクト別収支」が、日次レベルで可視化されるようになります。これにより、「利益率の低い案件」を早期に発見し、対策を打つことが可能になります。
ROYALTY CALCULATION5. 【ロイヤリティDX】最低保証額の自動判定ロジック
毎月の請求業務においては、kintoneアプリに実装した「判定ロジック」が威力を発揮します。
実際の判定事例(12月度の例)
① 新宿店(売上好調)
- 売上:5,000,000円
- 料率:5% → 計算額:250,000円
- 最低保証額:100,000円
(売上歩合を採用)
② 池袋店(売上不振)
- 売上:800,000円
- 料率:3% → 計算額:24,000円
- 最低保証額:50,000円
(最低保証額を採用)
FAQ6. よくある質問
SUMMARY7. まとめ:システムが計算し、人は「判断」をする
本事例の成功要因は、単にツールを導入しただけでなく、「属人化していた計算ルール(掛け率や最低保証)」をシステムに定義し、自動化したことにあります。
- 見積作成時間:数時間 → 数分
- ロイヤリティ計算:3日 → 1時間
- 経営判断:翌月試算表待ち → リアルタイム粗利把握
「ウチの計算ルールは特殊だからシステム化できない」と諦める前に、ぜひkintoneによるアジャイル開発をご検討ください。