デジタル庁の公開資料から、研修に使える教材 22 選——民間企業での使いどころつきで用途別に整理

デジタル庁は職員研修の資料や行政向けの手引きを外部に公開している。実際に開いて確認できた 22 項目(動画のまとまりや素材集は1項目と数えた)を5分類に整理し、民間企業での使いどころを1項目ずつ書いた。

社員研修の教材は、外部の講座を買うか、自分たちで作るかの二択になりがちです。その手前に、無料で読める素材があります。デジタル庁が職員向けに作った研修資料や、行政機関向けの手引きを、そのまま外部に公開しているものです。

ただし探しにくい。「研修資料」という名前の一覧ページは無く、標準ガイドラインの資料一覧、オープンデータのページ、デザインシステムの配布ページ、採用ページと、置き場所が分かれています。そこで、実際に開いて中身を確認できたものだけを用途別に並べ、民間企業での使いどころを1項目ずつ書きました。無料で学べる教材という点ではClaude 公式の無料講座を学ぶ順番にまとめた記事も併せて読めます。

デジタル庁の公開資料 22 項目(動画のまとまりや素材集は1項目と数えた)を実際に開いて確認し、データ、標準ガイドライン群、生成 AI、デザイン・アクセシビリティ、人材・動画の5つに分けた。選ぶときは課題から入る。生成 AI を全社で使うか検討中なら DS-920 のガイドライン、社内のデータ整備が止まっているならデータマネジメント研修、自社サイトを直す予定があるならウェブアクセシビリティ導入ガイドブック。いずれも無料で読めるが、社外に配ったり加工したりするときは資料ごとの利用条件を確認する。

この記事の要約

行政向けの資料を、民間が使ってよい理由

最初に権利の話を片付けます。デジタル庁は、同庁ウェブサイトのコンテンツに「公共データ利用規約(第1.0版)」が適用されると案内しています。出典を書けば複製・公衆送信・翻案ができ、商用利用も規約上は可能という内容です。編集や加工をした場合は、出典に加えて加工した旨と加工した主体も明記します。ただしシンボルマークやロゴ、別の利用ルールが明示されているコンテンツは対象外で、資料の中に第三者が権利を持つ写真や図が含まれることもあります(コンテンツの利用について)。ここに書いたのは規約の記載であって、個々の資料をどこまで使えるかは、その資料の掲載ページの表示を見て判断してください。

条件を満たす範囲であれば、社内研修との相性はよい。資料をそのまま配ることも、自社の言葉に直して社内向けスライドに作り直すこともできます。

デジタル庁の公開資料22項目を5分類で並べた図。左からデータ6項目、標準ガイドライン群4項目、生成AI4項目、デザインとアクセシビリティ4項目、人材・動画4項目。動画のまとまりや素材集は1項目として数えている。各列に項目名と形式・分量を1行ずつ載せ、下部に、形式はPDFが中心でスライド・動画・Figmaデータ・Word/Excelのテンプレートもあること、公開日は2021年3月から2026年8月まで幅があり掲載ページで最新の改定日を見ることという注記。各項目の正式名称・公開日・民間での使いどころは本文の表に記載
確認できた22項目の内訳(作成 はてなベース株式会社。デジタル庁ウェブサイトの掲載内容 2026年9月8日時点に基づく)

形式は PDF が中心で、ほかにスライド、動画、Figma のデザインデータ、Word や Excel のテンプレートがあります。公開日は2021年3月から2026年8月まで幅があります。以下、分類ごとに見ていきます。

データ——社内のデータ整備に共通語を作る6本

最初の1本は Speaker Deck に置かれている「データマネジメント研修(デジタル庁)」です。デジタル庁の Fact & Data Unit の職員が庁内研修で使った内容を、外部公開用に調整して2026年8月28日に出したもの。92枚のスライドで、資料の説明文にも「民間でもデータマネジメントについて知りたい人の入り口用としてご活用ください」と書かれています。データマネジメントの12領域を、概念とわかりやすさ優先で通す初学者向けの構成です。

