Google Picsとは?Workspace初の画像生成・編集アプリをGoogle I/O 2026で発表

2026年5月19〜20日に開催されたGoogle I/O 2026で、GoogleはGoogle Pics(グーグル・ピクス)という新しいスタンドアロンアプリを発表しました。Go…

2026年5月19〜20日に開催されたGoogle I/O 2026で、GoogleはGoogle Pics(グーグル・ピクス)という新しいスタンドアロンアプリを発表しました。Google Workspaceの歴史の中で、画像の生成と編集だけに特化したアプリが登場するのは今回が初めてです。

これまでビジネス向けの画像制作といえば、CanvaやAdobe Expressのような外部ツールに頼るか、スライドソフトの図形機能で代替するしかありませんでした。Google Picsはその空白を埋めるために設計されており、特に「プロンプトを打ち込んで全体を再生成する」のではなく、画像の特定部分だけを精密に変更できる点が既存サービスとの最大の違いとして打ち出されています。

この記事では、Google Picsの主要機能、既存ツールとの使い分け、Workspaceとの連携方法、そして業務での活用シーンを整理します。マーケター・広報担当者・資料作成を担う方を中心に、「実務でどう使えるか」という視点で解説します。

Google Picsとはどんなアプリか

Google PicsはGoogleが独自に開発したNano Banana(ナノ・バナナ)と呼ばれるAIモデルを基盤とする画像生成・編集専用アプリです。GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントと同様に、ブラウザから直接開いて使えるWebアプリとして提供されます。

最大の特徴は「生成」と「編集」を一体化したワークフローです。ゼロから画像を作るだけでなく、手元にある写真や既存の画像素材を読み込んで部分的に加工する使い方が想定されています。プレゼン資料用のビジュアル作成、ウェブサイトのバナー調整、SNS投稿用画像の仕上げといった日常的な業務用途にフォーカスしている点が、研究者・開発者向けのツールが多い他のGoogle AI系サービスとの違いです。

提供スケジュール(2026年5月時点)

Google Picsは現在、信頼テスター向けに先行提供中です。2026年夏にグローバルロールアウトが予定されており、Google AI Pro/Ultraサブスクリプションの利用者と、Workspaceビジネス版のユーザーがプレビュー対象となっています。

主要機能の詳細

Google Picsが持つ機能は、大きく3つのカテゴリに分類できます。それぞれの機能が実務においてどのような場面で役立つかとあわせて見ていきます。

オブジェクトセグメンテーションによる部分編集

最も注目される機能がオブジェクトセグメンテーション(物体の領域分割)です。画像をAIが自動的に要素ごとに分析し、「空」「人物」「背景の建物」「手前の商品」といった各パーツを個別に認識します。利用者はその中から変更したい部分だけを選択し、残りはそのまま維持した状態で加工を加えられます。

従来のAI画像ツールが抱えていた課題は、「一部を変えようとするとほかも変わってしまう」点でした。たとえば商品写真の背景色だけを青から白に変えたいとき、ツールによっては商品の形状や光の当たり方まで変わってしまい、結局ゼロから撮り直す羽目になるケースもありました。

Google Picsのセグメンテーション機能では、「空の色だけを夕暮れの橙色に変える」「人物の服のデザインだけを差し替える」「背景の雑然とした棚を白い壁に置き換える」といった変更を、画像全体の再生成なしに行えます。非破壊的な編集であるため、元の状態に戻すことも容易です。

  • 背景の置き換え(無地・ぼかし・別シーンへの差し替え)
  • 商品や人物などメインオブジェクトの色・デザイン変更
  • 不要な要素(写り込んだ人物・ロゴ・ゴミ)の除去
  • 複数の異なる素材を組み合わせたコラージュ制作

画像内テキストの翻訳と書き換え

もうひとつ実務で効果を発揮しそうな機能が、画像の中に埋め込まれたテキストをそのフォントや配置を保ったまま編集できる機能です。

たとえば英語で作られたインフォグラフィックや海外サプライヤーから受け取ったバナー素材を、「日本語化してください」とプロンプトで指示するだけで、元のデザインを崩さずに翻訳版を生成できます。資料の文言だけを変えたい場面(価格・日付・コピーの差し替えなど)でも、デザインデータが手元になくても対応できます。

Googleの発表では、対応言語については具体的な上限は明示されていませんが、翻訳機能はGoogle翻訳エンジンと連携する形で動作するとされており、主要なビジネス言語には対応する見込みです。日本語の縦書きレイアウトへの対応については正式ロールアウト時の仕様確認が必要です。

フォント保持の精度について

テキスト編集機能は元のフォントを「再現」するアプローチで動作します。元のフォントファイルを読み込むわけではなく、AIが視覚的な特徴を模倣する形での実装です。標準的なサンセリフ・セリフ体では精度が高いですが、高度に装飾されたカスタムフォントでは多少のズレが生じる場合があります。

