はてなベースは、営業から会計・入金の管理までを一つにまとめた自社の ERP を、iOS と Android のスマートフォンから使えるようにしました。アプリは Go 言語で作った ERP の本体を呼び出すだけなので、守りと業務のルールは本体の1か所にまとまっています。同じ作りの上に、現場の写真の保存や社内のサーバーで動く AI など、便利な仕組みを後から足していけます。
この記事の要約
はてなベースは、AI を前提にした開発のやり方で、自社の ERP(会社の基幹業務を一つにまとめた仕組み)を作りました。営業、案件の管理、会計、入金の管理まで、ファイルの保管(Google ドライブ)、メール(Gmail)、会計ソフト以外の業務は、基本的にすべてこの ERP の中で完結しています。
このたび、この ERP をスマートフォンから使えるアプリを作りました。iOS と Android の両方に対応しています。外回りの営業の途中や電車の中で、パソコンを開かずに案件や課題の状況を確かめたい社員のためのアプリです。
この記事では、アプリでできることと、持ち歩く端末で業務の情報を扱うための守りを紹介します。そのうえで、業務管理の仕組みとつながるスマートフォンアプリが求められる場面を、公開されている調査や事例から整理します。
なぜスマートフォンのアプリを作ったのか
ERP はパソコンで使うことを前提に作ってきました。ただ、社員が ERP を開きたくなるのは、机の前にいるときだけではありません。
商談に向かう電車の中で、前回の打ち合わせで何を約束したかを確かめたい。客先を出た直後に、聞いた内容を忘れないうちに記録したい。上司からの承認の依頼が届いたら、移動中でもすぐに返したい。こうした数分の確認や入力のために、ノートパソコンを開いてつなぐのは手間です。結局は会社に戻ってからまとめて入力することになり、その間に記憶が薄れたり、承認が半日止まったりします。
スマートフォンから使えれば、こうした細切れの時間で用事が済みます。そこで、ERP の情報をスマートフォンで見て、書き込めるアプリを作りました。
アプリでできること
アプリを開くと、パソコンと同じ ERP の記録を見られます。下の画面は、社内の会議で扱う課題の記録をスマートフォンで開いたところです。課題の名前、分野、担当者、状態、登録日が1画面に並び、その下にコメントを書き込めます。右上の「編集」から、その場で内容を直せます。

画面の下には、ホーム、アプリ、通知、検索、その他のメニューがあります。主に使う機能は次のとおりです。
- 案件、顧客、タスクの記録を見て、書き込む
- 出勤、休憩、退勤の打刻をし、自分の勤怠を確かめる
- 申請を出し、届いた承認の依頼に応える
- 書類や領収書をカメラで撮り、そのまま該当する記録に添付する
- 記録に添付されたファイルを開き、端末に保存したり他のアプリに渡したりする
- 記録にある電話番号を押して電話をかけ、メールアドレスを押してメールを書き始める
カメラで撮った写真を記録に直接添付できるのは、アプリにした大きな理由の一つです。領収書を撮っておいて、あとでパソコンに取り込んで添付し直す、という手間がなくなります。
ここからは、iPhone と iPad の画面をいくつか紹介します。写っている人の名前、会社名、金額は、説明のために用意した架空のものです。
アプリを開くと、最初にホームが出ます。「今日の仕事」に、出勤の状態と、自分が対応するタスクと社内 ToDo の件数が並びます。朝の電車の中で、今日まず何から片付けるかを確かめられます。

下のメニューの「アプリ」を押すと、案件管理、顧客管理、交通費申請、工数管理など、ERP の業務アプリが一覧で出ます。アプリごとに色と絵柄の違うアイコンを付け、小さな画面でも目当てのアプリを探しやすくしました。右端の数字は、そのアプリで自分の対応を待っている件数です。

申請の一覧では、申請した日付と申請者の名前を見出しにし、その下に「上長確認中」「承認」などの状態を付けています。金額や通勤手段も一覧のまま読めるので、1件ずつ開かなくても、誰の申請がどこで止まっているかが分かります。

承認する人が申請を開くと、見出しに一覧と同じ日付と申請者が出て、状態の横に「あなたの番」と表示されます。その下に「承認する」と「差し戻す」が並び、外出先でも内容を確かめてその場で承認できます。差し戻すときは、理由のコメントを付けて申請者に返します。