経営層に読ませるなら「データガバナンス・ガイドライン」(PDF 27ページ、2025年6月20日)のほうが向きます。冒頭で対象読者を「主として企業の経営者」と明記した、行政向けではなく民間向けに書かれた文書だからです。守るべきデータを守りながら共有・連携する相手には出せるようにする、という考え方が軸になっており、社内データの取り扱いを決める会議の下敷きになります。AI に社内データを触らせる前の整理はデータの持ち出し範囲と権限を先に決める話にも書きました。

資料名形式・分量公開日/更新日民間での使いどころ
データマネジメント研修(デジタル庁)スライド 92 枚2026年8月28日データ担当の入門研修。12 領域の名前を社内の共通語にし、手つかずの領域を洗い出す
データガバナンス・ガイドラインPDF 27 ページ2025年6月20日対象読者が企業の経営者。役員会でデータの持ち主と使ってよい範囲を決める資料の下敷き
オープンデータ研修動画(お手軽導入編 約11分/初級編 約17分/中級編 約29分)動画 3 本掲載ページで公開中自社の公開データを整える前の予習。1 本ずつ会議の冒頭に流せる長さ
同 研修資料(お手軽導入編・初級編・中級編)+理解度テストPPTX と PDF、理解度テストは入力フォームお手軽導入編・初級編 2024年5月27日更新/中級編 2025年7月24日更新PPTX を自社向けに書き換えて社内研修の教材にする。理解度テストは受講後の確認に使える
地方公共団体手引書「オープンデータをはじめよう」PPTX(全体版・簡易版)2021年6月15日改定取引先や業界団体にデータを公開する手順の型。行政向けの記述は読み替えが要る
公共データ利用規約(第1.0版)PDF・Word・Markdown(解説付き)2024年7月5日自社が公開するデータの利用条件を書くときの参考。Word 版があるので条文を持ち出しやすい

オープンデータの研修動画と資料は学習資料のページにまとまっています。動画は約11分・約17分・約29分の3本で、同じ内容の PPTX と PDF、それに理解度テストの入力フォームが付く。社内研修の教材としては、この「動画+スライド+確認テスト」が揃っている構成が一番そのまま流用しやすい形です。

もう1本、扱いに注意が要るものがあります。「データマネジメント実践ガイドブック(導入編・運用編)」と、それに付く調査票テンプレート例4種です。政府相互運用性フレームワーク(GIF)の GitHub リポジトリで配布されていましたが、2026年1月8日の GIF v2.2 で管理対象から外れ、今後の更新と公式の説明の対象外になりました。過去の版として v2.1(2025年10月1日)から Word ファイルを取得できます。中身は使えますが、最新版として社内に配るのは避けたほうがよい。

標準ガイドライン群——システムを外注するときの教科書

政府が情報システムを企画し、予算を取り、調達し、開発し、監査するまでの手順を定めた文書群が「デジタル社会推進標準ガイドライン」です。資料一覧のページに DS-100 から DS-920 まで並んでいます。民間には適用されませんが、研修資料の中で「自治体や独法の方々も対象ですか」という質問に対し「ルールとしての適用対象ではありません。業務の進め方の参考として利用いただければありがたいです」と答えているとおり、参考として読むことは想定されています。

資料名形式・分量改定日民間での使いどころ
(参考)標準ガイドライン研修資料PDF 123 ページ2022年5月9日掲載DS-100・110・120 の全体像を1本で掴む。予算要求・調達・設計開発・監査の各章に「よくある悩み」と対応が載る
DS-110 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書PDF2026年6月12日(2026年7月15日更新)本体の条文が何を意図しているかの逐条解説。社内規程を書くときの言い回しの参考になる
DS-120 実践ガイドブック+各種テンプレートPDF と、Word・Excel・PowerPoint のテンプレート一式2026年6月12日(2026年7月15日更新)要件定義書と調達仕様書の標準テンプレートが含まれる。相見積りで各社の見積り根拠を揃えたいときに効く
DS-121 アジャイル開発実践ガイドブックPDF 37 ページ2021年3月30日短い区切りで作りながら決める進め方の基礎。発注側が何を理解しておく必要があるかが分かる

