奉行シリーズでバックオフィスをつなぐと、販売・給与・固定資産の仕訳は勘定奉行iクラウドに自動で集まります。POS や外部のサービスから来る分は、CSV の取り込み・自動連携・API のどれで受けるかを選びます。月次は打刻から給与計算までを一本の流れにし、給与の計算結果を会計への仕訳と銀行への振込データに分けます。従業員とのやりとりでは、年末調整は税務署長の承認なしに Web 化でき、給与明細の電子交付には従業員の承諾が要ります。導入の順番は、編集部の見立てでは、本社で打刻から給与までを通し、新旧で同じ月を処理して突き合わせてから店舗へ広げるのが確実です。
この記事の要約

架空のC社で考えます。C社は複数の店舗を持つ小売チェーンで、経理と総務は本社にまとまっています。給与システムの入れ替えをきっかけに、販売・勤怠・固定資産も含めて、会計で使っている勘定奉行に合わせて奉行シリーズでそろえる検討を始めました。
製品の仕訳は勘定奉行に自動で集まり、外から来る分は入口を選ぶ
OBC の製品ページは「業務単位でサービスごとに機能を特化しています」と書き、必要な業務から段階的に入れられるとしています(2026年10月9日時点の公式サイト。以下、製品の名前と機能は同じ時点)。
| 業務 | 製品(公式名) | 勘定奉行や外へ渡すもの |
|---|---|---|
| 会計 | 勘定奉行iクラウド | 試算表、決算 |
| 販売・請求 | 商蔵奉行iクラウド | 売上・入金の仕訳 |
| 固定資産 | 固定資産奉行iクラウド | 取得・償却の仕訳 |
| 人事 | 総務人事奉行iクラウド | 社員情報を給与・勤怠へ |
| 勤怠 | 奉行Edge 勤怠管理クラウド | 勤怠の集計を給与へ |
| 給与 | 給与奉行iクラウド | 仕訳を会計へ、振込データを銀行へ |
| 法定調書 | 法定調書奉行iクラウド | 法定調書と給与支払報告書の電子申告 |
| 従業員とのやりとり | 奉行Edge 年末調整申告書クラウドほか | 申告書のデータを給与へ |
製品名は、公式サイトのページタイトルでは「勘定奉行クラウド」、製品ページの本文では「勘定奉行iクラウド」と書かれていて、この記事は本文の表記に合わせています。販売の製品は、販売だけの商奉行iクラウドと、仕入・在庫も扱うセットの商蔵奉行iクラウドがあり、店舗の在庫を持つ小売を想定して商蔵奉行iクラウドで説明します。
中堅以上やグループ会社向けには、別のシリーズ「奉行V ERPクラウド」があります。公式の FAQ は、iクラウドを「小規模企業・中小企業向け」、V ERP を「中堅企業・成長企業・上場企業・グループ企業」向けと説明しています。勘定奉行iクラウドの料金表は、上位のグレード(A・B・S)の仕訳伝票明細件数を30万明細まで(拡張パックで追加可)としているため、仕訳の件数やグループ会社の有無を目安に、どちらに当たるかを OBC と相談します。
給与・販売・固定資産の3製品は、勘定奉行iクラウドと一緒に使うことを条件に、仕訳を渡すと書いています。
- 給与奉行iクラウド「給与計算後は計算結果を連携し、仕訳伝票を作成することができます」
- 商蔵奉行iクラウド「取引データを勘定奉行iクラウドへ連携し仕訳伝票を自動起票」
- 固定資産奉行iクラウド「減価償却費の仕訳はもちろん、資産の取得・除却などのライフサイクルの発生時から(中略)仕訳入力作業が一切不要になります」
奉行シリーズの外から来る仕訳には、入口が3つあります。1つ目は、CSV やタブ区切りのファイルを取り込む「汎用データ受入」です。2つ目は、決まったフォルダに置いた CSV を予定どおり自動で取り込む「奉行クラウド自動連携エージェント」で、有償のオプションです。3つ目は API(システムどうしを直接つなぐ仕組み)での連携です。たとえば POS レジでは、スマレジの売上データを勘定奉行iクラウドへ直接送り、仕訳を自動で起こす連携があります(スマレジ側はプレミアムプラン以上。提供はスマレジ社)。店舗の売上をどの入口で受けるかで、毎日の作業の量が変わります。
店舗ごとの損益は、勘定奉行の部門を店舗に当てて見ます。集計・分析のページは、部門別に試算表を集計できると説明しています。本社の費用を店舗に割り振る配賦(共通費を基準に沿って配ること)は、料金表では上位の Sシステムの機能として載っているため、使いたい集計がどのグレードに入っているかを料金表で確かめます。