共同編集キャンバスとリアルタイムコラボレーション

Google Picsには、Googleドキュメントと同様の共同編集キャンバス機能が組み込まれています。チームメンバーが同時に同じ画像プロジェクトを開いて作業できるため、「デザイン担当が調整している間にマーケターがコピーを変える」といった並行作業が可能になります。

変更履歴も自動で保存されるため、「誰がいつどの部分を変えたか」を後から確認できます。外部ツールで作ったデザインをメール添付でやり取りするワークフローと比べると、確認コストや差し戻しの手間が大幅に減ります。チームでの広告素材管理、ランディングページのビジュアル調整、IR・広報資料の最終仕上げなど、複数人が関わるビジュアルコンテンツの制作に向いています。

Google WorkspaceのSlidesとDriveとの統合

Google PicsはWorkspaceのエコシステムに深く組み込まれる形でリリースされます。現時点で確認されているのはGoogle SlidesとGoogle Driveとの連携です。

Google Slidesからの直接起動

Google Slidesで作業中に、スライド上の画像を右クリックして「Google Picsで編集」を選択するだけで、別タブでPicsが開きます。編集内容を保存するとSlidesのスライドに自動で反映されるため、画像を書き出して再インポートする手間が不要になります。

提案書・営業資料・社内報告資料の仕上げ段階で「この1枚だけ背景をきれいにしたい」「グラフの配色を全社のブランドカラーに揃えたい」という場面で、ツールを切り替えずに完結できるのは業務効率の観点で意味があります。

Google Driveとのファイル管理

Driveに保存されている画像ファイルを選択するとPicsで直接開けるほか、Picsで作成・編集した画像はDriveのフォルダに自動保存されます。共有ドライブと組み合わせれば、チームの画像素材ライブラリとして機能させることもできます。

Google Workspaceを業務の中心に使っているチームであれば、「画像系の作業だけ別のクラウドサービスに画像をアップロードして編集して戻す」という手間がなくなります。データが常にGoogleアカウントの管理下に置かれるため、情報管理ポリシーの面でも整理がしやすくなります。

将来的な統合の広がり

Googleは発表の中で、今後Google MeetやGmailへの統合も検討していることを示唆しています。Meetのバーチャル背景作成やGmailのHTMLメール内画像編集への展開が想定されています。正式ロールアウト後に順次公開される見込みです。

既存ツールとの違いと使い分け

「CanvaやAdobe Expressで十分では?」という疑問は自然です。以下の表で主な画像編集ツールとの比較を整理します。

比較項目Google PicsCanvaAdobe ExpressFigma
Workspaceとの統合ネイティブ統合(Slides/Drive直結)連携プラグインあり(別途設定)Adobe Creative Cloudと連携FigmaのデザインをSlides等へエクスポート
部分編集の精度オブジェクトセグメンテーションで高精度背景除去は可能(部分指定は限定的)Fireflyで背景除去・生成塗りつぶし対応ベクター編集が主、ラスター生成編集は弱い
画像内テキスト編集フォントを保ちながら翻訳・書き換え対応テンプレートのテキスト編集(埋め込み画像内は非対応)限定的なOCR連携あり非対応
共同編集リアルタイム(Docs同様)リアルタイム可能有料プランで可能リアルタイム(設計ツールとして最高水準)
価格帯Workspace利用者向けに含まれる予定無料プランあり・有料で機能拡張Creative Cloudサブスクリプション無料プランあり・有料で拡張
学習コストWorkspaceユーザーには低いテンプレートUI中心で初心者向けやや高め(Adobe製品知識があると有利)デザイン専門職向けで習得に時間がかかる

Google Picsが際立っているのはWorkspaceにネイティブに組み込まれている点と、「プロンプト一発で全体再生成」ではなく「対象部分だけを精密に変更する」という設計思想です。Canvaはテンプレートから素早く完成物を作るのに向いており、Adobe ExpressはAdobeエコシステムを使っているクリエイター寄りのチームに向いています。Google Picsは「Gmailで毎日仕事をしているビジネスパーソンが、専門知識なしに画像を仕上げる」という用途に最も特化しています。

したがって、既存のCanvaやAdobe Expressを完全に置き換えるというより、Workspaceを中心に業務を回しているチームが「ちょっとした画像調整」のためだけに外部ツールに行く頻度を減らすという使い方が現実的な位置づけになるでしょう。

業務での活用シーン

ここでは、Google Picsが実際の業務のどのような場面で役立つかを具体的に見ていきます。

マーケティング・広報担当者の資料制作

キャンペーン用のバナー画像、プレスリリースに添付するビジュアル素材、SNS用の告知画像といったコンテンツは、毎回デザイナーに依頼するほどの規模ではないが、社内で「それっぽく」仕上げる必要があるものです。Google Picsのオブジェクトセグメンテーションを使えば、既存の製品写真の背景をブランドカラーに変更したり、季節のキャンペーンに合わせてコピーだけを差し替えたりする作業が、デザイン知識がない担当者でも行えるようになります。