民間で一番使い道があるのは DS-120 に付く各種テンプレートです。要件定義書と調達仕様書の標準テンプレートが Word・Excel の形で入っており、項目立てをそのまま自社の発注様式に足せます。システムを外注していて「各社の見積りが比べられない」という状態なら、発注側の書面の項目が揃っていないことが原因の一つとして考えられます。ただし書面を揃えても差は残ります。各社の提供範囲、対象外にしている作業、保守費用の含み方、想定している品質水準が違うためです。テンプレートで項目を揃えたうえで、この4点を各社に同じ質問文で聞き、回答を並べて比べてください。

一方で DS-121 は2021年3月から改定が止まっています。内容が古くなっているという意味ではなく、この5年で開発の進め方は動いているので、基礎の整理として読み、具体的な進め方は別で補うのが現実的です。

生成 AI——政府が自分たちに課したルールと、失敗を含む検証記録

社内の生成 AI 利用ルールを作る担当者には、DS-920「行政の進化と革新のための生成 AI の調達・利活用に係るガイドライン」(PDF 64ページ)を勧めます。2025年5月27日の初版を2026年6月12日に改定したもので、標準ガイドライン群の中では数少ない Normative(遵守する内容を定めた文書)の位置づけです。目次は、用語の定義、対象範囲、利活用の方針、体制、便益とリスク、企画・調達・開発運用・利活用の各段階の管理、リスクが起きたときの報告、という並び。社内規程の目次としてほぼそのまま使える構成になっています。

目次を借りたあと、担当者が自分で埋めるのは5つです。どの業務に使うか、入力してよい情報とだめな情報の線、使い始めるときに承認する人、出てきた文章を業務に出す前に確認する人、事故が起きたときの連絡先。たとえば「見積書の下書き作成に使う。顧客名と単価は入力しない。利用開始は部門長が承認する。出力は作成者と上長の2名が確認する。誤った内容が社外に出たら情報システム担当へ即日連絡する」と書けば、数行でも規程として機能します。

特に参考になるのが、高リスクな使い方をどう判定し、誰が判断するかを決めている点です。責任者を置き、その責任者がリスクの水準を判断する、という形が明記されている。社内でこれを決めずに「生成 AI は自己責任で」と配ってしまうと、事故が起きたときに誰も判断していなかったことが後から分かります。社内文書を AI に検索させる仕組みを入れる場合の設計は社内ナレッジ検索の記事にまとめました。

ただし政府の体制をそのまま写すと自社では動きません。DS-920 は AI 統括責任者を置く形ですが、社員50人の会社なら、全社の方針は管理部門の役員が兼務で持ち、部門ごとの使い方の可否は部門長が判断し、日々の相談先は情報システム担当1名、というように自社の役職へ置き換えてから配ってください。

資料名形式・分量公開日/改定日民間での使いどころ
DS-920 行政の進化と革新のための生成 AI の調達・利活用に係るガイドラインPDF 64 ページ2025年5月27日初版、2026年6月12日改定社内の生成 AI 利用ルールの目次に流用する。高リスクの判定と責任者の置き方、記録の取り方の章がそのまま効く
アナログ規制見直しの地方公共団体の作業効率化に向けた方策(生成 AI のプロンプト例と留意点)PDF 30 ページ2025年3月27日指示文の書き方の実例集。役割を与える、工程を分けて途中で確認する、出力の根拠を書かせる、の3点は業種を問わず使える
R6 年度 生成 AI の業務利用に関する技術検証、利用環境整備 報告書PDF 90 ページ2025年6月2日検証で何がうまくいかなかったかまで書かれている。自社で試す前に、つまずく箇所の見当をつける
ガバメント AI「源内」の展開状況(参考資料)PDF 30 ページ2026年5月全職員規模で生成 AI を配るときの進め方の実例。段階的な展開と、利用を支えるデータ基盤の位置づけが読める

