
Salesforce が Summer '26 リリース を発表しました。プレリリースは2026年4月29日から、サンドボックスは5月8日から、本番リリースは6月5日・12日・13日の週末にかけて段階的に展開されます。今回のリリースで強調されているのは「Agentic Enterprise(エージェント駆動企業)」というキーワードで、CRM の各クラウドに点在していた AI 機能を Agentforce に集約していく方向性が明確になってきました。
本記事では Salesforce 公式の発表「10 Innovations Bringing the Agentic Enterprise to Life」を起点に、Summer '26 で押さえておきたい主要10機能を一覧化し、特に注目すべき3機能を国内 DX 担当者の視点で深掘りします。Agentforce 関連の ARR が前年同期比 169% 増の8億ドルを突破している現状を踏まえ、Salesforce 採用企業が何を試し、何を見送るべきかを整理します。
Summer '26 の位置づけ
Salesforce は2025年から「Einstein → Agentforce」へのブランド再編を進めてきました。Spring '26 では Agentforce が CRM の各画面に組み込まれる インライン化 が進みましたが、Summer '26 ではさらに踏み込み、複数のエージェントを束ねて1つの業務フローを完遂させる Multi-Agent Orchestration を中核に据えています。
また、開発者向けには Agentforce Vibe IDE(Beta)と Agentforce DX MCP Server(Beta)が登場し、エージェント構築のワークフローが Salesforce 純正ツールでカバーされるようになりました。Anthropic Claude や OpenAI といった LLM ベンダーとの連携は、依然として Trust Layer を経由する形を取りつつ、MCP(Model Context Protocol)対応によりエージェント側からのデータアクセスが標準化されてきている点が特徴です。
Summer '26 主要10機能の一覧
Summer '26 で発表された機能のうち、Agentforce 関連を中心に特に経営層・現場リーダー層が認識しておくべき10機能をピックアップしました。GA(一般提供)/ Beta / Pilot の区分と、対象となる Salesforce 製品ラインを併記しています。
| 機能名 | 対象クラウド | 状態 |
|---|---|---|
| Multi-Agent Orchestration | Agentforce 360 | GA(順次) |
| Tableau MCP | Tableau / Agentforce | GA |
| Agentforce Self-Service(新Help Agent + Portal) | Service Cloud / Agentforce | GA |
| Momentum(営業活動の自動構造化) | Sales Cloud / Agentforce | GA |
| Collections with Agentforce(与信・督促) | Revenue Cloud / Agentforce | GA |
| Scheduling Console(次世代スケジューラ) | Field Service / Agentforce | GA |
| IT Service Domain Pack(50超のITサービスエージェント) | Agentforce for IT | GA |
| Agentforce Vibe IDE | Developer Tools | Beta |
| Agentforce DX MCP Server | Developer Tools | Beta |
| Agentic Milestones(SLA対応の自動化) | Service Cloud / Agentforce | Beta |
上記以外にも、Knowledge Grounded Email Response(ナレッジ記事3本までを根拠にメール下書きを生成)、Process Compliance Navigator(規制文書の AI 抽出)、In-Person Meeting Transcription with ECI(対面商談のモバイル文字起こし)など、業種・職種特化の機能が多数追加されています。リリース全体としては、「すべての業務操作の傍らに Agentforce が常駐する」状態を作りに来ているのが Summer '26 の総括です。
注目機能の詳細解説
1. Multi-Agent Orchestration(複数エージェント協調)
Summer '26 の目玉は、複数の Agentforce エージェントを1チームとして連携動作させる Multi-Agent Orchestration です。たとえば「商談クローズ後の請求書発行 → 与信スコアリング → 督促プラン提案」のような end-to-end ワークフローを、営業エージェント・与信エージェント・督促エージェントが共有コンテキストを引き継ぎながら処理します。
従来は1つのエージェントに業務全体を覚え込ませる必要がありましたが、Summer '26 以降は役割ごとに分割したエージェントを束ねる設計が可能になります。これは Anthropic が提唱する「sub-agent」アーキテクチャや、各社 AI プラットフォームの方向性とも一致しており、Agentforce が単なるチャットボットではなく業務オーケストレーターとして位置付けられたことを意味します。
2. Tableau MCP(分析データへの直接アクセス)
Tableau MCP は、Agentforce のエージェントが Tableau の分析エンジンに直接クエリを投げられるようにする統合機能です。MCP は Anthropic が公開した Model Context Protocol を Salesforce が採用したもので、業界標準として広がりつつあります。
従来、エージェントに分析結果を答えさせるには事前にデータをロードしておく必要がありましたが、Tableau MCP 経由ならユーザーの質問に応じてリアルタイムに Tableau から数値を引き出し、Agentforce Trust Layer のガードレール内で回答できます。「先月の関東支店の粗利は?」のような問い合わせをチャットでそのまま回答できる体験は、現場の意思決定スピードを大きく変える可能性があります。
3. Momentum(営業活動の自動構造化)
