架空のA社で考えてみます。社員は30人で、経理は経理課長と担当のBさんの2人です。いまは会計をfreee会計(アドバンスプラン)で、経費精算と請求書の受け取りをバクラクで回しています。決算は3月です。
A社がfreee会計に切り替えたのは、2024年4月の期首です。それまでは、パソコンにインストールして使う会計ソフトでした。切り替えを決めた2023年の秋、経理課長はまず旧ソフトから勘定科目の一覧を出し、freeeに入れてみようとしました。ところが、旧ソフトで使ってきた補助科目をどこに入れればよいのかが分かりません。銀行の明細は、どこまで過去にさかのぼって取り込めるのか。過去の仕訳は何期分入れるのか。いつから「freeeで動いている」と言えるのか。手を動かすほど、まだ決めていないことが見えてきました。
会社も設定も架空ですが、珍しくない場面だと考えられます。freee会計の導入を、どの工程で、何を決めながら進めればよいのか。はてなベースが導入支援で使っている5つの段階に沿って、A社の導入を振り返りながら見ていきます。freeeの仕様は、2026年10月8日時点の公式ヘルプで確かめています。
freee会計の導入は、体制とスケジュール、業務の棚卸しと初期設定、運用テスト、乗り換え(本稼働)、本格運用の5段階で進めると整理しやすくなります。段階の並びは、後から変えにくいものを先に決める、と考えると理解しやすくなります。勘定科目とタグの分け方、データ移行の範囲、「稼働」の定義は、データを入れる前に決めておくと手戻りが減ります。はてなベースの導入支援では、「freeeで1か月分の月次が締まり、自社で決めた承認や確認の手順が回っている」状態を本稼働の目安にしています。期間は、支援の打ち合わせが本稼働まで約4か月、社内の本格運用までが7〜8か月を目安にしていますが、移行の範囲や乗り換えの時期で変わります。
この記事の要約
全体の流れを1枚にまとめると、次の図のとおりです。

導入は5つの段階で進む——後から変えにくいものから決める
全体の流れと段階ごとに決めること、この記事に出てくる言葉を先にまとめます。
freee会計の導入では、誰が決めるのか、過去のデータをどこまで入れるのか、誰にどの権限を渡すのか、といった判断が設定の前に並んでいます。はてなベースの導入支援では、これを次の5つの段階に分けて進めています。
| 段階 | 主に決めること | 次へ進む目安 |
|---|---|---|
| 1 体制とスケジュール | 担当者と決裁者、「稼働」の定義 | 誰が何を決めるかが一覧になっている |
| 2 業務の棚卸しと初期設定 | 勘定科目とタグ、移行の範囲、口座の連携、権限 | マスタと開始残高が入っている |
| 3 運用テスト | 実際の明細で入力・承認・締めを試す | テスト期間の試算表を説明できる |
| 4 乗り換え(本稼働) | 切り替える日、旧ソフトの扱い | 1か月分の月次が締まり、承認や確認の手順が回る |
| 5 本格運用(定着) | 社内への展開、見直しの頻度 | 担当者が替わっても回る |
この並びは、「後から変えにくいもの」を先に置く、と読むと理解しやすくなります。たとえば勘定科目やタグの分け方を、仕訳を入れたあとに変えると、入れた仕訳を直す手間がかかります。反対に、自動登録ルールは、運用しながら足したり直したりできます。
期間の目安は、何の期間かで2つある
打ち合わせによる支援の期間と、社内の仕事として定着するまでの期間は、長さが違います。
| 何の期間か | 目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 支援の打ち合わせ | 約4か月(本稼働まで) | キックオフから、本稼働を確かめるまで。1回1時間ほどの打ち合わせを重ねる |
| 社内で本格運用になるまで | 7〜8か月が目安 | 従業員への展開や運用の見直しを経て、社内の仕事として定着するまで |
どちらも、はてなベースの導入支援での目安で、移行の範囲や経理の体制で変わります。支援の料金も工数の積み上げで見積もり、データ移行をどこまではてなベースが担うかで変わります。
期首に乗り換える場合は、本稼働の月が期首の日付で決まります。そのため、打ち合わせの期間とは別に、期首までの待ち時間が生じることがあります。
この記事に出てくる用語
| 用語 | ひとことで言うと | 身近な例(架空のA社) |
|---|---|---|
| 取引 | freeeでの基本の入力の単位。口座と勘定科目を選んでお金の動きを登録する | 普通預金から家賃を払った、を1件として入れる |