プロンプト例の資料は、条例の条文からアナログ規制に当たる箇所を洗い出し、見直しの方向を検討する、という行政特有の作業が題材です。それでも指示文の組み立て方は流用できます。解説記事によれば、資格を持つ担当者という役割を与えたうえでマニュアルを参照させ、根拠にした情報源を必ず書かせる。工程を分けて各段階で出力を確認する。役割と制約を区切って複数案を出させる。この3つは行政特有の作業に限った話ではなく、契約書のチェックや申請書類の下書きにも移せる、というのが当社の見立てです。

報告書のほうは委託事業者が書いた最終報告書に基づくもので、支障となった事象とその要因、専門家の対応策まで載っています。うまくいった話だけの事例集より、自社で試す前に読む価値がある。読みながら、自社の試行計画に写す項目は5つです。対象にする業務、比べる相手(いまの手作業か、既に使っているツールか)、出力を確認する時間まで含めた所要時間、どこまでの誤りなら許容するか、続ける条件と止める条件。最後の1つを先に決めておかないと、結果が出ないまま試行だけが続きます。

デザイン・アクセシビリティと、人材・動画

自社サイトを持っている会社に効くのが DS-671.2「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」(PDF 64ページ)です。2022年12月に公開されたものを標準ガイドラインに編入し、2025年10月16日に内容を最新化しました。対象読者は、アクセシビリティ(情報へのアクセスのしやすさ)に初めて取り組む行政官と事業者。事業者が最初から対象に入っているので、読み替えの手間がほとんどありません。

広報担当には DS-672.1「ウェブアクセシビリティ広報向けガイドブック」(PDF 37ページ、2026年6月1日)のほうが実務的です。サイトを作った後に足していく記事や動画、SNS 投稿のアクセシビリティに絞った内容で、同じページに広報向けコンテンツチェックリストも置かれています。チェックリストは制作会社への発注時にそのまま渡せます。

資料名形式・分量改定日民間での使いどころ
DS-671.2 ウェブアクセシビリティ導入ガイドブックPDF 64 ページ2025年10月16日(2022年12月公開の資料を最新化)自社サイトの見出し・代替テキスト・色の濃さを点検する。対象読者に事業者が含まれる
DS-672.1 ウェブアクセシビリティ広報向けガイドブック+広報向けコンテンツチェックリストPDF 37 ページ+チェックリスト2026年6月1日(チェックリストは2025年10月16日掲載)記事・動画・SNS 投稿の作り方。チェックリストを制作会社への発注条件にする
DS-671.1 ユーザビリティ導入ガイドブックPDF 104 ページ2026年6月1日誤操作を起こしにくい画面の作り方。社内システムの画面を作り直すときの判断材料
デジタル庁デザインシステム リソースFigma データ、HTML と React のコード、ドキュメント(Markdown・2026年8月19日版)、イラスト・アイコン素材Figma とコードは2025年2月28日申請フォームや社内システムの画面部品の参考。イラスト・アイコン素材は利用規約の範囲で商用利用も無料

デザインシステムの配布ページには、Figma のデザインデータ、HTML 版と React 版のコード、ドキュメント一式の Markdown、それにイラストとアイコンの素材が置かれています。イラスト・アイコン素材の利用規約では商用利用も可能で、編集や加工をしない限り出典表示は必須ではありません。ただし、加工したものを国が作ったかのように見せることは禁止されています。行政手続きの説明に使う想定で作られた素材なので、申請や手続きの案内ページとは相性がよい。