記録を開くと、画面の下のメニューが、そのアプリと記録に合わせて入れ替わります。案件の記録では「詳細」「タイムライン」「進捗」「稼働」が並び、顧客名、担当者、契約金額、期間を見たあと、同じ画面から案件の予定や作業の記録に移れます。交通費申請では、同じ場所に「コメント」と「変更履歴」が出ます。

iPad では、左に ERP のメニュー、右に開いた画面が並びます。打ち合わせの席で一覧を広く見ながら、左のメニューから別のアプリへすぐに移れます。

アプリは ERP の本体を呼び出すだけ
ERP の中心には、データを保管し、業務のルールを処理する本体があります。本体は、決まった手順で外から呼び出せる窓口(API)を持っています。パソコンの画面もスマートフォンのアプリも、この窓口を通して本体を呼び出します。スマートフォンのアプリがしているのは、本体を呼び出して結果を表示することと、入力された内容を本体に渡すことだけです。

この作りには3つの利点があります。一つ目は、スマートフォンのために業務の仕組みを作り直さずに済んだことです。案件や勤怠のデータ、承認の順番、計算のルールはすでに本体にあります。アプリは画面を用意するだけで、パソコンと同じデータとルールで業務を扱えます。
二つ目は、守りが1か所で済むことです。誰がどの記録を見てよいか、どの操作をしてよいかは、呼び出しのたびに本体が確かめます。パソコンから来てもスマートフォンから来ても同じ確認を通るので、アプリの側だけ確認が甘くなることがありません。業務のデータの保管と判断の仕組みは本体の側にあり、アプリは画面を開くたびに必要な分だけを本体から受け取ります。アプリの中に残った閲覧の記録や保存したファイルは、ログアウトのときに消せます。
三つ目は、本体をメモリ安全な言語で作っていることです。本体は Go 言語で開発しています。プログラムがメモリ(コンピューターが作業中のデータを置く場所)の扱いを誤ると、外から不正な命令を送り込まれる弱点になることがあります。米国のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ安全保障庁(CISA)や国家安全保障局(NSA)などが2023年12月に出した資料は、2006〜2018年に公表された Microsoft の製品の脆弱性の約70%と、Chrome の元になっている Chromium の脆弱性の約70%が、メモリの扱いの誤りによるものだと紹介しています。同じ資料は、こうした誤りを言語の仕組みで防ぐ「メモリ安全な言語」の一つに Go を挙げています。
持ち歩く端末で業務の情報を扱うための守り
スマートフォンは、パソコンより置き忘れや盗難に遭いやすい端末です。業務の情報を持ち歩く以上、端末を他人に触られても中身を見られない仕組みが欠かせません。アプリには次の守りを入れています。
- 設定でオンにすると、アプリを開くときと裏から戻ったときに、Face ID などの生体認証で本人を確かめる
- 複数のアプリを切り替える画面では、ERP の中身ではなく会社のロゴを表示する
- ログアウトするときに、アプリの中に残ったログインの情報や閲覧の記録、保存したファイルをまとめて消せる
- アカウントは会社が発行し、退職した社員のアカウントは管理者が止める
電車の中で画面を開く場面を考えると、アプリを切り替えるたびに案件の中身が一瞬映るだけでも困ります。どれも地味な機能ですが、業務のアプリを外で使ってもらうための前提として作り込みました。
スマートフォンアプリが求められる現場の場面
業務管理の仕組みとつながるスマートフォンアプリは、社内の ERP に限らず、建設や営業などの現場でも求められています。LINE WORKS が2025年5月に建設業・不動産業の施工管理者や作業員など1,071人に行った調査では、資料の管理で困っていることとして「外出先から資料を確認・編集できないことがある」を選んだ人が39%いました。社内外の資料の共有や確認に使う時間は、平均で1日60分でした。
調査や事例から見えてくる、アプリが役に立つ場面を4つ挙げます。
一つ目は、現場で撮った写真を正しい保存先に直接入れたい場面です。建設や設備の現場では、図面や施工の状況を撮影して記録に残します。撮った写真をいったん個人のスマートフォンに置き、事務所に戻ってからパソコンで案件ごとのフォルダに振り分ける作業は、撮る枚数が多いほど重くなります。撮影したその場で案件を選び、決められた保存先に入れられれば、振り分けの作業と入れ間違いが減ります。
二つ目は、アプリにしたかったができず、スクリーンショットで情報を残してしのいできた業務です。業務の仕組みがスマートフォンに対応していないと、社員は外出先で見た画面や受け取った情報をスクリーンショットで残し、あとでパソコンを開いて入力し直します。同じ情報を2回扱うので手間がかかり、写し間違いも起きます。スクリーンショットがどの案件のものだったか分からなくなることもあります。スマートフォンから直接その記録に書き込めれば、この二度手間がなくなります。
三つ目は、外回りの営業が商談の前後に記録を扱う場面です。営業日報のアプリの2026年5月の利用者の声には、夕方に会社へ戻ってから表計算ソフトに訪問の記録を打ち込んでいた作業が、電車やカフェでのすき間時間で終わるようになったというものがあります。商談の直前に顧客の情報や前回の商談の内容を見返せることも、外出先で使えるアプリの利点です。
四つ目は、承認や確認を待つ間に業務が止まる場面です。承認する人が外出していると、申請はその人がパソコンの前に戻るまで止まります。スマートフォンで承認の依頼に応えられれば、移動の合間に処理が進みます。
お客様の業務に合わせたアプリも作れます
このアプリは社内で使うためのものですが、作るなかで積み上げた方法は、お客様の業務に合わせたスマートフォンアプリの開発にも使えます。つなぐ先の仕組みによって進め方は変わりますが、今お使いの仕組みに窓口があれば、そこを呼び出すアプリを作れます。
たとえば、現場で撮った図面の写真を、案件ごとに決めたクラウドの保存先へその場で入れるアプリ。いま使っている業務管理の仕組みとつながり、外出先から記録を見て書き込めるアプリ。これまでスクリーンショットとパソコンの二度手間でしのいできた業務を、スマートフォンで完結させるアプリ。iOS と Android の両方に対応し、置き忘れたときの守りまで含めて作ります。
本体が1つで、窓口から呼び出せる作りになっていると、便利な仕組みを後から足していけます。新しい画面を作るときも、AI に記録を整理させるときも、同じ本体を呼び出すだけでつながるからです。