| 口座 | 銀行口座、クレジットカード、現金など、お金の出入口 | 2つの銀行口座と法人カード |
| タグ | 勘定科目の内訳や詳しい情報を補う目印。取引先・品目・部門・メモタグ・セグメントがある | 売上に取引先「X社」を付ける |
| 補助科目 | 多くの会計ソフトで勘定科目の内訳に使う区分。freeeではタグと口座が役割を担う | 旧ソフトの「売掛金/X社」 |
| 開始残高 | freeeを使い始める時点の資産・負債・純資産の残高 | 前期末の貸借対照表の数字 |
| 年度締め | その年度を締めて、翌年度へ残高を繰り越す操作 | 前期の仕訳を移したあと、前期を締める |
| 自動で経理、自動登録ルール | 明細から取引を登録する画面と、その登録を推測・自動化するルール | 毎月の家賃を、決まった科目で登録する |
| 本稼働 | freeeを正式な帳簿として使い始めた状態。この記事では「1か月分の月次が締まり、承認や確認の手順が回る」を目安にする | 4月分が締まった |
体制の段階でつまずきやすい点
1つ目の段階は短く終わりがちですが、後のつまずきの多くはここで決めなかったことから始まります。導入支援でつまずきやすい点として整理しているものを挙げます。
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 仕訳のルールが、担当者の頭の中にしかない | 異動や退職で、科目の使い分けを説明できる人がいなくなる | 棚卸しの最初に、仕訳のルールを聞き取って書き残す |
| 進め方の管理が細かすぎる | 作業ごとに確認を待ち、全体が進まない | 確認が必須なのは設計の大枠だけにし、進み具合は週1回まとめて共有する |
A社では、経理課長が決裁者、Bさんが日々の設定と入力の担当、という分け方にしました。顧問税理士にも、移行の範囲と切り替えの時期を早めに伝えておくと、決算や申告の段取りと食い違いにくくなります。
業務の棚卸しと初期設定——マスタはデータを入れる前に固める
2つ目の段階のうち、手戻りがいちばん大きくなりやすいのが、勘定科目・補助科目・タグのマスタ設計です。ここでは、初期設定の流れを確かめてから、補助科目をタグに置き換える考え方を見ます。
初期設定の流れと、後から始められないもの
freeeの公式ヘルプ(「1.0 初期設定」、2026年3月12日更新)は、法人の初期設定を、おおよそ次の流れで案内しています。口座の登録、事業所の設定、開始残高の設定、勘定科目の設定、仕訳のインポート(2期目以降で必要な場合のみ)、口座同期の設定です。
はてなベースの導入支援では、この流れの前に業務の棚卸しを置いています。今の旧ソフトで、どの科目を何に使っているか。どの補助科目で何を管理しているか。毎月どの帳票を誰に出しているか。これを一覧にしてから設定に入ると、freeeで何を再現し、何をやめるかを決めやすくなります。
初期設定の中には、後から始められないものもあります。たとえば優良電子帳簿の機能です。電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件に合わせて、仕訳の変更履歴などを残す機能です。「使用する」にした時点から履歴が記録され、それより前にはさかのぼれないため、ヘルプは期初の設定を案内しています(「優良電子帳簿について」、2026年6月26日更新)。届出などの要件もあるため、使うかどうかは顧問税理士と確かめて決めておくと安心です。
補助科目は、タグと口座に読み替える
freeeでは、補助科目の役割をタグと口座が担います。ヘルプは、補助科目のかわりに「取引先」「品目」「部門」「メモタグ」などのタグを使い、勘定科目の内訳や詳しい情報を補う、と説明しています(「2.3「タグ」とは」、2026年9月14日更新)。預金の補助科目にあたるのは、freeeの口座です(「freeeは補助科目に対応していますか?」、2026年4月20日更新)。
補助科目は勘定科目ごとにぶら下がる内訳ですが、タグは取引の行に付ける「列」のようなもので、1つの取引に複数を同時に付けられます。部門ごとの売上を、さらに品目ごとに見る、といった集計ができます。補助科目を1つずつタグに移すというより、「どの軸で数字を見たいか」からタグを決め直す、と考えると設計しやすくなります。

| 旧ソフトの補助科目 | freeeでの置き場所 | ヘルプの要点 |
|---|---|---|
