社員が個人で契約した Claude を業務に使い始め、会社としては誰が何を入力しているのか分かりません。Claude Team の検討は、こうした状況から始まることが多いと思います。ただ、料金表を読んでも、切り替えた後に現場の画面と管理者の仕事がどう変わるのかは見えてきません。
そこで、はてなベースの名義で Claude Team を実際に契約し、管理者とメンバーの2つのアカウントで使い比べました。入力したのは架空の会社の規程3本と架空の経費8行だけです。個人契約と何が違うのか、管理者には何が見えるのか、導入の前にどの設定を変えるべきかを、画面を見ながら順に説明します。
Claude Team は、会社がまとめて契約し、管理者が設定と共有の範囲を決められる Claude です。2〜150席で、標準の席は年払いなら1席月20ドルです。入力内容は原則としてモデルの学習に使われず、法人向けの規約とデータ処理契約が付きます。実機で試すと、他人の非公開プロジェクトとチャットは管理者の画面からも開けませんでした。一方で、初期設定のままだとスキルは審査なしで全社に公開できます。監査ログが要る会社は Enterprise を、それ以外の会社はまず Team を少人数で試すことを勧めます。
この記事の要約
個人契約から Team にすると何が変わるのか
変わるのは、AI の性能よりも、会社が管理できる範囲です。次の表は、社員が個人の Pro を業務に使っている状態と、Team に移した状態を並べたものです。
| 項目 | 個人の Pro | Team |
|---|---|---|
| 規約 | 個人向け。は付かない | 法人向け。データ処理契約が自動で付く |
| モデルの学習 | 本人の設定次第 | 既定で使われない(評価を送った会話を除く) |
| 管理者 | いない | Owner と Admin を置ける |
| ログイン | 個人のメールなど | シングルサインオンを設定すれば会社のアカウントで入れる |
| コネクタ | 本人が自由に追加する | Owner が許可と制限を決める |
| 退職時 | 会話は本人のアカウントに残る | Admin がメンバーを外せる |
| 支払い | 各自が立て替える | 会社がカードで一括で払う |
表の2行目が、切り替えの理由として一番説明しやすい項目です。個人の Pro では、学習への利用を本人が設定で選びます。オンにすると、その後の新規または再開したチャットは匿名化した形式で最大5年保存され、学習に使われた分を後から取り消すことはできません。会社から社員全員の設定を確かめる手段もありません。Team なら、この判断を社員一人ひとりに任せず、既定で学習に使われない状態から始められます。ただし例外があり、社員が高評価や低評価を送った会話は学習に使われることがあり、最大5年保存されます。避けたい会社は、Owner の設定で評価の機能を止められます。
もっとも、切り替えただけで個人の Pro が消えるわけではありません。社員が私用のメールで作ったアカウントを Team の機能で止めることはできず、そこは利用規程で禁止するしかありません。会社が管理できるのは、Team の組織の中で行われた利用だけです。
料金は1席月20ドルから
2026年11月時点の公式の料金は次のとおりです。席は標準とプレミアムの2種類で、同じ組織の中で混ぜられます。
| 席の種類 | 年払い(1席・月) | 月払い(1席・月) | 使用量 |
|---|---|---|---|
| 標準 | 20ドル | 25ドル | 基準 |
| プレミアム | 100ドル | 125ドル | 標準の5倍 |
最小は2席、最大は150席です。弊社が月払いで標準の2席を契約したときの請求は、消費税を含めて月55ドルでした。Team は請求書払いに対応しておらず、弊社はクレジットカードで支払いました。
全員をプレミアムにする必要はないと考えています。今回、標準の席で規程への質問と Excel の作成を1回ずつ行うと、セッションの使用量が2%増えました。続けてダッシュボードを1つ作ると、合計はセッションの7%、週の1%です。わずかな試行の数字ではありますが、資料作成や質問が中心の社員なら標準の席から始め、Claude Code を一日中使う人にだけプレミアムを割り当てる形で足りるはずです。
規程を入れたプロジェクトに質問と点検を任せられる
Team を入れて社員が最初に試しやすいのは、社内資料を入れたです。今回は経理担当を想定し、架空の経費規程、勘定科目の判断例、月次締めのチェックリストの3本を入れました。