資料名形式・分量公開日/更新日民間での使いどころ
デジタル推進委員向け動画コンテンツ動画(スマートフォンの基本操作、電話・カメラ、メール、インターネット、アプリの導入、地図、オンライン会議など)2026年4月1日高齢の従業員や、スマートフォンに不慣れな現場向けの導入研修。1 本ずつ短く、社内配信に使える
採用イベント・政策テーマ別セミナー動画アーカイブ動画 15 本(国際戦略 2026年4月21日、医療 DX 2026年1月23日、教育 DX 2025年12月19日、AI 政策 2025年11月21日 ほか)掲載ページで公開中(確認できた回は2025年3月〜2026年4月)自社の業界に関わる政策の全体像を職員本人の説明で掴む。営業資料の背景整理に使える
GCAS ガイド(ガバメントクラウド全般ガイド)Web ページ(概要解説 8 章+クラウド事業者別の技術ガイド)掲載ページで公開中クラウド移行を検討する情シス向け。目指す姿・制限や制約・必須検討事項・調達方法の並びが自社の検討項目表になる
デジタル庁におけるデジタル人材確保・育成計画(概要)PDF 7 ページ2024年10月3日外部から専門人材を採るときの職種の切り方と育て方の考え方。人事が採用計画を書くときの参考

なおデジタル人材の育成・確保のページからリンクされている「マナビ DX」と「マナビ DX クエスト」は、情報処理推進機構(IPA)が運営するもので、デジタル庁が作った資料ではありません。学習の場としては有力ですが、この記事の一覧には含めていません。AI 関連の資格や講座を体系的に選ぶ話は資格の記事にまとめてあります。

民間の中小企業が最初に開く1本——いまの課題から選ぶ

22項目すべてに目を通す必要はありません。会社の規模が小さいほど、読んだ数より読んだ後に何を決めるかで差がつきます。いま止まっているところから最初の1本を選ぶ形に整理しました。

民間企業が最初に開く1本を、いまの課題別に示した表形式の図。生成AIを全社で使うか決めたい場合はDS-920生成AIの調達・利活用ガイドライン(PDF64ページ)で、利用業務・入力してよい情報・承認者・出力の確認者・事故時の連絡先の5つを書き出す。社内のデータ整備が止まっている場合はデータマネジメント研修(スライド92枚)で、12の領域の名前を社内の共通語にし、手つかずの領域を1枚に書き出す。自社サイトを直す予定がある場合はウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(PDF64ページ)で、見出し・代替テキスト・色の濃さを点検し、広報向けのチェックリストを制作会社に渡す。データを誰が持ち誰が使うか決まっていない場合はデータガバナンス・ガイドライン(PDF27ページ)で、役員会でデータの持ち主と使ってよい範囲を決める。システムの相見積りが比べられない場合はDS-120実践ガイドブックと要件定義書・調達仕様書テンプレートで、次の発注で何を書けば見積りが揃うかを目次で確認する。下部に、公開資料で言葉をそろえる、自社のデータで手を動かす、決めた内容を社内規程に落とす、という共通の進め方と、公開資料は行政向けに書かれており読み替えずに社内規程へ貼り付けないという注意
課題別の入口。読む順ではなく、いま止まっているところから選ぶ(作成 はてなベース株式会社)

生成 AI を全社で使うかどうかを検討している会社は DS-920 から。使うと決めれば、遅かれ早かれ社内ルールを書くことになります。ゼロから書くと禁止事項の羅列になり、現場が読まない文書ができあがる。政府が自分たちに課したルールは、使わせることを前提に、どこまでを誰が判断するかで組み立てられています。この構造を借りるのが早い。研修そのものを大きな規模で回した例は、当社が別記事で扱った3万人規模の AI 研修を参照してください。

社内のデータ整備が止まっている会社はデータマネジメント研修。整備は、担当者ごとに言葉が違うところでまず止まります。品質、標準、管理、活用といった語を全員が別の意味で使っている状態では、どこから手を付けるかの議論が噛み合わない。92枚のスライドは、その共通語を作るのに使えます。初学者向けと明記されているので、経理や総務の担当者にも渡せます。

自社サイトを直す予定があるならウェブアクセシビリティ導入ガイドブック。手元にあって今日から直せる対象があるので、読んで終わりになりにくい。見出しの階層、画像の代替テキスト、文字と背景の色の差といった点検項目に落ちます。制作会社に発注している場合も、次の改修の要望としてそのまま渡せる形です。