Momentum は、営業担当の通話・メール・会議をすべて自動でキャプチャし、Salesforce のレコードにリアルタイムで構造化データとして書き戻す機能です。営業担当が SFA 入力を後回しにする課題は10年以上業界の宿題でしたが、Momentum はそのデータ入力タスクそのものを撤廃しに来ています。
Agentforce Sales は Momentum が整備したデータを土台に、次のアクション提案・商談スコア更新・上司への要注意アラートを自動で行います。日本企業の場合は商談プロセスが社外電話・対面訪問・社内稟議と非デジタルな接点が多いため、In-Person Meeting Transcription と組み合わせて運用設計するのがポイントになります。
既存 Einstein / Service Cloud との関係
Summer '26 の重要な観察ポイントは、Einstein ブランドの後退と Agentforce への一本化です。Einstein はもともと予測 AI・スコアリング系の機能を指していましたが、今回のリリースでは予測機能も含めて Agentforce の傘下に再編されています。たとえば Collections の与信スコアリングは「Einstein による予測」と説明されつつ、UI 上は Agentforce が督促プランを提案する形に統合されました。
Service Cloud 側では Agentic Milestones(Beta)が登場し、SLA に紐づく初回応答や定期報告を Agentforce が人間に代わって自動送信できるようになります。これまで Service Cloud のミレストン機能はあくまでアラート止まりでしたが、Summer '26 からは「ルール遵守の通信そのものをエージェントが代行する」段階に進みました。
ただし、既存の Einstein Bots や Service Cloud のフロー資産はそのまま使い続けられます。一気に Agentforce に作り替える必要はなく、まずは新規業務から Agentforce で組み、既存資産は段階的にエージェント化していく現実的なロードマップが取れます。
国内 Salesforce 採用企業への示唆
国内で Salesforce を導入している大企業・中堅企業にとって、Summer '26 は「AI 機能を試すフェーズ」から「業務に組み込むフェーズ」への分水嶺になるリリースです。具体的には次の3つの判断が早急に求められます。
- Agentforce ライセンス追加の意思決定 — 既存のService Cloud / Sales Cloud ユーザーは Agentforce アドオンの追加検討が必要。Self-Service の新 Help Agent は10クリック以下で立ち上がるためPoCのハードルが大幅に下がった
- データ基盤の整備 — Multi-Agent Orchestration を本気で使うには、Salesforce 内のオブジェクトが一定の粒度で整理されていることが前提。汚れたデータでエージェントを動かすと幻覚と誤回答のリスクが上がる
- 社内ガバナンスとTrust Layer の運用設計 — どの顧客データをどのエージェントに見せるか、誰がエージェントを設計・公開できるかの権限設計を Permission Set ベースで整える必要がある
特に金融・医療・公共などの規制業種は、Tableau MCP や Momentum のような「データを横断するエージェント」を導入する際に、個人情報・機密データの取り扱いポリシーを Trust Layer の設定に落とし込む必要があります。情報システム部門と業務部門が最初の小さなユースケースを共同設計する体制づくりが、Summer '26 期の最大の勝負どころです。
Salesforce Agentforce 導入を本格検討する
はてなベース株式会社では Agentforce のPoC設計から本番展開、Trust Layer の権限設計、データ整備までを一括支援するパッケージを提供しています。
はてなベースの視点 - Agentforce 導入の進め方
弊社では Salesforce 採用企業の Agentforce 導入支援を継続的に行っており、Summer '26 のような大規模リリースが入るたびに、「機能の羅列」ではなく「業務適用シナリオ」で顧客と議論することを重視しています。実際の現場で詰まりやすいのは技術ではなく、どの業務をエージェント化すべきかの優先順位付けです。
Summer '26 を踏まえた Agentforce 導入の推奨ステップは次のとおりです。まずは Help Agent や Knowledge Grounded Email Response のような問い合わせ対応系から着手し、社内の AI 体験を作ります。次に Momentum で営業データを整え、最後に Collections や Multi-Agent Orchestration のような業務横断のオーケストレーションに踏み込みます。順序を逆にすると、データの汚れがそのままエージェントの精度低下として跳ね返ってきます。
また、Agentforce 単体ではなく kintone × freee × Anthropic Claude といった他SaaSやLLMとの組み合わせを前提とした提案が増えています。特に中堅企業では「Salesforce はあるが Service Cloud は重い」というケースが多く、Agentforce Self-Service の新 Portal を選ぶか、kintone 側で問い合わせフォームを作るかの判断が分かれます。プラットフォーム選定の段階から AI 活用シナリオを織り込むのが、はてなベースの基本スタンスです。
まとめ
Salesforce Summer '26 は、Agentforce が CRM の中核として確立されたことを示すリリースです。Multi-Agent Orchestration による業務オーケストレーション、Tableau MCP による分析データへの直接アクセス、Momentum による営業活動の自動構造化など、業務の前提を変える機能が並びました。
Salesforce 採用企業は、6月の本番リリースまでに「自社のどの業務にどのエージェントを当てるか」のロードマップを引いておくことが推奨されます。はてなベースでは Agentforce 導入パッケージのほか、Anthropic Claude のエンタープライズ展開支援、SES業界向けパッケージなど、業種・業務別の支援メニューを揃えています。
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Salesforce Agentforce の導入だけでなく、Claude Enterprise の社内展開やSES業界向けパッケージなど、業種別の支援メニューもご用意しています。