人事と固定資産も、同じ考え方でつながります。総務人事奉行iクラウドに登録した社員情報と異動の履歴は、公式の説明では「共通のデータベース」として給与奉行iクラウドにも反映されます。給与の仕訳で部門をどう当てるかは、給与側の仕訳の設定で決めます。固定資産奉行iクラウドは、償却資産申告書(店舗の内装や什器にかかる固定資産税の申告)を eLTAX(地方税の電子申告)で市町村へ送れます。法人税申告書の別表十六(減価償却の明細)のデータは、申告奉行iクラウドへ連携できます。
銀行から入ってくる入出金の明細は、勘定奉行iクラウドの「入出金明細取込」や、商蔵奉行iクラウドのインターネットバンキング連携で受けます。銀行へ出ていく給与と住民税のデータは、月次の節で扱います。
店舗を持つ会社で、製品の連携でつながらずに手作業として残りやすいのは、店舗の売上と経費の取り込み、入金消込のチェック、異動の登録を給与の締めに間に合わせることの3つです。どれも、誰がいつ行うかを決めておかないと、月次の締めの直前にまとめて片づけることになります。
請求と入金は商蔵奉行で管理し、明細ごとの消込は債権奉行を足す
販売の製品に得意先(売上を立てる相手)ごとの締めと回収の条件を登録すると、同じデータから請求書と入金の記録が作られます。公式の製品ページによると、商蔵奉行iクラウドの請求処理は「任意の請求期間の売上・入金データを自動集計し、請求書を自動作成」します。締めの期間が重なったり、請求していない期間があったりすると、警告を出します。締めは月6回まで設定でき、請求書は専用のフォームのほか独自のフォームも使えます。
入金は、インターネットバンキングと連携して入金の事実を取り込み、「入金消込のチェックをするだけで、入金伝票を自動作成」します。入金消込(入ってきたお金がどの請求の回収かを突き合わせること)は、この形では人がチェックを付けます。取引明細ごとの消込や、振込手数料の差額の自動計上は、同じページに「債権奉行 i クラウドとの連携が必要」と書かれています。取引の件数が多い会社は、消込の手間を見て、債権奉行iクラウドを足すかを決めます。回収の状況は、帳票の「回収予定表」「得意先元帳」「債権残高一覧表」で確かめられます。
請求書の送付は、奉行Edge 発行請求書DXクラウドで受けられます。公式ページは「商蔵奉行クラウド上から、請求書や納品書、注文書など多様な帳票を瞬時にペーパーレス発行できます」と書いています。発行した請求書から売上・債権の仕訳を作り、勘定奉行iクラウドに連携できるとも書かれていて、送付まで奉行シリーズの中で完結させる形になります。
請求書を PDF でメールして送れば、電子帳簿保存法の電子取引にあたります。国税庁の一問一答は、メールに添付した請求書のやりとりも電子取引で、データの保存が必要としています(電子帳簿保存法 第7条)。法律の定義は、受け取る書類だけでなく交付する書類も含みます(第2条第5号)。発行した請求書の控えの保存先も、構成図に書いておきます。
月次は打刻から給与までを一本にし、結果を仕訳と振込に分ける
月次の締めでは、打刻から勤怠の集計、給与計算までを一本の流れにします。

公式の説明では、奉行Edge 勤怠管理クラウドで集計した勤怠データは、給与奉行iクラウドへ「自動連携」します。
流れの入口になる打刻は、勤怠の数字の確からしさを決めます。厚生労働省のガイドラインは、始業と終業の時刻を「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認」する方法を、原則の1つに挙げています。勤怠管理クラウドでは、PaSoRi などのカードリーダーに IC カードをかざして打刻できます。OBC のタイムレコーダーのページは、交通系 IC カードなど、手持ちの FeliCa(IC カードの方式の1つ)のカードを使えると説明しています。カードリーダーをつなぐパソコンには Windows が必要です。
店舗のシフトは、別のサービス「シフト管理 for 奉行Edge 勤怠管理クラウド」(NTTデータセキスイシステムズの提供)を組み合わせて管理します。店舗ごとに集計の様式が違うと、店舗展開でいちばん手間がかかるのはこの部分です。打刻を IC カードにそろえ、集計を勤怠管理クラウドに寄せれば、様式の違いは集計のルールの違いとして設定に置き換わります。