多言語展開が必要な企業・チーム

海外支社に向けた資料の日本語化、あるいは日本向けに作った資料を英語・中国語版に展開する際、画像内のテキストだけを書き換えられる機能は実質的な価値があります。従来であればPhotoshopや専門ソフトを持っているスタッフに依頼するか、外注するしかなかった作業が、Workspaceの操作に慣れたスタッフなら担えるようになります。

特にインフォグラフィックや製品仕様書に埋め込まれたテキスト(スペック表・注釈・図の説明文)を翻訳する用途では、テキスト編集機能が直接効いてきます。

経営企画・コンサルティング職の報告資料

Slidesで作成した報告資料に、外部から取得した画像データ(市場調査の図表・競合他社の製品写真・ニュース記事のスクリーンショットなど)を組み込む場面があります。そうした画像のバランス調整や不要部分の除去、カラートーンの統一を、Slidesから離れずPics内で処理できるのは、資料の最終仕上げにかかる時間を短縮します。

社内報・採用コンテンツ担当者

社内のイベント写真を使った広報コンテンツや、求人票に載せるオフィス・社員の写真を仕上げる作業は、専任のフォトレタッチャーを置けない規模の企業では担当者が兼任しているケースが多くあります。「顔のピントが甘い」「背景が雑然としている」「光の色温度が揃っていない」といった写真の問題を、後処理で改善できる範囲はGoogle Picsのような部分編集機能が得意とするところです。

Google I/O 2026の文脈で見るWorkspaceのAI戦略

Google Picsはあくまでも今回のGoogle I/O 2026で発表されたWorkspace関連アップデートのひとつです。同イベントではGmailの「ライブ翻訳」機能やGoogleドキュメントへの「ライブ共同ナレーション」機能なども公開されており、Workspaceが「文書・表計算・メール」だけのスイートから、AIが常にそこにいてリアルタイムで支援する統合業務基盤へと進化しつつある姿が見えてきます。

画像生成・編集の領域でも同様の方向性があります。Gemini(ジェミニ)という大規模言語モデルがWorkspaceの各アプリに組み込まれていく中で、Google Picsはビジュアル領域を担う専用アプリとして位置づけられています。テキスト生成はGemini、画像生成・編集はPics、という役割分担になっていくと考えると、Workspaceユーザーにとっては外部ツールに頼る機会が減り続けることを意味します。

一方で、こうした機能の充実はビジネスユーザーの「Googleへの依存度」を高めることにもなります。自社データがGoogleのインフラ上で処理されることへの理解と、必要に応じたデータガバナンスの整理は、Google Picsのような新機能を導入する際に並行して検討しておくべき事柄です。

利用開始に向けて確認しておくこと

Google Picsの正式リリースに備えて、現時点で確認・準備しておくべき事項を整理します。

  • 対象プランの確認: Google AI ProまたはGoogle AI Ultraの個人サブスクリプション、あるいはGoogle Workspaceのビジネス向けプランがプレビュー対象。無料のGoogleアカウントでの利用可否は正式ロールアウト時に確定
  • 管理者側の事前設定: Workspaceの企業アカウントでは、管理コンソールからGoogle Picsのアクセス権を部門・ユーザーグループ単位で制御できる見込み。情報セキュリティ担当者と事前に利用範囲を確認しておくと導入後の混乱が少ない
  • AI生成コンテンツのポリシー整理: 社外向けの広告・PR素材にAI生成画像を使う場合、開示義務や倫理ガイドラインについて自社のコミュニケーションポリシーと照合しておく
  • 既存ワークフローとの棲み分け: CanvaやAdobe Expressをすでに使っているチームは、「どの用途をGoogle Picsに移行するか」を明確にしてからトライアルすると比較評価がしやすい

先行テスターへの参加方法

信頼テスター(Trusted Tester)プログラムへの参加はGoogle Workspaceの管理コンソールまたはGoogle AI Proのダッシュボードから申し込めます。企業アカウントの場合はWorkspace管理者が申請を行う必要があります。先行利用することでチームへの導入準備を早めに進められます。

まとめ:Google Picsが変えること

Google Picsは、「AIで画像を作る」という行為を、クリエイターや技術者だけのものから、Workspaceを使う一般のビジネスパーソン全員に開放しようとする試みです。Nano Banana AIモデルが実現するオブジェクトセグメンテーションとテキスト編集は、「AI画像ツールはプロンプトを書かないと使えない」という先入観を覆す方向に設計されています。

最も現実的な活用の入り口は、今まで「それだけのために外部ツールに行っていた」小規模な画像編集作業を、Workspace内で完結させることです。Slidesとの直接連携、Driveでのファイル一元管理、チームでのリアルタイム共同編集という3点が組み合わさることで、バラバラだった画像素材の管理とコラボレーションが整理されます。

2026年夏の正式リリースまでに、自社のWorkspace利用状況と今後の活用シーンを照らし合わせておくことが、スムーズな導入への準備になります。

Google Picsとは?Workspace初の画像生成・編集アプリをGoogle I/O 2026で発表 インフォグラフィック

Google Workspace活用のご相談

Google PicsをはじめとするWorkspace新機能の業務活用をご支援します。

無料相談を申し込む