既存の業務の仕組みをすべて作り直す必要はありません。今の仕組みのどこで手が止まっているかを伺い、スマートフォンで済ませたい作業から形にしていきます。
機密の情報は、社外に出さない構成も選べます
業務の情報をスマートフォンで扱えるようにすると、次に気になるのは情報がどこに置かれ、どこを通るかです。顧客の情報や図面、人事の情報のように、社外のクラウドに置きたくない情報を扱う会社もあります。社外の生成AIを禁止していても、仕事を早く終わらせたい社員が外部のサービスに資料を入れてしまうことも起きています。
はてなベースは、必要に応じて、お客様の社内にサーバーを置く構成(オンプレミス)での導入にも対応します。AI についても、社内に置いたサーバーで動かすローカル LLM(社外のサービスに送らず、自社の中で動く生成AI)を用意できます。たとえば、現場から上がった写真や記録を AI で整理したり要約したりする処理を、社外の AI のサービスに送らず、社内のサーバーの中で完結させられます。
社内のサーバーで動く生成AIは「ハテナレッジAI プラス」として提供しています。スマートフォンのアプリ、業務の仕組み、AI を、扱う情報に合わせた置き場所で組み合わせられることが、はてなベースの強みです。
まとめ
はてなベースは、営業から会計・入金の管理までを一つにまとめた自社の ERP を、iOS と Android のスマートフォンから使えるようにしました。記録を見て書き込む、打刻する、承認する、カメラで撮って添付するといった用事が、外出先や移動中に済みます。アプリは Go 言語で作った ERP の本体を呼び出すだけなので、守りと業務のルールは本体の1か所にまとまっています。生体認証のロックや、ログアウト時の消去などの守りも備えています。
現場で写真を撮って保存先に振り分ける作業や、スクリーンショットを撮ってあとでパソコンで入力し直す作業は、多くの会社に残っています。スマートフォンで済ませたい作業があれば、その業務に合わせたアプリづくりから、機密の情報を社外に出さない構成まで、ご相談ください。
スマートフォンで済ませたい業務を、アプリにしませんか
たとえば、現場で撮った写真を案件ごとの保存先に直接入れたい、スクリーンショットを撮ってあとでパソコンで入力し直している、という場面でお手伝いしています。iOS と Android のアプリの開発から、今お使いの業務の仕組みとのつなぎ込み、機密の情報を社外に出さない社内のサーバーと AI の導入まで、状況に合わせてご提案します。