給与の計算が終わると、データは2方向に出ていきます。1つは勘定奉行iクラウドへの給与の仕訳で、科目と部門の当て方を先に決めておけば、店舗ごとの人件費として会計に入ります。もう1つは銀行への振込データで、給与奉行iクラウドは「銀行振り込み用のFBデータ」(銀行に振込を頼むためのデータ)と、住民税の納付に必要な FB データを作ります。口座への振込そのものは、労働者の同意を得て行う方法として労働基準法施行規則に定められています(第7条の2)。入社時に振込先と同意を受け取る流れは、システムを替えても残します。
年調のWeb化は税務署の承認なしで、給与明細の電子交付は承諾が要る
年末調整の申告書は、奉行Edge 年末調整申告書クラウドで、提出の依頼をメールで一括して送ります。従業員は、依頼のメールに書かれた利用者 ID とパスワードでログインします。メールアドレスが分からない従業員については、OBC の資料が、QR コードから専用のサイトに入ってもらいアドレスを集める方法を紹介しています。Web で出せない人の分は、紙で受け取って代わりに入力できます。集めたデータは、給与奉行iクラウドへ自動で連携します。
税務の手続きも軽くなっています。国税庁の FAQ によると、データで申告書を受け取るときの税務署長の承認は、令和3年4月1日以降は要りません。ただし、受け取るための措置と、提出した人を明らかにする措置は求められます。保険料控除などの証明書も、令和2年10月以降はデータで出せます。
源泉徴収票は、年末調整の計算のあと、給与奉行iクラウドが自動で作ります。税務署と市町村へ出す法定調書と給与支払報告書は、給与奉行iクラウドと直接連携する法定調書奉行iクラウドで作り、そのまま電子申告します。国税庁のリーフレット(令和8年8月)によると、e-Tax 等での提出が義務になる基準は、前々年の枚数100枚以上から、令和9年1月以後は30枚以上に下がります。あわせて、給与支払報告書を市区町村に出せば、税務署への源泉徴収票の提出とみなす特例も始まります。
給与明細を奉行Edge 給与明細電子化クラウドで電子で渡すには、あらかじめ方法を示して従業員の承諾を得る必要があります(所得税法 第231条第2項、施行令 第356条)。承諾は、期限までに断らなければ承諾したものとみなすと知らせて集める方法も認められています(所得税法施行規則 第95条の2第2項、第100条第4項)。承諾したあとでも、従業員が求めれば紙で渡します(所得税法 第231条第2項ただし書)。パート・アルバイトの多い店舗では、紙を求める人の分の運用も残しておきます。OBC も製品の FAQ で同意書のひな形を用意しています。
マイナンバーは、給与奉行iクラウドにも従業員と扶養親族の分を保管でき、源泉徴収票などに印字されます。奉行Edge マイナンバークラウドと連携すると、公式の説明では「自社にマイナンバーを持たない運用」になり、収集から廃棄までの取扱いの履歴が自動で残ります。どちらに置くかは、取り扱う担当者の範囲と、記録の残し方で決めます。マイナンバークラウドの CSV 出力は、OBC の説明では、使っている給与システムへ渡すための機能です。個人情報保護委員会のガイドラインは、アクセス制御と、持ち運ぶときの安全な方策を求めています。
- 「年末調整の Web 化と同じく、給与明細の Web 化にも同意は要らない」と読まれがちです。国税庁は、年末調整の申告書のデータ受け取りについて「法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません」と書いています
- 「マイナンバーは CSV や表計算に出してはいけない」と読まれがちです。番号法 第29条が禁じているのは、事務に必要な範囲を超えて特定個人情報ファイル(マイナンバーを含むデータの集まり)を作ることです。出すときは、源泉徴収票の事務に要るか、誰が出せるか、いつ消すかを先に決めます
個人情報を含むデータの保存場所と権限の決め方は、データの扱いを決める記事でも扱っています。
導入は本社で給与まで通してから店舗へ。年の途中なら累計を移す
本社は人数が少なく、経理と総務がそばにいるため、合わない数字の原因を追えます。

打刻から給与までを本社で一度通しておけば、店舗で確かめる点は、打刻の機器とパート・アルバイトの勤務の形の違いに絞れます。