| 売掛金・買掛金の相手先 | 取引先 | 1取引に1個。借方と貸方の両方に付く |
| 商品や費用の細目 | 品目 | 1行に1個 |
| 事業部や支店 | 部門 | 1行に1個。階層の上限はプランで変わる |
| 案件名、担当者、確認の目印 | メモタグ | 1行に複数。試算表では絞り込みのみ |
| 普通預金の銀行名 | 口座 | 補助科目に相当する |
メモタグには注意が要ります。ヘルプの対応表では、試算表とカスタムレポートでのメモタグは「絞り込みのみ」です。内訳として集計したい軸は取引先・品目・部門に置き、メモタグは目印に使う、と分けておくと迷いにくくなります。アドバンス以上のプランなら、部門・品目とは別の集計軸として、セグメントも3つまで使えます。
A社の例で振り返ります。A社の旧ソフトでは、売上高に取引先ごとの補助科目を、旅費交通費に「出張」「近距離」の補助科目を付けていました。摘要には、案件名と担当者名と「請求書受領済み」が混ざって書かれていました。A社は、取引先はそのまま取引先に、出張と近距離は品目に当てました。案件名は、案件ごとの損益を見たいなら部門か、アドバンス以上ならセグメント、目印として絞り込めれば足りるならメモタグ、と目的で分けます。A社は、案件名と「請求書受領済み」の印をメモタグにしました。
勘定科目とタグで、つまずきやすい点
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 摘要にいろいろな情報が混ざっている | 取引先・用途・年度が混在し、タグに振り分けられない | 品目は支出の中身にそろえ、属性はメモタグへ。取引先は表記をそろえる |
| 科目コードの振り方がそろっていない | 似た科目のコードが離れていたり、体系から外れたコードが混じったりする | 直す前に控えを取り、直したあと試算表の金額が変わっていないか確かめる |
| 連携に使う科目を変えてしまう | 科目をまとめたら、外部システムからの連携が止まる | 連携に使う科目とタグを先に洗い出し、変えないものを決める |
勘定科目は、エクスポートしてバックアップを作れます(「勘定科目をエクスポート・インポートする」、2026年3月17日更新)。ただし、このエクスポートには内訳管理(勘定科目と取引先・品目の紐付け)は含まれず、別に出す必要があります。マスタに手を入れる日の最初の作業にしておくと、元に戻す道が残ります。
データ移行と口座連携——過去の分と、これからの分の境目を決める
過去の分のデータは移行で、これからの分は口座の連携で入れます。ここでは、データ移行の範囲、「稼働」の定義、口座とカードの連携、自動登録ルールを順に見ます。要になるのは、過去の分とこれからの分の境目を最初に決めておくことです。
移行の範囲は、ヘルプの4つのパターンから選ぶ
freeeのヘルプは、他社の会計ソフトからの乗り換えを、2つの問いで4つのパターンに分けています(「【法人】他社会計ソフトからのデータ乗り換えの流れまとめ」、2026年4月21日更新)。期首に乗り換えるか期中か、前期との比較をfreeeで行うかどうかです。

| パターン | 主な操作 |
|---|---|
| 1 期首乗換・前期比較なし | 開始残高の設定のみ |
| 2 期首乗換・前期比較あり | 前期の期首の開始残高の設定、前期分の仕訳の移行、前期の年度締め |
| 3 期中乗換・前期比較なし | 開始残高の設定、今期分の仕訳の移行 |
| 4 期中乗換・前期比較あり | 2の操作に加えて、今期分の仕訳の移行 |
開始残高の設定はどのパターンでも必須で、仕訳データの移行は任意の操作とされています。
注意したいのは、仕訳を取り込める期間です。ヘルプは、仕訳インポートでは当会計年度の期首日以前の仕訳は取り込めない、としています(「事業年度開始日以前の仕訳をインポートする」、2026年4月21日更新)。前期の数字も入れたいなら、事業年度の開始日を、取り込みたい最も古い年度に合わせます。開始残高もその時点に直してから仕訳を取り込み、当年度まで順に年度締めをします。何期分を入れるかで、作業の手順そのものが変わります。
仕訳を取り込む前には、同期の有無にかかわらず口座の作成が必要で、未登録の勘定科目やタグは事前の登録が勧められています(「その他の会計ソフトから仕訳データを移行する」、2026年9月17日更新)。freeeの摘要(備考)は1つの仕訳に1つまでなので、借方と貸方で別々の摘要は1つにまとめて取り込みます。
