2026.03.11 | Salesforce
チャットだけじゃない!Agentforceの6つの起動パターン
「Agentforceってチャットボットでしょ?」
そう思っていませんか。実はAgentforceには、チャット以外にも多彩な起動パターンがあります。2025年4月にリリースされた「Agentforce 2dx」によって、ユーザーが話しかけなくてもAIが自律的に動くバックグラウンド実行が可能になりました。
この記事では、Agentforceの6つの起動パターンを紹介します。「うちの業務には合わないかも」と思っていた方も、きっと使い道が見つかるはずです。
「チャットボット」だけではもったいない
Agentforceの紹介記事やデモを見ると、Webサイト上のチャットウィンドウで顧客と会話する場面がほとんどです。そのため「高機能なチャットボット」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
しかし、Salesforceが2025年に打ち出した「Agentforce 2dx」のコンセプトは、AIエージェントをあらゆるビジネスプロセスに組み込むというものです。チャットはあくまで入口の一つに過ぎません。
以下、6つの起動パターンを順に紹介します。
パターン1 — 対話型(チャット / Slack / Voice)
もっとも馴染みのあるパターンです。顧客または社内ユーザーが、チャットウィンドウやSlackでAIに話しかけて対話します。
具体的な利用シーン
Webチャット — 自社サイトにチャットウィジェットを設置し、顧客からの問い合わせにService Agentが自動応答
Slack Agent — Slackチャンネル上で「今月の売上見込みは?」と質問すると、Salesforceのデータを参照して回答
Voice(音声) — 電話をかけた顧客に対して、IVR(自動音声応答)の代わりにAIが自然な会話で対応。Amazon Connect、Five9、Vonageとの連携に対応
Slackとの連携は2025年1月にGA(正式リリース)済み。音声対応はAmazon Connect、Five9、Vonageとの連携で順次展開が進んでいます。
導入事例
OpenTable社はWeb上のレストラン問い合わせの73%をAgentforceで処理。従来のツールと比較して50%の改善を達成しました。
パターン2 — Flow内でAIに判断させる
Salesforceの自動化ツール「Flow Builder」の中に、Agentforceを組み込むパターンです。Flowの処理の途中でAIに判断を任せることができます。
具体的な利用シーン
ケースの自動分類 — ケースが作成されると、AIが内容を分析して「カテゴリ」「優先度」「担当チーム」を自動判定。従来のルールベースでは対応しきれなかった曖昧な問い合わせにも対応できます
リードの自動評価 — リードの企業情報や行動履歴をAIが分析し、BANT基準でスコアリング。人手では対応しきれなかったリードにも漏れなくアプローチできます
承認フローへのAI評価挿入 — 見積もりの承認フローで、金額やリスクをAIが事前評価。マネージャーは判断材料が揃った状態で承認/却下を行えます
このパターンのポイントは、AIが判断するだけで、最終決定は人間が行うという点です。「AIに全部任せるのは不安」という段階でも安心して始められます。
Flow Builderには「Agentforce Side Panel」という機能もあり、画面右側のパネルでAIに相談しながらFlowを作成できます。「このフローに条件分岐を追加して」といった自然言語の指示で、Flowの構築自体をAIがサポートしてくれます。
パターン3 — イベント駆動型(Agentforce 2dx)
ユーザーが操作しなくても、データの変化をトリガーにAIが自動で動くパターンです。2025年4月にGAとなった「Agentforce 2dx」の中核機能です。
具体的な利用シーン
在庫アラート — 在庫数が閾値を下回ったPlatform Eventを受信→AIが需要予測を分析→自動で発注書を作成
商談ステージの変更 — 商談が「提案」から「交渉」に進んだタイミングで、AIが競合情報や過去の類似案件を自動で営業担当に通知
定期バッチ処理 — 毎週月曜日に休眠リードを自動再評価し、再アプローチの優先順位を更新
トリガーとなるイベントは以下の5種類に対応しています。
| トリガー種別 | 説明 |
|---|---|
| Platform Event | 外部システムや社内プロセスからのイベント通知 |
| Record-Triggered Flow | レコードの作成・更新・削除 |