使うときの注意と、社内研修への組み込み方

4つ注意があります。1つ目、政府調達向けの記述をそのまま社内規程にしない。標準ガイドライン群は、予算の取り方や府省庁の体制を前提に書かれています。文章の型は借りられますが、手続きの部分は自社の決裁の形に置き換える必要がある。読み替えずに貼り付けると、実行できない規程ができます。

2つ目、公開日が古いものは改定を確認する。DS-121 は2021年3月、オープンデータの手引書は2021年6月から更新されていません。データマネジメント実践ガイドブックのように、管理対象から外れて更新が止まったものもあります。資料の日付だけでなく、掲載ページ側で最新の改定日を見てから配ってください。

3つ目、利用条件を資料ごとに確認する。デジタル庁ウェブサイトのコンテンツには公共データ利用規約が適用されると案内されていますが、ロゴやシンボルマークは対象外です。デザインシステムのイラスト素材のように、別の利用規約が示されているものもある。資料の中に第三者が権利を持つ写真や図が含まれることもあります。社外に配る資料へ転載するときや、加工して使うときは、その資料の掲載ページで条件を確認する手順を挟んでください。オープンデータのページに規約の本文と解説が置かれています。

4つ目、内容の解釈を断定しない。これらはガイドラインや手引きであって、法令ではありません。「この資料に書いてあるから法的に問題ない」という読み方をすると、判断を誤ります。社内規程に落とす段階では、自社の顧問弁護士や社労士の確認を通すのが前提です。

組み込み方の一例として、当社が研修事業部を持つ会社として勧めている順を書きます。公開資料で共通語を作り、その後で自社データを使った演習に入る、という2段構えです。1段目は座学で、資料をそのまま使います。データマネジメント研修の12領域なら、スライドを読んだ後に「うちで手が付いている領域はどれか」を全員で1枚に書き出すところまでを1回目にする。ここで用語の理解が揃います。

2段目で自社のデータを持ち込みます。ただし1回目は架空のデータか、社名と個人名を伏せたものを使ってください。実データを使うなら、誰が使用を承認するか、どの端末とどの保存先で扱うか、演習で作った資料をどこまでの範囲に見せてよいかを、演習の前に決めます。題材は取引先マスタや請求データのように、どの項目が重複しているか、どこで表記が揺れているかを手を動かして洗い出せるものが向きます。公開資料の一般論を、自社の具体に接続する工程です。

この順は、初めて学ぶ人が中心の場合を想定したものです。データの整備や生成 AI の利用を実務で回した経験者が集まるなら、1段目を各自の事前読みにして演習から始めても構いません。逆に用語の理解が揃っていない状態で自社データから始めると、作業は進んでも、なぜそれをやるのかが担当者に残りにくい。

内製で足りるのは、公開資料を読んで自社向けに書き直せる人が社内にいて、演習に使うデータの持ち主が同じ部署にいて、決めた内容を規程に落とす窓口が決まっている場合です。外部の支援を入れたほうがよいのは、行政向けの記述を自社の決裁の形に読み替える判断ができない、部署をまたぐデータの持ち主の調整が付かない、規程の文面を書いた経験が社内に無い、のいずれかに当たるときだと考えています。

1回あたりの分量は、1段目が90分、2段目が半日を目安にしています。動画がある教材なら、1段目を各自の事前視聴にして、集まる時間を書き出しの議論に使うほうが早い。オープンデータの研修動画に理解度テストが付いているのは、この使い方を想定した作りです。

デジタル庁の公開資料は「無料の教材」として実用に足ります。ただし全部を読む必要はなく、いま止まっている課題に対応する1本を選び、読んだその日に何を決めるかまで決めておくこと。そして行政向けの記述は必ず読み替えること。この2点を守れば、外部の講座を買う前にできることがかなり残っています。

公開資料を土台に、自社のデータ整備と生成AI利用ルールを作ります

どの資料を社内の誰に配るか、そこから何を決めるか、決めた内容をどう規程と業務の形に落とすか。行政向けの記述の読み替えを含めて、貴社の状況に合わせて一緒に組み立てます。データの棚卸しから、生成 AI の利用範囲と記録の取り方の設計、社内研修の組み立てまで対応できます。

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