はてなベースの導入支援では、データ移行を2回に分けています。1回目で勘定科目と補助科目のマスタを移して読み替えの表をお客様に確かめていただき、2回目で仕訳を移します。仕訳の移し直しを減らすためです。
「1期分」と「稼働」を言葉にしておく
A社の例で振り返ります。A社は、2024年4月の期首から切り替え、前期との比較もすることにしました。パターン2です。最初の打ち合わせで「過去1期分を移す」と決めたとき、経理課長は、すでに締まった2022年度の仕訳のことだと受け取っていました。Bさんは、進行中の2023年度(2023年4月〜2024年3月)のことだと受け取っていました。準備を始めた秋の時点で、2023年度はまだ半分しか終わっていませんでした。後半の半年分を、いつ、誰が移すのか。2023年度の決算は旧ソフトで締めるのか。A社は移す期間を日付で書き直し、2023年度の決算を旧ソフトで締めてから、その仕訳を移すことにしました。
「4月に稼働する」も、入力を始めることか、開始残高と連携まで済むことか、4月分の月次が締まることか、と複数の意味に取れます。キックオフの段階で稼働の定義を1文で書いておくと、関係者の期待がそろいます。
A社の日付は、期首に引っ張られました。打ち合わせは期首の4か月ほど前から始めました。年度締めの前でも、4月以降の取引は登録できます(「年度締めをする前に、翌年度の取引を登録できますか?」、2026年2月26日更新)。そのうえでA社は、前期の年度締めを終えて開始残高が固まってから本稼働を判断することにしました。期首で乗り換える会社では、このように期間の表と日付が一致しないことがあります。
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 「1期分」の解釈がずれる | 締まった前期のことか、進行中の期のことかが、人によって違う | 移す期間を日付で書く。進行中の期の分を誰がいつ移すかも書く |
| 「稼働」の定義があいまい | 入力開始か、開始残高と連携まで含むかが人によって違う | 稼働の状態を1文で定義する |
| 旧ソフトから資料を出せない | 試算表、元帳、科目や補助科目の一覧、固定資産台帳がそろわない | 資料に優先度を付ける。出し方は旧ソフトのマニュアルや顧問税理士と確かめる |
口座とカードの連携は、境目と二重計上に注意する
これからの分の入口は、銀行やカードの明細です。freeeは、オンラインバンキングやクレジットカードなどと連携(同期)して、明細を自動で取り込めます。ただし、ヘルプによると、同期で取得できる明細は各金融機関などのオンライン上で確認できるWeb明細のみで、取得できる期間は金融機関やシステムによって異なります(「日々の作業を効率化!帳簿付け・記帳の経理業務をラクにする口座連携(同期)の活用方法」、2026年4月16日更新)。同期を始めた日に、必要な期間の明細がすべて入るとは限りません。
同期で入らない明細は、銀行などからダウンロードしたファイルを取り込む「明細アップロード」で補います。気をつけたいのが二重計上です。明細で補うのは、帳簿に入っている最後の日(期首で乗り換えるなら前期末)の翌日から、同期で取れた最も古い日の前日までです。仕訳で移した期間に入った明細は「無視」にします。前期の年度締めまでは、「登録する」の自動登録ルールが前期の日付の明細に効かないかも確かめます(「年度締めをした後に連携(同期)をするとどうなりますか?」、2025年12月16日更新)。
ヘルプは、取引日・金額・取引内容・取引後残高などがすべて一致した明細は、重複として取り込まないとしています。一方で、同期と明細アップロードで摘要の記載が異なる場合などは、二重計上となる可能性があるとも書いています(「銀行やカードの明細を手動で取り込む(明細アップロード)」、2026年5月28日更新)。このしくみは明細どうしを比べるものなので、移行した仕訳との重なりは、期間を区切って防ぎます。
同期に対応していない金融機関も、口座を登録し、明細のファイルを取り込んで使えます(「同期対応していない金融機関を登録し、明細を取り込む」、2026年4月20日更新)。
自動登録ルールは、判断の要らない取引から
取り込んだ明細は、「自動で経理」の画面で取引として登録します。決まった内容の明細には、自動登録ルールを作れます。ルールには、内容を自動で入力するだけの「推測する」と、取引まで自動で登録する「登録する」があります(「明細の自動登録ルールを設定する」、2026年9月8日更新)。