| 段階 | やること | 確かめること |
|---|---|---|
| 0 準備 | マスタの整理、テスト環境での移行、旧システムのバックアップ | 移したデータの件数と金額が合うか |
| 1 本社で開始 | 打刻の電子化、勤怠から給与への連携 | 打刻から給与までが通るか |
| 2 並行運用 | 数か月分の給与を新旧で計算 | 差の理由を説明できるか |
| 3 店舗へ展開 | 打刻と集計のルールを1つにして広げる | 店舗の集計が回るか |
並行運用(新旧のシステムで同じ月を処理し、結果を突き合わせること)では、突き合わせる項目を勤怠の集計、総支給額、控除、振込額、給与の仕訳の5つにしておけば、差がどの段階で生まれたかを追えます。差が出たら、締め方の違いによるものか、設定の誤りによるものかを分けて記録し、店舗へ広げる前に設定の誤りをなくします。並行稼働から切り替えを判断するまでの型は、Excel 業務の移行の記事でも扱っています。
切り替えの時期は、年末調整との関係で決めます。年末調整は、1年間(1〜12月)に源泉徴収した税額と、1年間に納めるべき税額をそろえる手続きです(国税庁 タックスアンサー No.2662)。年の途中で給与のシステムを替えるなら、その年の支給額と控除の累計を新しいシステムへ移す必要があり、移行の範囲が広がります。累計を移す段取りが固まるまでは、本番の給与を旧システムで続けるのが確実です。切り替えの月は、顧問の税理士・社会保険労務士と決めます。
給与の締め日を見直す場合は、締切りと支払の時期が就業規則の記載事項なので(労働基準法 第89条第2号)、常時10人以上の事業場では店舗ごとに届出と過半数代表などの意見の聴取が要ります(第89条、第90条)。締め日を替える月も、毎月1回以上の支払(第24条第2項)を欠かさない段取りにします。
テスト環境は、会計については、OBC の移行の手順書(2019年作成)が、勘定奉行iクラウドの30日間の無料お試しで実際のデータ移行の操作ができるとしています。給与奉行iクラウドと勤怠管理クラウドにも30日間の無料お試しがあり、終了後にデータは削除されます。数か月の並行運用には足りないため、本契約のあとの検証用の環境は導入前に確かめます。旧システムのバックアップは、賃金台帳などを5年間(当分の間は3年間)保存する労働基準法の定め(第109条、第143条第1項)からも欠かせません。
有給休暇の自動付与は、勤怠管理クラウドの公式ページに、入社日を基準とした付与や比例付与などの例が並んでいます。パート・アルバイトの比例付与は、週の所定労働日数などで日数が変わります(労働基準法 第39条第3項、施行規則 第24条の3)。自社の勤務の形を持ち込み、どの条件まで設定できるかを導入前にデモで確かめます。
費用は、OBC の料金シミュレーションで目安を出せます。製品を選び、グレード(基本システムの構成)と利用者数を選びます。奉行Edge の多くは従業員数を選びます。拡張オプションも選べ、初期費用と1年分の利用料(税抜)の合計が出て、結果を PDF で保存できます。21ユーザー以上と、従業員1000人以上は問い合わせです。出るのは OBC の利用料だけで、導入支援の費用や打刻の機器は別に見積もります。
データを移す範囲と「稼働」の定義の決め方は、製品は違いますがfreee会計の導入の進め方の記事の考え方がそのまま使えます。
はてなベースは、勘定奉行iクラウドを中心とした奉行シリーズの導入支援と、ライセンスの提供を行っています。
明日からやること
- 自社の業務を販売・勤怠・給与・固定資産・会計・銀行・申告の箱に分けて矢印でつなぎ、手で転記している矢印に印を付ける
- 印の付いた矢印ごとに、製品の連携・API 連携・CSV の取り込みのどれで受けるかを書き添える
- 本社で先に入れる範囲と、並行運用の期間を決める
- 従業員のメールアドレスと、給与明細の電子交付の承諾を集める時期を決める
- 料金シミュレーションで、使う製品と人数の費用の目安を出す
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使っているSaaSの洗い出し、IDと権限・設定変更の記録の始め方、SOC1レポートの読み込み、監査法人との協議に出す案づくりまで、公認会計士とエンジニアが一緒に整理します。