画面の上部に「プライベート」と出ているとおり、プロジェクトは作った人だけが見られる状態から始まります。担当者を招待するか、組織の全員に公開するかは、ここから選びます。顧客ごとの資料は招待制に、全社の規程は組織公開に、と分ければ、同じ契約の中で情報の範囲を変えられます。
資料を入れたら、経理への問い合わせでよくありそうな質問を投げました。大阪に1泊する場合の宿泊費の上限と日当、22時前のタクシーの可否に、あえて規程に書いていない海外出張の日当を混ぜています。

回答を見ると、宿泊費の上限1泊12,000円には第2条、日当2,000円には第3条と、根拠の条番号が付いています。海外出張の日当は推測で答えず、「資料にありません」として担当部署への確認を勧めました。実務で使えるかどうかは、この答え方で分かれると思います。もっとも、これはプロジェクトの指示に「資料に基づいて答える」と書いた結果なので、指示の書き方は導入時に決めておく必要があります。
次に、架空の経費8行を貼り、規程に照らして点検した結果を Excel で出すよう頼みました。

結果は違反の疑いが4件、要確認が1件で、手計算と一致しました。右側のシートでは、元データの何行目かと判断の根拠まで確認できます。ここまで動くと、次に欲しくなるのは同じ手順を全員で使う方法です。Team では点検の手順をとして登録でき、今回もスラッシュから始まる名前で呼び出して同じ点検を行えました。
管理者に見えるものと見えないもの
社員に Team を案内するとき、「管理者は自分の会話を読めるのか」は答えを準備しておきたい問いです。管理者とメンバーのアカウントを1つずつ作り、実際に相手のデータを開けるか試しました。
| 試したこと | 結果 |
|---|---|
| 管理者がメンバーの非公開プロジェクトを開く | 開けない。一覧に出ず、直接開いても権限エラーになる |
| メンバーが管理者の非公開プロジェクトを開く | 開けない。結果は同じ |
| 管理者がメンバーの共有していないチャットを開く | 開けない。一覧に出ず、直接開いても見つからない |
| メンバーがチャットを「組織の全員」に共有する | 管理者も会話のコピーを読める。共有の既定は招待した人のみ |
| 管理者がメンバーの自作スキルを見る | 見える。組織の目録に名前、説明、作成者が出る |
| メンバーが他人の Artifact を一覧で見る | 見えない。「すべて」に出るのは本人が開いたもの |
表の上3行のとおり、管理者の画面から他人の非公開データを開くことはできませんでした。ただし、管理者には別の手段があります。次の画面の下部にあるデータのエクスポートです。公式の説明では、組織全体のデータを書き出せるのは最上位の管理者である Primary Owner だけで、Owner と Admin にはできません。