| Apex Trigger | 複雑な条件判定が必要な場合 |
| Scheduled(スケジュール) | 日次・週次・月次の定期実行 |
| Pub/Sub API | 外部システムからのリアルタイム連携 |
Platform Eventの設定画面はシンプルで、イベント名とカスタム項目を定義するだけでAgentforceのトリガーとして利用できます。
導入事例
Engine社はAI処理率30%を達成し、年間$1.9M(約2.8億円)のインパクトを創出。Precina Health社は患者5,000名あたり年間$80,000のコスト削減を実現しています。
パターン4 — メール起点(Email-to-Agent)
メールの受信をきっかけにAIが自動で分析・対応するパターンです。SalesforceのEmail-to-Case機能と連携して動きます。
具体的な利用シーン
メールの自動分析・振り分け — 顧客からのメールを受信→AIが内容を分析→カテゴリ・優先度・担当チームを判定→適切な担当者に自動ルーティング
自動応答の生成 — 問い合わせ内容をもとにナレッジベースを検索し、回答メールのドラフトを自動作成。担当者は内容を確認して送信するだけ
メール内の情報をSalesforceに自動反映 — メール本文から住所変更や注文番号などの情報を抽出し、該当レコードを自動更新
既存のメール対応業務にそのまま適用できるため、顧客側の行動変容が不要です。「チャットを導入したいけど、顧客がメールでしか連絡してこない」という企業にとって、始めやすいパターンです。
パターン5 — バッチ処理(Headless Agent)
画面を持たない”裏方”として、大量データの処理をAIが実行するパターンです。
具体的な利用シーン
データクレンジング — 住所表記の揺れ統一、重複レコードの検出・マージ、電話番号フォーマットの正規化
大量ケースの再分類 — 10,000件のケースを根本原因別に再カテゴリ分類。人手では数日かかる作業をバックグラウンドで処理
月次レポートの自動生成 — 顧客のヘルススコアを月次で再計算し、レポートを自動生成
バッチ処理はApex(Salesforceのプログラミング言語)から呼び出す形になるため、管理者よりも開発者向けのパターンです。ただし、「データ品質の改善」や「定型レポートの自動化」など、ビジネス側で要件を出すだけで実装できるケースも多くあります。
パターン6 — 外部連携(Agent API / MuleSoft)
Salesforceの外にあるシステムから、AgentforceをAPI経由で呼び出すパターンです。
具体的な利用シーン
ERPとの連携 — SAP S/4HANAで注文が入った際、Agentforceが与信チェック・在庫確認・出荷手配を自動判断
自社Webアプリからの呼び出し — 自社開発のポータルサイトからAgent APIを呼び出し、AIによる顧客対応を埋め込む
MuleSoftを介した複合連携 — ECサイトでカート放棄が発生→MuleSoftがイベントを検知→Agentforceが顧客属性に応じたフォロー施策を実行
Agent APIは2025年4月にGAとなり、OAuth 2.0認証でセキュアにアクセスできます。MuleSoftとの連携では、キュー方式のリトライやEvent Busのリスニングなど、エンタープライズレベルの信頼性を確保しています。
導入事例
Adecco社は40以上のデータソースを統合し、面接スケジューリング・候補者フォロー・書類収集をAgentforceで自動化。採用プロセスを根本から変革しました。
どのパターンから始めるべきか
6つのパターンを紹介しましたが、一度にすべてを導入する必要はありません。推奨される導入ステップは以下のとおりです。
| ステップ | パターン | 難易度 | 効果の出やすさ |
|---|---|---|---|
| Step 1 | 対話型チャット | ★☆☆ | ★★★ |
| Step 2 | Flow内AI判断 | ★★☆ | ★★★ |
| Step 3 | メール起点 | ★★☆ | ★★☆ |
| Step 4 | イベント駆動型(2dx) | ★★☆ | ★★☆ |
| Step 5 | バッチ処理 | ★★★ | ★★☆ |
| Step 6 | 外部連携(API) | ★★★ | ★★★ |
まずはStep 1の対話型チャットで「Agentforceの動き方」を理解し、Step 2のFlow連携で社内プロセスへの組み込みに慣れていく。その後、業務要件に応じてStep 3以降を拡張していくのが失敗の少ない進め方です。
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