Anthropic「Claude Platform on AWS」正式リリース:日本企業が知っておくべきBedrockとの違いと使い分け

2026年5月11日、AnthropicとAWSは 「Claude Platform on AWS」 の一般提供(GA)を発表しました(AWS Machine Learning B…

2026年5月11日、AnthropicとAWSは 「Claude Platform on AWS」 の一般提供(GA)を発表しました(AWS Machine Learning Blog / Anthropic公式 / AWS What's New)。Anthropicが直接運営する Claudeのフル機能プラットフォーム が、AWSアカウントから別契約・別アカウント・別請求なしで使えるようになったというリリースです。AWSは「最初にこれを提供するクラウドプロバイダー」と発表しています。

本記事は、公式発表と一次情報のみを参照した発表まとめ記事です。実機での動作検証はしていません。日本企業の経営者、CTO、情報システム部門の方が「うちもAWS上で Claude を本格活用するか」を検討するための判断材料として、以下の3点を整理します。

先取り:このリリースで何が変わるか

  • Managed Agents、Agent Skills、Code Execution、Web検索、MCPコネクタなど Anthropic 公式のフル機能 が、AWSアカウントから直接使えるようになった
  • 認証は AWS IAM、監査は CloudTrail、請求は AWS Marketplace に統合される。別途 Anthropic と契約する必要がない
  • 既存の AWS コミットメント(EDPなど)を消費できる。新たな調達プロセスが不要
  • 東京リージョン対応(17リージョン中の1つ)。日本企業のデータが米国を経由せず処理可能
  • 既存の Amazon Bedrock とは並列の選択肢。データレジデンシー要件があれば Bedrock、フル機能を使いたいなら Claude Platform on AWS、という使い分けが推奨されている
Claude Platform on AWS のアイキャッチ画像。AWS と Claude を組み合わせて使えることを示す
Claude Platform on AWS:AWSアカウントから Claude のフル機能を呼び出せる新サービス

「Claude Platform on AWS」とは何か

簡単にいうと、Anthropic公式の Claude プラットフォーム体験を、AWSアカウント経由でそのまま使えるサービス です。これまで Anthropic の Claude を本格的にビジネス利用するには大きく3つのルートがありました。

  1. Anthropic 公式 API(claude.com / console.anthropic.com):別途 Anthropic と契約してクレジットを購入。すべての機能が使えるが、AWS の認証や請求とは分離
  2. Amazon Bedrock 経由:AWSアカウント内で完結。請求も認証もAWSで統一。ただし Managed Agents、Code Execution、Web検索などのフル機能は使えない(基本的な Messages API のみ)
  3. Google Cloud Vertex AI 経由:Google Cloud 版。同様に基本機能のみ

今回の Claude Platform on AWS は 「1番目(Anthropic公式のフル機能)」と「2番目(AWSの認証・請求統合)」を合体させた選択肢 です。AWS アカウントの IAM 認証情報でそのまま叩け、請求も AWS Marketplace から既存の AWS 請求書に乗ります。Anthropic 側との別契約は不要です。

機能セット:何が使えるか

Claude Platform on AWS で使える機能は、Anthropic公式の Claude Platform とほぼ完全に同じです。AWS Machine Learning Blog で挙げられている主な機能を整理すると、4層構造になっています。

Claude Platform on AWS の機能セット俯瞰図。ベースAPI、エージェント自動化、外部世界とのインタラクション、コンソール運用の4層構造
Claude Platform on AWS の機能セット俯瞰図(ベースAPI / エージェント / 外部世界連携 / コンソール)

① ベースAPI(基本機能)

  • Messages API:テキスト、画像、PDF を入力に Claude の応答を得る基本API
  • Prompt Caching:同一プロンプト部分を再利用してコスト・レイテンシを削減
  • Citations:回答に出典情報を埋め込んで根拠を明示
  • Batch Processing:大量リクエストを非同期で処理してコストを抑える

② エージェント/自動化レイヤー(ベータ)

  • Managed Agents:業務エージェントをホスティング込みでデプロイ・スケール
  • Agent Skills:業務知識をスキルとして登録し横展開(先日リリースされた Claude for Legal も同じ基盤)
  • Advisor Tool:エージェントの戦略立案や複雑問題の分解を支援
  • MCP Connector:Model Context Protocol で外部システムに接続