書き出しの対象は会話のデータで、チャット履歴や添付が入ることもあります。削除済みのデータは対象外です。今回は書き出しを実行しておらず、非公開のプロジェクトやチャットがどう含まれるかは確かめていません。社員には「画面からは見られないが、最上位の管理者は組織のデータを書き出せる」と伝えるのが正確です。個人の相談ごとを Team で書かないよう、導入の説明会で触れておくとよいでしょう。
もう1つの注意点は、設定が組織全体に一律で適用されることです。ある部署だけウェブ検索を止める、といった指定はできません。Team で管理者が決められるのは次のような範囲です。
- ログインの方法(シングルサインオンとドメインの認証)
- 社外への共有(Artifact の公開リンクと組織外への招待)
- 使えるコネクタと、外部サービスへの書き込みの可否
- ウェブ検索、メモリ、Claude in Chrome、Cowork の利用
- コードを実行する環境の通信先
- 全員に適用する指示(顧客名を入れない、など)
- 使用量の上限を超えた後の追加料金の上限
導入の前に変えておきたい設定
組織を作った直後の設定は、機能を試しやすい方向に寄っています。顧客情報を扱う会社なら、社員を招待する前に次の項目を見直すことを勧めます。「作成直後」は弊社の Team の表示で、「推奨」は弊社の考えです。
| 設定 | 作成直後 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|---|
| スキルの組織公開 | オープン | レビューが必要 | メンバーが作った手順が審査なしで全員に届く |
| チャットを組織の全員へ共有できる機能 | オン | オフ | 案件の担当外に会話が広がるのを防ぐ |
| Artifact の組織外への招待 | オン | オフ | 社外に共有する経路を閉じる |
| 招待リンク | オン | オフ | 席の追加を管理者に集める |
| Claude in Chrome | オン(全サイト) | オフで開始 | 業務システムをブラウザから操作できる |
| コンピューターへのアクセス | オン | オフで開始 | 手元の顧客ファイルに届く |
| メモリ | オン | オフを検討 | 別の案件の情報が記憶から混ざるのを防ぐ |
| ウェブ検索 | オフ | オン | 法令や制度の最新情報の確認に使う |
1行目は、実際に試して気づいた項目です。メンバーのアカウントで作ったスキルを公開すると、管理者の確認を挟まず、すぐに全員が導入できる状態になりました。「レビューが必要」に切り替えると審査を挟めるはずですが、この設定に変えた場合の申請と承認の流れは、今回はまだ試していません。
反対に、ウェブ検索は作成直後にオフでした。調べ物に使う会社なら、最初にオンにしないと「思ったより使えない」という印象を持たれかねません。
招待を受ける社員には選択の画面が出る
個人の有料契約を持つ社員を招待するときは、事前の案内が必要です。招待を承諾すると、個人のアカウントをどうするかを選ぶ画面が出ました。

既定で選ばれていたのは「両方のアカウントを保持する」で、そのまま進むと個人と Team を切り替えて使えるようになりました。また、個人のチャットとプロジェクトを Team へ移す案内も画面の上部に出ます。個人の会話が会社の管理下に入る操作なので、会社として移してよいものを決め、社員に伝えてから招待を送るのがよいと思います。
Team では足りない会社と Microsoft 365 の会社の考え方
Team を勧めないのは、利用の記録を監査で求められる会社です。Team には監査ログがありません。、IP アドレスの制限、保存期間の設定もありません。これらが要件に入るなら、Enterprise を検討することになります。
データの保存先を日本にしたい会社にも、Team は向きません。Team の会話データの保存先は米国で、日本を選ぶ設定はありません。国内での処理が必須なら、Amazon Bedrock で東京か大阪を使う構成を別に検討します。リージョンを選ぶだけでは国外を経由することがあるので、国内向けの経路を指定します。この経路は料金が1割高く、対応するモデルも限られます。社員が使うチャット画面は自社で用意する必要があります。
Microsoft 365 を使っている会社では、選択肢がもう1つあります。Microsoft 365 Copilot の中で Claude のモデルを選ぶ方法で、管理を Microsoft 側に寄せられます。ただし Fable 5 のようにデータを保持するモデルは、別途の有効化が必要で、Anthropic の規約が適用されます。文書作成や調べ物が中心ならこれで足りる場合もあります。Copilot の中でモデルを選ぶ機能なので、Claude のプロジェクトや Claude Code を使うには別の契約が要ります。Team を選ぶ場合も、Entra ID と接続すれば社員は Microsoft のアカウントでログインできますが、先に会社のドメインの認証が必要です。
| 会社の状況 | 勧める選択 |
|---|---|
| 2〜150名で、管理と共有の統制が欲しい | Team |
| 監査ログや入退社の自動反映が必須 | Enterprise |
| 文書作成が中心で、管理を Microsoft に寄せたい | Microsoft 365 Copilot の Claude |
| 国内での処理が必須 | Amazon Bedrock(国内向けの経路) |
Team は最小2席から契約でき、月払いも選べます。全社展開を決める前に、担当者数名で規程を入れたプロジェクトを1つ作り、上の設定を変えたうえで、実際の業務を3件ほど試してみてください。何が足りないかは、その時点でかなりはっきりします。
Claude の法人導入を、設定と利用規程からご一緒します
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