ルールにしてよいのは、明細の文字と金額から、科目とタグを判断できる取引です。毎月の家賃や、決まった口座への資金移動が典型です。明細の文字からどの事業の費用か分からない取引をルールで登録すると、誤りが毎月積み上がります。判断の要る取引は、「推測する」にとどめて人が確かめてから登録すると、誤りに気づきやすくなります。
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 同期で必要な明細が全部入ると思っていた | 明細が抜ける。補った明細が、移行した仕訳や同期の分と重なる | 帳簿に入っている最後の日の翌日から、同期で取れた最も古い日の前日までだけを補う |
| 連携できない金融機関がある | 一部の口座だけ明細が自動で入らない | ファイルの取り込みを月次の手順に入れる |
| 判断の要る取引までルールにする | 誤った取引が毎月自動で登録される | 判断の要る取引は推測にとどめる |
権限と承認フロー——プランで使える機能が変わる
誰にどの権限を渡し、どこで承認を入れるか。freee会計では、使える権限と承認の機能が契約プランで変わります。プランを決める前に確かめておくと、手戻りが減ります。
freee会計には、管理者、一般(経理)、取引登録のみ、閲覧のみ、一般(経理以外)、申請・承認の6つのデフォルトの権限セットがあります(「freee会計のメンバー招待・権限」、2026年10月7日更新)。法人プランでは、経費精算などだけを使う従業員に「一般(経理以外)」を付けると、招待の枠を消費しません。
権限セットの中身を変える「カスタム権限」や、承認の機能は、プランで決まります。2024年7月以降の法人向けプランは、ひとり法人、スターター、スタンダード、アドバンス、エンタープライズの5つです。プラン別機能表から、導入の設計に関係するものを抜き出すと次のとおりです。
| 機能 | 使えるプラン(法人・新プラン) |
|---|---|
| カスタム権限(権限セットの中身を変える) | スタンダード以上 |
| 本締め(全員が締めた期間を編集できない) | スタンダード以上 |
| 仕訳承認、仮締め(管理者とアドバイザー以外が編集できない) | アドバンス以上 |
| 経費精算などの申請と承認 | スターター・スタンダードは経費精算のみで1段階。アドバンス以上は各種申請で最大15段階 |
| 請求書ワークフロー(書類発行の申請・承認) | アドバンス以上 |
| 部門の階層 | スターターまで1階層、スタンダード2階層、アドバンス以上5階層(ひとり法人は部門2つまで) |
| 自己承認の可否、承認・変更履歴 | エンタープライズのみ |
出典は、freeeヘルプ「【法人】freee会計のプランについて(2024年7月以降)」(2026年9月29日更新)です。機能表には注記があり、仕訳承認と本締め・仮締めは、認定アドバイザー(freeeのアドバイザー制度に加入した税理士など)が使う場合、プランに関わらず使えます。ただし、使えるのはアドバイザー権限のメンバーだけです。社内のメンバー同士で仕訳を承認するなら、アドバンス以上が要ります。
仕訳承認フローでは、仕訳を作った人が申請経路の承認者に入っていると、その仕訳は作成時点で「承認済み」になります。管理者(と、管理者をコピーしたカスタム権限)のメンバーは、申請経路に入っていなくても代理で承認できます。作成者による自己承認を止める設定は、エンタープライズだけです(「メンバーの記帳内容を承認制にする(仕訳承認フロー)」、2026年7月27日更新)。つまり、起票する人を申請経路から外しても、その人が管理者なら、経路の外から代理承認できる状態が残ります。自分の仕訳に代理承認を使えるかはヘルプに明記がないため、自社の環境で確かめておくと安心です。誰を承認者にし、誰に管理者権限を渡すかは、承認経路と一緒に決めておくと説明しやすくなります。承認の設定が統制としてどう見られるかは、承認フローや自動仕訳をITACとして評価する記事で詳しく扱っています。
A社の例で振り返ります。A社の経費精算と請求書の受け取りの承認は、当時からバクラクで回っていました。残る論点は仕訳の承認でした。当時は2024年7月の改定前で、法人のプランはミニマム・ベーシック・プロフェッショナル・エンタープライズでした。A社は、Bさんの仕訳を経理課長が承認する形にするため、社内で仕訳承認が使える当時のプロフェッショナル(いまのアドバンスにあたる)を選び、2024年7月以降の更新でアドバンスに移りました。一方で、Bさんには導入のときから管理者の権限を渡していました。そのため、申請経路からBさんを外していても、Bさんは経路の外から代理承認ができる状態でした。この点がのちにどう論点になったかは、承認フローや自動仕訳をITACとして評価する記事で扱っています。