③ 外部世界とのインタラクション

  • Web Search:エージェントがネット検索して最新情報を取得
  • Web Fetch:特定URLを直接フェッチして内容を分析
  • Code Execution:Python とデータ分析環境を内蔵。CSVなどのファイル処理も可能
  • Files API(ベータ):ドキュメント管理。エージェントが永続的に参照可

④ コンソール/運用

  • Workspace 管理:複数のワークスペースを作成し、権限管理
  • API Key 生成:IAMと連動した発行・失効管理
  • Usage Analytics:ワークスペース別・IAMプリンシパル別・期間別の使用量分析
  • プロンプト改善・評価:Anthropic Console 標準のチューニング機能

Bedrock との違い:もっとも重要な選択ポイント

既に Amazon Bedrock で Claude を使っている企業からすると、最大の疑問は「Bedrock からこっちに乗り換えるべきなのか?」だと思います。結論からいうと、用途によって使い分けるのが公式の推奨 です。AWS Machine Learning Blog は「Claude Platform on AWS は Bedrock 上の Claude モデルを補完する」と明記しています。

Amazon Bedrock と Claude Platform on AWS の比較表。データ処理場所、機能セット、料金体系などを項目別に整理
Amazon Bedrock と Claude Platform on AWS の比較表(2026年5月時点)

最大の違いは「データがどこで処理されるか」

  • Amazon Bedrock:データは AWS のセキュリティ境界内 で処理される。Anthropic 側にデータが渡らない。金融・医療・公共セクターなど厳格なデータレジデンシー要件がある業務向き
  • Claude Platform on AWS:データは Anthropic 側のセキュリティ境界で処理される(AWS Machine Learning Blog の原文:requests and data are processed outside the AWS security boundary)。代わりに Managed Agents や Code Execution などのフル機能が使える

データレジデンシー要件がある場合は注意

「顧客データを国外に出してはいけない」「Anthropic を含む第三者に処理させない契約条項がある」といった条件がある業務では、Claude Platform on AWS は選択できません。この場合は引き続き Amazon Bedrock を使うか、社内で オンプレ環境への LLM 配置(オンプレLLM) を検討することになります。

料金:Claude Consumption Units(CCU)という新単位

料金は AWS Marketplace を通じて請求されます。仕組みは少し独特で、Claude Consumption Units(CCU) という単位で課金されます。

  • 1 CCU = $0.01(米ドル換算)
  • Anthropic 側のモデル別・機能別の標準レート(USD建て)でトークン利用量を計算
  • 交渉済みディスカウントがあれば適用
  • 最終的に CCU に変換して請求書に記載

重要なのは、既存の AWS コミットメント(Enterprise Discount Program など)の消費対象になる ことです。「AWS は年間 X 億円契約済みで、その枠を使い切りたい」という企業にとっては、Anthropic と別途契約してクレジットを購入するより資金効率が良くなる可能性があります。Bedrock 同様、AWS Cost Explorer で監視可能 です。

対応リージョン:東京を含む17リージョン

正式リリース時点で対応している AWS リージョンは以下の17箇所です。日本企業にとって重要な Asia Pacific (Tokyo) も初回から含まれて います。

  • 北米:US East (N. Virginia)、US East (Ohio)、US West (Oregon)、Canada (Central)
  • 南米:South America (São Paulo)
  • 欧州:Ireland、London、Frankfurt、Milan、Zurich、Paris、Stockholm(合計7リージョン)
  • アジア太平洋東京、ソウル、ジャカルタ、シドニー、メルボルン

東京リージョンで処理されることで、レイテンシーが米国経由より大幅に改善されます(実測値は要検証ですが、一般的な経験則として往復100ms以上の差が出ます)。リアルタイム性が求められる業務エージェントや、ユーザー向けチャット応答などで効いてきます。

認証と監査:既存 AWS の運用に乗せられる

認証は AWS IAM Signature Version 4、または API キー(Anthropic Console で発行)の2通りです。AWS Machine Learning Blog では 「temporary IAM credentials」を推奨 としており、IAM ロール経由でアクセスする運用が想定されています。