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 社内の決まりと承認経路がずれる | 職務権限表と違う人が承認者になり、途中で経路を直す | 職務権限表と承認経路を同じ表で決める |
| 外部の協力者の入り方が決まっていない | IDを共有しようとする、招待した人が使えないまま残る | 1人1IDを原則にする。顧問税理士が認定アドバイザーなら、アドバイザーの招待を使う |
IDと権限は、導入のあとも人の入れ替わりのたびに見直しが要ります。退職者のIDを止める手順など、権限の管理の考え方はSaaSで経理を回す会社に残るITGCの記事にまとめています。
運用テストから本稼働、定着へ
3つ目から5つ目の段階で、何を試し、何がそろえば本稼働と言えるのかを整理します。
運用テストは、実際の1か月分で試す
運用テストでは、実際の明細を使い、入力から承認、月次の締めまでを一通り試します。売上と債権の管理、支払と債務の管理、給与・現金・その他の収支、と業務ごとに確かめていくと漏れが減ります。自動登録ルールも、この段階で実際の明細を見ながら作ると、判断の要る取引を見分けやすくなります。仕訳承認を使うなら、自動登録ルールで入る仕訳がどの承認の状態になるかも、1件流して確かめておくと安心です。ヘルプの本文と表で書き方が分かれているためです。
テストで入れたデータは、あとで移す仕訳と重ならないようにします。移行する前期の期間でテストをすると、前期分の仕訳を移したときに重なります。テスト用の事業所を別に作るなら、料金は事業所ごとにかかるため、お試しで使える範囲を契約前にfreeeに確かめます(「freeeで複数の事業所を管理する」、2026年9月15日更新)。もう1つは、テストのあとにリセット機能で消す方法です。期間とデータの種類を指定して消せますが、締めた期間は消せず、消したデータは戻せません(「事業所を初期化(リセット)する」、2026年4月13日更新)。
はてなベースの導入支援では、お客様側の作業時間の目安を、既存業務の洗い出しに1〜4時間、初期設定の期間は1日30分〜1時間、試験運用の期間は1日1〜2時間とお伝えしています。テストはふだんの締めと並行になることが多いため、その月だけ他の仕事を減らす段取りもしておくと進めやすくなります。
テストでは旧ソフトとfreeeの数字を突き合わせ、合わない理由を説明できるところまで確かめてから、本稼働に進みます。
本稼働の目安は「1か月分が締まり、承認や確認が回る」
本稼働をどう判断するかは、会社によって違ってよいものです。はてなベースの導入支援では、「freeeで1か月分の月次が締まり、自社で決めた承認や確認の手順が回っている」状態を目安にしています。freeeの仕訳承認を使うならその承認、承認をバクラクなどfreeeの外で回す会社や、月次で仕訳帳を見直す会社なら、その手順です。締めまで通った月を基準にするのは、締めまで通してはじめて、マスタ・連携・権限の設計の抜けが見えるからです。

確かめる項目の例は、次のとおりです。
- その月の明細が「自動で経理」に未登録のまま残っていない。残っているものは理由を説明できる
- 預金とカードの残高が、銀行やカード会社の残高と合っている
- 試算表を、旧ソフトの数字や前の月と比べて説明できる
- 承認や確認が要る仕訳や申請が、決めた手順を経て確定している
- その月を締める手順(スタンダード以上なら本締め)を、担当者が自分で回せる
カードの明細は請求内容が確定したタイミングで取り込まれるため(「口座連携(同期)の活用方法」)、締めの日程はカード会社の確定日に合わせておきます。
A社は、前期の年度締めで開始残高が固まったあと、4月分の月次が締まり、Bさんの仕訳に経理課長の承認が付いていることを確かめて、本稼働としました。
本稼働のあと、定着までに残ること
本稼働から本格運用までは、社内への展開と運用の見直しの期間で、自動登録ルールも月ごとに見直します。
| つまずきやすい点 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 未登録の明細がたまる | 明細が残り、試算表が出せなくなる | 入力する人を決める。迷う取引はいったん登録してメモタグ「要確認」を付け、月内に見直す |
| 操作への不安が、本稼働の直前に出る | 画面に慣れないまま切り替え日を迎える | 担当者が自分で画面を触る時間を予定に入れる |
| 設定の前に入力を始めてしまう | マスタや開始残高が決まる前の入力が、直しになる | 設定が終わるまで本番の入力を待つ |
読み違えやすいポイント
freeeの仕様には、ほかの会計ソフトの感覚で読むと、意味が変わる箇所があります。3つ挙げ、A社に当てはめた例を添えます。
| 読み違えやすい読み方 | 原文では | 根拠 |
|---|---|---|
| 「補助科目は、旧ソフトと同じ形で残る」と読まれがちです | 仕訳を取り込むときは、補助科目は自動でfreeeに合った形式に変換されます。補助科目のマスタを取り込むときは、口座・取引先・品目・部門(アドバンス以上はセグメントも)のどれに当てるかを指定し、当て先を空けたものは取り込まれません | ヘルプ「freeeは補助科目に対応していますか?」、「その他の会計ソフトから勘定科目・補助科目を移行する」 |
| 「口座を同期すれば、必要な期間の明細がまとめて入る」と読まれがちです | 同期で取得できるのは、オンライン上で確認できるWeb明細のみで、期間は金融機関などで異なります。足りない分はアップロードで補い、重複に注意します | ヘルプ「口座連携(同期)の活用方法」、「明細アップロード」 |
| 「仕訳インポートなら、前期の仕訳もそのまま取り込める」と読まれがちです | 当会計年度の期首日以前の仕訳は取り込めません。事業年度の開始日を取り込みたい年度に合わせ、開始残高を直してから取り込み、順に年度締めをします | ヘルプ「事業年度開始日以前の仕訳をインポートする」 |
A社に当てはめると、次のようになります。
- 1つ目:A社は、旅費交通費の補助科目「出張」「近距離」を、品目に当てると決めてから取り込みました。当て先を空けたままにすると、その内訳は移りません
- 2つ目:A社は、同期で入った期首(2024年4月1日)より前の日付の明細を、移した前期の仕訳と重なるため「無視」にしました。同期で取れた最も古い日が期首より後だった口座だけ、その間をアップロードで補いました
- 3つ目:A社は、前期(2023年度)の仕訳を入れるため、事業年度の開始日を2023年4月に合わせて取り込み、前期の年度締めをしてから2024年度に進みました
仕様は、どのプランで、いつから使えるかを、ヘルプの原文と更新日で確かめておくと手戻りが減ります。
明日からやること
導入を決めた週に始められることを、手間の小さい順に並べます。どれも、設定の画面を開く前にできることです。
- 「稼働」の定義を、「期首の月の月次がfreeeで締まり、仕訳の承認(または月次の見直し)が回っている状態」のように、月と状態で1文に書きます
- 移すデータの範囲を、ヘルプの4つのパターンのどれにあたるかで決めます。決めるのは、期首か期中か、前期との比較をするかの2点です
- 旧ソフトから、勘定科目と補助科目の一覧、試算表、総勘定元帳を出せるかを確かめます。出せないものがあれば、出し方を調べる担当を決めます
- 補助科目と摘要の使い方を一覧にし、freeeのどのタグか口座に当てるかの案を作ります。集計したい軸は、メモタグ以外に置きます
- 銀行とカードの一覧を作り、同期できるか、同期で取れる期間はいつからかを書き添えます。仕訳で移す最後の日も、同じ表に書いておきます
- 承認したい場面と、その承認に要る機能を書き出し、プランを決める材料にします
導入を進めた先で上場準備や内部統制が視野に入るなら、IDと権限の一覧、設定を変えた記録を早めに残し始めておくと、後から説明しやすくなります。経理の仕事をSaaSとAIで組み替える進め方は経理業務をFDE方式で本番化した記事で、担当者が替わっても回る手順の書き方は引き継ぎの記事で扱っています。
はてなベースは、freee会計を中心に、導入の設計、初期設定、マスタ設計、データ移行、運用の定着までを支援しています。打ち合わせの合間のご相談には、チャットでも対応しています。自社の場合に、どの段階で何を決めればよいかを整理したいときは、ご相談ください。
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使っているSaaSの洗い出し、IDと権限・設定変更の記録の始め方、SOC1レポートの読み込み、監査法人との協議に出す案づくりまで、公認会計士とエンジニアが一緒に整理します。