  • 認証:AWS IAM ロール(推奨)または API キー
  • 監査:CloudTrail に標準対応。誰がいつ何のリクエストを投げたかを既存の監査基盤で追跡可能
  • コスト管理:AWS Cost Explorer に統合

つまり、Anthropic を「もう1つの AWS サービス」として運用できる ということです。ガバナンス整備済みの企業にとって、新たに別のIAM/監査基盤を立てる必要がないのは大きいです。

日本企業がどう判断するか

ここまでの情報を踏まえて、日本企業が「Bedrock のままでいいか、Claude Platform on AWS に移行するか」を判断する際の論点を整理します。

Claude Platform on AWS を選ぶ場面

  • 業務エージェントを本格運用したい:Managed Agents は Bedrock にはない。エージェント開発を本格化させるならこちら
  • Code Execution が必要:Claude にCSVを渡してPython処理させる、グラフを書かせるといった用途
  • Web検索・Webフェッチが必要:最新情報を取りに行くエージェント、URLを分析するワークフロー
  • Anthropic Console のプロンプト改善機能を使いたい:本格的なプロンプトエンジニアリングをする開発チーム
  • Claude for Legal、Claude for Creative Work などのスキルパッケージを使う前提:これらはすべて Skill 基盤の上に乗っている

Bedrock のままがよい場面

  • 金融、医療、公共セクターなど厳格なデータレジデンシー要件がある:顧客との契約で「データを国外に出さない」「第三者に処理させない」と明記している場合
  • Messages API だけで十分:基本的なテキスト生成・要約・分類だけが用途
  • 既に Bedrock 中心で社内ガバナンスを整備済み:他のFM(Llama、Mistral等)も並行利用しており、Bedrock を統一窓口にしている

両方使うパターン

公式が推奨しているのは 「並列運用」 です。たとえば次のような切り分けが考えられます。

  • 顧客の機密データを扱うワークフロー → Bedrock
  • 社内向けのエージェント、社内ツール、社員のAI活用 → Claude Platform on AWS
  • 外部API連携や Web検索が必要なリサーチ業務 → Claude Platform on AWS

気になるところ、注意すべきところ

  • 多くの機能がベータ提供:Managed Agents、Agent Skills、MCP Connector、Files API、Advisor Tool はベータ。本番運用前に SLA や安定性を確認する必要あり
  • CCU 単位の理解が必要:1 CCU = $0.01 だが、トークン利用量から CCU への換算ロジックは契約後に確認すべき。営業見積もりで実態を聞き出すのが安全
  • データ処理場所の説明を社内法務に確認:「Anthropic のセキュリティ境界で処理される」が、自社の個人情報保護方針・顧客契約と整合するか。前回のClaude for Legal記事でも触れたとおり、AI ガバナンスの整備が前提
  • Bedrock と機能差が縮まる可能性:今後 Bedrock 側にも Managed Agents 相当の機能が追加される可能性は高い。「現時点での差」と捉え、長期戦略は半年ごとに見直すのが妥当

はてなベース観点での所感

業務エージェント導入の支援をしている立場から見ると、Managed Agents と Agent Skills が AWS から直接使える ことの意味はかなり大きいです。これまで「エージェントは Anthropic 直契約、本番システムは AWS」という分離が必要だったのが、ガバナンス・調達・課金で一本化できます。すでに AWS でクラウド基盤を持っている日本企業にとっては、AIエージェント導入のハードルが1段下がるリリースです。

まとめ

  • 2026年5月11日、Claude Platform on AWS が GA。AnthropicのフルClaude機能がAWSアカウントで使える
  • Bedrock との関係は補完。データレジデンシー重視なら Bedrock、フル機能ならこちら
  • 東京リージョン対応。料金は AWS Marketplace 経由(CCU単位)
  • 既存AWSコミットメント消費可。調達プロセスも認証も既存の運用に乗せられる
  • ベータ機能が多いので、本番運用前に SLA とプライバシー観点の整理が必要

AWS上でのAIエージェント導入を検討中の企業さまへ

はてなベースでは、Claude や Claude Code を活用した業務エージェントの設計、AWS環境への組み込み、社内ガバナンスの整備までを一貫支援しています。Bedrock と Claude Platform on AWS の使い分けを含めたアーキテクチャ設計、PoCから本番運用までの伴走をワンセットで提供します。

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